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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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温かい仲間達

「良かったんですか? 結局、エルさんは仲間になってくれないし、あの白い炎のことを調べるなんて当てがあるんですか?」

 教会から出てもミノスはアリアほどではないが、機嫌が悪い。

「勘違いするなよ。俺はまだエルを諦めたわけじゃない。依頼を受けたのは善意もあるにはあるが、関係をつなぐためのものだ。俺たちにはオラスがいるから時間はある。当てはないが近くにいるんだから適当に探せば見つかるさ」

 根拠はないが何となくそう思う。

 それにオラスを見習おうと考えたのだ。焦らず、ゆっくりと着実にやっていく。その為にはエルが必要不可欠となってくる。

「悠斗さん……そんなに熱心になるなんてエルさんがす、す、好きになったんですか?」

 ずっとミノスが気になっていたことだ。今まで喉につっかえっていて苦しかった。

「いや、そんなことはない。ただ俺の病気を治すのに必要なんだよ」

「病気……ですか?」

「そういえばお前らには言ってなかったな。まあ、知ってるのは幼馴染の美鈴ぐらいだからな。だけどお前たちはこれからも世話になるから白い炎の奴を探して、レイナがとった宿で話す」

「はあ……」

 これはけじめだ。悠斗はこれからこの世界で生きていくことを決意したが、彼女らに自分のことを秘密にするには不公平だと思って打ち明けることにした。

 そして数時間ほど街の中やその周りを探してみたが白い炎の犯人やしきものはいなかった。




「主、すまなかった」

 レイナに案内されてついた宿の部屋に入るとベッドの上で土下座をしているアリアの姿があった。

「なんだ、どうした。いつものお前らしくもない」

 てっきり、まだ怒ってて一発飛んでくるのかと身構えていた悠斗は意外な出来事に戸惑う。

「本当に反省しておるのだ。だが主も悪いんだぞ。そこら辺は直しておかんと承知せんぞ」

 顔を上げたアリアは体をよじらせてモジモジする。まるで恋した少女だ。

 何歳かは不明だが。

「おい、一体アリア何したらこうなるんだ?」

「大したことはしていません。ただ乱暴ばかりしていると悠斗様に嫌われてしまいますよと伝えただけです」

「良く分からんが殴られないに越したことはない。とりあえず報告だ。俺たちは天使と呼ばれる少女に出会って仲間に誘ってみたんだが、見事に断られた」

 本当に、見事に、あっさりと断られてしまった。

「なら、明日にはこの街を出る準備をしますか?」

「いや、まだそいつに怪我を治してもらった恩を返せてない。それだけ済ませてからここを出る」

 服をまくって怪我のあったところを見せる。

「あれ? アリアンつけられた怪我が治ってるっす」

「本当ですね。アリアさんが爪でつけた怪我が完全に治ってます。これが天使の力ですか」

 二人の言葉がグサグサとアリアの胸に突き刺さる。

「で? 恩返しって何するっすか?」

「昨日の夜に見た白い炎の犯人探しだよ」

「大丈夫なんですか?あれはかなり危険だと思われますよ」

 レイナは白い炎の威力を分析して恐ろしさを知っている。だからこそ慎重になっているようだ。

「俺を誰だと思ってる。簡単に蹴散らしてやるよ」

 簡単にはできそうもないが、ここで弱気を見せるとレイナが必ず止めに来る。それだと困る。

「そ、そうねすよね……」

 レイナは悠斗の強がりを信じて、安心して胸に手を添えた。

「それともう一つ話がある。俺の事でだ」

 四人の顔は急に引き締まった。だが事前に伝えておいたミノスは何処か落ち着いている。

「こんな時になんだが、お前らにはこれからも助けてもらうことになる。なのに俺が隠し事をするのはいけないと思った。だからこの世界に来る前の話をしよう」

「ここに来る前……」

 それはレイナでも知らないことだ。

「実は俺、社長をしていたんだ。それなりに大きい会社でな」

「社長? 社長ってなんっすか?」

「会社という組織で一番偉い人ですよ」

 頭を捻るホグアにレイナが冷静に教えてあげる。

「流石、主じゃ」

「まあな。でもその地位はある男に奪われたんだ」

「何! 一体誰じゃ許さんぞ」

 アリアに続き、二人も首を縦に振って同意する。

「その時に俺の補佐をしていた兄貴だよ。あいつ自分が失敗したのに俺に押し付けてきたんだよ。それをきっかけで俺は人を信じることができなくなった」

 今になってもあの時のことは忘れられない。悠斗にとってのトラウマでもある。

「で、では私達もそうなんですか?」

 急に血相を変えたレイナは悠斗に詰め寄ったが、悠斗は首を振って答えた。

「俺が信じられないのは人間だ。機械少女とかヴァンパイアとか竜人とか魔法がろくに使えない魔道士は対象じゃない。だけどな、ここにも人間はいる。今までは異世界人だと思ってどうにかなっていたが、結局は人だ。これからもそうではいけない。この病気が治るのはいつ頃になるか分からないがこんな俺でもついてきてくれるか?」

 悠斗は久しぶりに頭を下げた。

 四人はそれぞれ顔を見合わせると、代表としてレイナが悠斗の肩に手を置いた。

「悠斗様、お顔をあげてください。私達は悠斗様だからこそついてきたのです。今更何を言われようとも、どんな風になられてもついていきます」

 顔をあげた悠斗が見たのは、温かい笑顔の仲間達であった。

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