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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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美しき人魚

「今日はここにするか」

 辿り着いたのは海のど真ん中にあった無人島だ。街に着けたら宿がとれるのだが、ここの近くには村や集落もないので野宿をするしかない。

 運良く洞窟があったので今日の寝床はそこだ。オラスは流石に入らないので外で寝てもらう。本人はどんなところでも大丈夫だと言っていたので心配はいらないだろう。

 それに枕や布団はレイナが出してくれるので問題はない。

「そうですね。街までは距離がありますから明日は早く寝て起きましょう」

「ならさっさと寝るぞ。夜はあまり好きではないのでな」

 と準備が済んだアリアがヴァンパイアらしからぬ台詞を言いながらさりげなく適当に拾い集めて来た葉っぱを石の上に乗せたものを枕にして横になっている悠斗のの隣に寝転がった。

「おい、何で俺の隣で寝ようとしてるんだよ」

「駄目か? 減るものではないだろ」

「だったらおいらも入る〜〜」

 飛び込んできたのはもちろんホグア。悠斗はそれを華麗にかわしてみせた。

「にゅ、どうしたんっすか? 遠慮しなくてるんすか?なら心配ご無用っす。おいらは悠斗なら何されても平気っすよ」

「な、何されてもですか⁉︎」

 寝る為に眼鏡を外そうとしていたミノスは体を震わせて驚いた。

「うん。パフパフとかもできるよ」

 彼女のエネルギーがその一点に集まっているかのような巨大な胸を自分で左右から押して横に揺らす。

「ぬっ…主を誘惑するな竜人。それにただデカければ良いというものではないぞ」

 対抗するようにアリアも寝巻の上から手で押さえつけて谷間を強調させる。しかも下着が見えそうになるほど股を開く。

「どうじゃ主、こちらの方がそそるじゃろ……って主?」

 そこにいたはずの悠斗は忽然と姿が消えていた。

 結果、アリアは相手もいないのにセクシーポーズを取っているという虚しい感じになった。

「悠斗様なら洞窟の外へ逃げて行きましたよ」

 傍観していただけのレイナはこっそりと抜け出すところを見ていた。彼女曰くもの凄い速さだったという。

「ぬぬぬっ。主め!」

「逃げられちゃったすね〜」

「黙れ! 元は言えば貴様のせいだろ。邪魔されなかったら今頃は主は我が手の中に……」

 ギリギリと握り、この怒りを何処にぶつけようかと目を鋭くする。

「アリアさん。怒りや嫉妬は愚かなものです。それでは悠斗さんに嫌われますよ」

 一部始終を見ていたエルの“嫌われる”という単語に反応し、拳の力は徐々に抜けて何をするでもなくただ布団に潜った。




「はぁ〜、随分賑やかになっちまったな」

 洞窟の外で見張りついでにそこで寝かせたオラスを横切って海を目の前にして悠斗はつぶやいた。

 人との繋がりを最小限にする為に始めたゲームなのにこんな世界に連れて来られて、こんなに仲間が増えるとは思わなかった。

 何とも皮肉な話だ。あの時は助けてくれる仲間などいなかったのに今頃になってこんな風に信頼できる人が集まるなんて。

 だがまだこの仲間に美鈴のような異世界人でもない人を入れる気はない。多分これからずっとそうなのだろう。あの傷が癒えるまで

は。

「あの〜、すいません旅の人。お話があるのですが」

 空を眺めていると無人島なのに声をかけられた。他にもこの島にたどり着いた者がいたのかと声のする方向に目をやるとそこには水の中に下半身を隠し、胸を大きな白い貝殻で覆った少女がいた。

 月明かりに照らされるその肌は砂よりもきめ細かく美しい。

 二つの団子状にされたピンク色の髪とそれに収まらなかった後ろ髪や体は濡れたまま。普通の人ならとっくに風邪を引いているだろう。

「誰だお前。迷い込んできたってわけじゃなさそうだな」

 漂流して来たならもっとぐったりしているはずなのに彼女はおっとりした余裕がある。

「はい。実は旅の人にお願いがあって来ました〜」

「お願い? それより名前ぐらい教えてくれたっていいんじゃねーか」

「すいませ〜ん。私はメルト。人魚のお姫様やってるものです〜」

 おっとりした口調からは想像できないほどの跳躍力で海から空へ飛びその下半身を見せびらかした。

 月と彼女の体が重なり、その下半身にびっしりとついた鱗は宝石のように輝いた。

 そして一回転をするとそれは足に変わり普通の人間の姿になった。

「きゃっ!」

 しかし着地に失敗して盛大にすっ転んだ。

「だ、大丈夫かお前」

「こうやって人魚は地上でも動けるようになるんですよ」

 悠斗の心配を他所にへっちゃらそうに笑顔で立ち上がって説明をしだした。

「やっぱ人魚なのか」

 もしやと思ったがあの姿を見て納得した。上半身人間、下半身魚。まさに人魚そのものだ。

「それにしてもお前、下何も履いてねーけどそうゆう趣味か?」

「へ?」

 とぼけた顔で下を見る。

 そこには胸の部分を貝殻の水着で隠しているがそれ以外の部分は何も着てない自分の姿があった。

「きゃあああああああああ‼︎」

 咄嗟に両手で隠し顔を真っ赤に染める。

「姫様から離れろ!」

 その叫び声につられてか海から二つの影が現れ緑色の魔法陣を展開し始める。

 それから一拍遅れて海面から少し顔を出しこちらを睨んでいた増援が同じ魔法陣を展開した。

「しま……」

 軍人のように整った連携攻撃の魔法により意識が途切れて体は自然と砂に横たわった。

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