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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
70/80

決別の戦い

「お前、どうしてここに? 美鈴のフローズンフェアリーは絶対に溶けないんじゃなかったのか?」

 それは悠斗自身が実証済みだ。どんなに攻撃しても傷一つつけられなかったし、どれだけ高温な炎でも水に変わる気配はなかった。

「あのドラゴンが解放してくれた。どうやら俺に師匠を倒して欲しいみたいで利害が一致してるからここまで来たが……もう必要ないな」

 と言うと斧を振りかざし、ここまで連れて来てくれた黒いドラゴンの首を切り落とした。その一連には全く迷いがない。

「そんな……何てことを」

 思わずエルは声を漏らすがもう既に手遅れだ。ドラゴンも、こんな残虐な行為をあっさりとこなしてしまう奴も。

「師匠との戦いを邪魔されたくないからな。師匠もそうだろ? そこの有象無象に手出ししないよう言ってくれよ」

「聞き捨てならんな小僧。我々を有象無象呼ばわりするとは余程自信があるようじゃな。ならば我がそれが虚言ではないか確かめてやろうか?」

「待てアリア。こいつは俺にやらせてくれ。これだけは俺がやらなくちゃいけないだ」

 これはあの時始末し損ねたのが回ってきた。それだけの話。ならば彼に力を与えてしまった俺が終わらせるべきなのだ。

「む、まぁ主がそこまで言うのなら退くがもし危険になったらあの男との因縁など関係なく助けに入る。それだけは肝に銘じてくれ」

「ああ、それでいい」

「師匠、話は済んだ? もうこの衝動を抑えられないんだけど」

 手は斧を握ったり離したり忙しなく動いている。よく黙って待ってくれたものだ。彼も流石に多数を相手したくなかったのかそれとも悠斗としか戦いたくないのか。どちらにせよこうして決闘の準備は整った。

「おう構わないぜ。昔みたいに手ほどきしてやるからどっからでもかかって来い」

「言われなくても行くよ師匠」

 血に染まった斧を持ち上げ脳天目掛け振り下ろすがそれは悠斗が紙一重でかわし、空を切る。

「甘いよ師匠」

 その勢いのまま地面へと突き刺さった斧から黒色の何かが蠢き、悠斗へと襲いかかった。

 咄嗟に剣でなぎ払って凌ぐがその様子を見ていたガイザは薄気味悪い笑みを浮かべた。

「師匠、貴方の言葉を借りる。武器を過信するな」

「よく覚えているな。だが俺はお前と遊んでいられるほど暇じゃないんだ。これで終わらせる。スター……」

 いつものように吹き飛ばしてやろうかと剣に魔力を込め始めた瞬間、体が重くなり気がついたら膝をついていた。

「ロットン・インセクト。さっき付着した黒いのに触れると魔力が吸われる。この武器の固有技。ちなみにそれ、剥がすの大変だから……ここで大人しく死んで」

 不敵な笑みを浮かべたまま斧を引きずりながら一歩、一歩近づいてくるその風貌はまるで死神。

 だが悠斗は剣を振り上げたその状態で毅然とした態度で笑みを返す。

「前言撤回だ。お前忘れてるだろ。武器を過信するな、その後にこう言ったはすだ。自分を信じろって」

 更に魔力を込め剣は紫色に染まり、時が経つにつれより一層濃くなる。

「無駄だよ師匠。それは魔力を吸い尽くすまで剥がれない。手で取った方が早いよ。その方が綺麗に首を落とせるから」

「あんま俺を舐めるなよ。昔とは違うんだよ」

 忠告を無視して魔力を込めるのを続ける。

 すると黒い物体は徐々に膨れ上がって最終的に破裂して剣は解放された。

「そんな……。魔力に耐え切れず爆発するなんて」

「だから言ったろ。自分を信じろって。他人を手段として使うお前にはこの力は手に入らないがな」

「いい気にならないでよ師匠。ロットン・インセクトでかなりの魔力を吸い取った。そしてその魔力はどこに行くか分かるよね?」

 ゲームの時も相手の魔力を吸い取るというものはあった。それらの全てはその技を使った者に魔力が渡るようになっている。先ほどのもそうなのだろう。

「馬鹿。魔力とかそんなん関係ねえよ。ここはゲームじゃなくて異世界なんだから必要なのは気持ちだ」

「……変わったね師匠。ゲームの時の方が良かったのに」

「口を閉じろ。お前が内弁慶だろうと外弁慶だろうとそれで負けても知らねえぞ」

「ふん、強がりを。これでも喰らってあの世で永遠に後悔してな師匠」

 黒い何か。よく見ると虫のようなそれは夥しいほどの数が集まり、斧の部分が見えないようにベッタリと全体的に張り付く。

 それには先ほど悠斗から吸い取った魔力が詰まっている。そこにガイザの魔力が足された攻撃。

 防ぐ体力もなし、避けても前回の二の舞。残り僅かな魔力も吸い尽くされる。

 為す術がないかのように思えたが悠斗は斧が振り下ろされる前に彼の背後に立って剣を収めていた。

「星闘剣術七式、流星群」

 次の瞬間、ガイザが掲げていた斧は粉々に砕けさり不肖の弟子は地面に横たわっていた。やられた本人でさえ何が起こったのか理解できず目を見開く。

「なっ……、魔力は底を尽きているはず。何故俺が……俺が!」

「これはただの攻撃だぜ。固有技でもなんでもない。だから魔力が吸われてようと関係ねえの。言ったろ、自分を信じろって」

「クソォ……それが噂の裏技ってやつか」

「裏技じゃない。テクニックだ。お前の敗因は誰も信じなかったことだ。お前自身さえもな」

 人のことをとやかく言えたものではないがそれだけでなく利用する奴に躊躇いはない。 この手で禍根を断ち切った。だがそれでも気は晴れない。この世界に来てからいろんなことが起こっていろんなものを失った気がする。

 しかし、新しく手に入れたものもある。残ったものもある。それらを数えて前に進むしかないのだ。

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