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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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暗い海

「んあー、何処だここ」

 目が覚めた時には目の前は真っ暗だった。

「確かあの人魚がポロリしてそれから……」

 思い出した。俺はその後に現れた何者かの魔法によって眠らされたんだ。

 しかし足枷といった類がないので捕まった気がしない。

「にしても暗いすぎるな。これじゃあ自分がどっちに歩いてるかも分かんねーな」

 少し歩いてみたものの危険だと気づいた悠斗はそこで足を止める。

「あ、ここにいたんですか探しましたよ〜」

 どうやって皆の元に帰れるか脳内であらゆる方法を考えていると後ろから能天気な声が響いた。

「なんだお前か」

 丸くて提灯のようなランタンを片手に現れたのは初めて会った時の人魚姿のメルトだった。

「なんだとはなんですか〜。私が誤解を解いてあげたんですから感謝してくださいよ〜」

「誤解? あー、俺を襲ったあれか。誤解する方も悪いと思うがな」

 メルトが叫んだりするもんだから敵だと勘違いされてしまったが何も確認せず問答無用に攻撃してくるなんて

「最近いろんなことがあってピリピリしてましたから……。でもあなたも悪いんですよ。その……私の裸を見たんですから…」

 眠気がだんだん晴れていき、つい最近起きた衝撃的な出来事について思い出す。

「あれは明らかにお前が悪いだろ。あんなことになるなんて俺は知らなかったんだし、あの時は暗かった。何も見えなかったよ」

 月の明かりはあったがハッキリ見えたのは顔だけだった。

「でも私にとってはそんなこと関係ないんですよ〜。ちゃんと謝ってください」

 頬を膨らませてズイズイと肌が触れてしまう一歩手前ぐらいまで近寄ってくる。

「確かに目を瞑らなかった俺にも非があるかもな。すまんな、代わりといってはなんだがお願いとやらを叶えてやるよ」

「本当ですか‼︎」

 爛々と目を光らせて上目遣いでこちらを見つめてくる彼女との距離はさらに狭まっていた。

「ああ、本当だ」

「でもいいんですか?まだ何も話していないのに」

 悠斗が知っているのは彼女が人魚であり、姫様であるということ。それは襲ってきた奴らが証明している。ただの人魚一人にあれだけの護衛はつかない。

「構わん。俺のちょっとした気まぐれだ」

「そうですか〜、なら早速話を…」

「いや、それは仲間と合流してからにしてくれ」

「分かりました。では私が案内しますのでついてきてください」

「その必要もない。今頃レイナ辺りが俺がいなくなったことに気がついてんだろ」

 寝た時間はそれほど長い時間ではないだろうが一、二時間も戻らないと心配になって来るはずだ。

 無論、それは機械で睡眠を必要としないレイナだかそこそ気づいてくれる可能性があるのだが何故か確信を持てる。

「ここが何処か分かってるんですか〜⁉︎ここは…」

「海の底だろ」

 あまりにものんびりとしていたので先に口が動いていた。

「な、なんで知ってるんですか〜?」

「ゲームにも海のステージはあったし、お前が人魚の姿をしてるなら海の中ってのが妥当だろ。陸上だったら前見せたくれたように人間の姿に化けるたろうからな。それに洞窟の中でもないのに月が見えないのがおかしいと思っただけだ。まあ、どうして海の中なのに息が出来んのかはイマイチ分かんねーけどな」

 メルトが持ってきた明かりのおかげで周りに岩や壁でないことから何処かに閉じ込められたという感じでもなかった。

「それはこれを使わせてもらいました」

 腰にあった巾着から取り出されたのは小さな粒がいっぱいついた枝。

「何処かで見たことあるな。なんだそれ」

酸木(さんき)です〜。その実食べると一定時間水の中にいても平気になるとっても便利な木なんですよ〜。どういった仕組みかは私にも分かりませんけど」

「ああ、背景にそんなやつあったな。まさかそんな効果があるなんてな」

 名前からして食べたら酸素が出てきてそれで今こうして海の中でもへっちゃらでいられそうだがあまりにも現実からかけ離れている。

 特に水圧だとか水温。

 どれくらい深いところにいるかは想像も出来ないが普通の装備できたら確実にペチャンコになっている。

 それにここは寒くない。火山地帯から少し離れているが夜の海というのは寒いと聞く。もう何年も行ったことはないのだがこんな快適な温度ではないはずだ。

 疑問は尽きないが適当な理由をつけて自分を納得させるしかない。ここは異世界なのだからと。

「じゃあ俺は寝るから。レイナっていう水色の髪をした女が来たら起こしてくれ」

 酸木とやらの効果はもう痛いほど知っている。ならば焦る必要はないだろ。

「え、ええ〜⁉︎ 自由すぎるよ〜」

 それから数分後、メルトに「目が目が痛いです〜」と何処ぞかの大佐みたいな台詞を叫びながら叩き起こされたのは言うまでもない。

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