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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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聖職者

「ここがルーチェか。イムホテギアと比べると静かな感じがするな」

「仕方ないですよ。ここの人口はイムホテギアの五分の一ですからね」

 オラスから降りて長い時間をかけてアリアを落ち着かせてようやくこの街に入ることができたが、アリアの殺気はとどまることがなく今もレイナとホグアを監視につけている。

 アリアを押さえつけられないミノスは悠斗の話し相手となっている。

 しかし、悠斗は内心アリアがいつ襲ってくるかと内心ドキドキしている。

 そして体のあちらこちらにある爪の跡を見て何が悪かっのか今一度考えてみるがまるで分からない。

 なので、時間に解決してもらう。

 これからレイナとホグアがどうにかして時間を稼いでくれる予定だ。その間に悠斗たちは噂の天使がいる教会へと足を運ぶ。

「なあ、ここら辺は騎士が少なすぎるんじゃないか。魔法都市のイムホテギアでも、もう少しいた気がするぞ」

 イムホテギアは魔道士が多く住んでいるので守りは完璧とされているので、同盟をしている国の騎士が形だけとして警護していた。

 そんなところより、なぜかここの方が騎士の数が少ない。まだ門のところの二人と徘徊していた一人しか見ていない。

「確かにそうですね。ここは聖職者が多くて戦える人なんでほとんどいないのに」

 治安がいいのかと思ったが、悠斗たちの目の前の景色からするとそうではないらしい。




「おい、お嬢ちゃん。有り金渡しな。でないと痛い目見ることになるぜ」

 カエルみたいな男はローブを着た前髪が真っ直ぐに整った白髪の少女を手に収まるほどの小さいナイフで脅しながら詰め寄った。

「今すぐやめてください。お金とは苦労をしてこそ得られるものです。そのようなことをしていると神のお仕置きを受けることになりますよ」

「ふっ、神だと? それはこの世界の魔力を牛耳ってる奴のことか〜? それなら怖くねーよ。あれは今、後継人を探すのに忙しいらしいからな」

 丸い目を不気味にギョロギョロ回して舌を出す。

「その者のことではありません。空で見守ってくれている真なる神のことです。神は寛大な人です。もうこんなことはやめて真面目に仕事をすれば全て水に流してくれるでしょう」

 少女は手を合わせて空を見上げて祈る仕草をしたが、男はその姿を見て腹を抱えて笑った。

「いっひゃひゃ。出たよお嬢ちゃん聖職者かよ。この街はやたら多いからな。ほんとにめでて〜奴らだぜ。神に祈っとけば人生どうにかなると思ってやがる。頭おかしいんじゃないのか?見たこともないもん信じるなんてよ〜お」

 カエル男の言葉に少女は顔色を変えた。

「神への侮辱は私が許しません。今すぐ神へ謝罪しなさい。でないと天罰を受けることになりますよ」

 男の目を見つめて彼女は本気でそう言った。

「お〜、怖い怖い。さ〜すが、聖職者様だ。言うことが違うね〜。だけどよお嬢ちゃん、口だけじゃあどうにもならないぜ。天罰ならあんたがやってみろよ。神様はこんな下衆な俺を相手してる暇はないらいからよ〜」

 出した舌で少女の肌をを舐めようとした。

「天、罰」

 だがその前に男の頭に悠斗の拳が落とされ、舌を出していた男は自分で噛んでしまう。

「ひ、ひさま何ひてくれるだ」

「何って天罰だよ。そこのお嬢ちゃんができないようだったから代わりに俺がやっただけだよ」

 舌に走る激痛で男はうまく喋ることができなかったが、なんとか解読して答える。

「ひ、ひさまーーー!」

 男のギョロ目が怒りに染まる。

「待ちなさい二人とも。神は争いなど望んでいません。平和的に解決しましょう」

 この一言で怒りの矛先は彼女に向いた。

「さっきから神、神、うるへ〜んだよ」

 ナイフを突きつけながら彼女を刺しに出たが悠斗がそれを許さない。

 振りが大きい大剣は抜かず、左手でナイフをはたいて右手でそのカエル顏にストレートをかました。

「ぐべ! こ、この〜覚えてろよ」

 とても敵わないと判断したカエル男はナイフを拾うことなく去って行った。

「何処かで聞いた台詞だな。それよりあんた大丈夫か?」

 乾いた音が響いた。

 なんと助けたはずの彼女が悠斗をはたいたのだ。しかしか弱い彼女から放たれたビンタは悠斗にとっては痛くも痒くもない。

「なんで話し合いで解決しないのですか?あの男性が怪我をしましたよ」

「脅されたのにあいつを気遣えるなんて、筋金入りの聖職者だな。でも気に入った名前はなんていうんだ?」

「エ、エルですけど……。それよりもあなたは……」

 説教が途中で止まった。

 何事かと思ったら、彼女は悠斗の体の所々にあるアリアにつけられた傷を凝視していた。

「あ、あなたも怪我をしているんですね。ですが許させることではありません。とりあえず私の教会に来てください。そこで手当てをします」

 答えも聞かず、それらしきものが建っている方向へと歩いて行く。

「だ、大丈夫ですか? 悠斗さん。ほっぺ痛くないですか?」

「ああ、大したことじゃない。それよりあいつ面白いな。それに一つのことを信じ続けるなんてそうできるもんじゃねえ」

 実際、悠斗は人間を信じていた。

 だが裏切られてそれは偽りだと思って、人間を信じなくなった。

 しかしこの世界に来て少し考えが変わった。だがまだ本気では信じられない。彼女なら、彼女ならまた人間を本気で信じられるように、こよ人間不信という病気を治すための何かを与えてくれるかもしれない。

 そう期待してしまうのだ。

「まさかついて行くつもりですか?」

「もちろんだ。アリアは二人がどうにかしてくれてるから時間はある」

 ミノスに拒否権はなく、悠斗がエルのという少女の背中を追うのについて行った。

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