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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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城に蔓延るヴァンパイア

 ヴァンパイアとは孤独な生き物である。こちらから歩み寄ろうとしても、拒まれてしまう。決して血を飲まないと死んでしまうというわけではなので、普通に生活できるのだが人間はそれを理解してくれない。

 だから歩み寄るのはやめにした。洞窟の中に城を建て、一人のんびりと暮らすことにした。

 しかし、人間はそれも許してはくれなかった。何人もの刺客を送り込んできて私を殺そうとした。私は怒り狂って全員、血を飲み干した。

 そのせいでもう城には誰も近づかなくなった。例え誰が来てもそれは洞窟で迷った子供ぐらいで私を目的として洞窟に入るものはいない。

 そして久しぶりにこの台詞(せりふ)を口にする。

「客人とは珍しいな」

 黒くヒラヒラした、お嬢様が着るような服を身に纏った金髪ポニーテールの女性は高価な装飾が施されている椅子にふんぞりかえり、剣を携えた男と人間によく似た機械少女の二人を迎えた。

 二人を見つめる彼女の目は今まで飲んできた人間の血と同じ目をしていて、その中には希望といったものなどはなかった。



「見たところ迷子じゃないようじゃな」

 独特な口調でそう言うとニヤリと笑い、自慢の四本の牙を見せた。

「当たり前だ、お前がヴァンパイアだろ。ここから出て行って欲しいんだが…いいか」

「ダメじゃ。ここは気に入っておる」

「じゃあ、どうしたらここを出てくれるだ?村のみんなは困ってるんだ。ついでに俺もな」

「そうじゃな……。退屈じゃったし、暇つぶしに付き合ってもらおう!」

 耳を一切傾けないヴァンパイアは床を両足で蹴り、宙を舞い悠斗たちの後ろへと着地した。

「アリア・マリアッセハート二世。お前さんが言うとおりヴァンパイアじゃ」

 律儀に自己紹介をしてから綺麗な金髪を揺らしながら鋭く伸びた爪を立て、喉を切り裂きにかかる。

「悠斗様!」

 ガキンという甲高い音が鳴りアリアの爪は弾かれた。爪は悠斗の危険を察知したレイアが身を呈して(かば)ったのだ。

「ほう……貴様、機械人形か。面白い」

 アリアの爪は鋼鉄の体に当たったというのに傷一つなく切れ味は落ちる様子はない。

「レイナ! 大丈夫か」

「はい。なんともありません。それよりアリア・マリアッセハート二世さん。これは一体どういう意味ですか?」

「わからんのか人形。余興じゃ。暇つぶしと言ってもいい。いやそれが本心なのだがな」

「意味不明なこと喋るなヴァンパイア。それとレイナのことを人形呼ばわりするな。なんかむかつく」

「ふっ、なんだ人間。人形に人形と言って何が悪いのだ。そんな魂がないものは人形で十分じゃ」

 鼻で笑い、レイナのことを批評するが悠斗はそうは思わなかった。

「そうか? 俺はお前の方が魂がないように見えるけどな」

「何⁉︎」

 アリアの目は一層鋭くなり、悠斗を睨みつける。

「俺は魂っていうのは目に宿ると思うんだ。目は口ほどに物を言うっていうことわざがあるからな。そして、レイナの目は機械だというのにとても澄んでいる。だがお前の目は俺と同じように死んでいる。人間に絶望しいる俺の目にな」

「絶望? そんものしていない!」

 頭めがけて放たれた蹴りは悠斗が盾として水平に構えた剣によって防がれる。普通では速さについていなかったが剣が軽かったおかげでどうにか間に合った。

 しかし、アリアは攻撃の手を休めることはない。口を開き、自慢の牙で悠斗の首筋にかぶりつく。

「悠斗様‼︎」

 レイナは腰につけた高周波ブレードでアリアに切りかかろうとしたが、首に噛みつかれてしまった悠斗が手でそれを制した。

「レイナは手を出さないでくれ」

 悠斗はまるで赤ん坊のように血を吸うアリアを見つめる。

「なあ、美味しいか? 俺は血なんて飲んだことも吸ったこともなちからわからないんだよ」

 アリアは何も喋らない。ただがむしゃらに血を吸い続ける。

「しょっぱくないか? だってお前…泣いてるじゃないか」

 そう彼女は泣いていた。

 泣きながら悠斗の血を吸い続けていたのだ。

「ま……まずい! 貴様何をした⁈」

 自分が泣いていることに(ようや)く気づいたアリアはすぐに牙を抜き、口に含んだ血を吐き出した。

「このレアアイテムを使ったんだよ」

 (リンク)リング。

 その宝石部分から赤い線が出ていてアリアに刺さっていた。いや、刺さっているというより体の中に溶け込んでいる感じだ。

「こ、これは?」

「このレアアイテムのサブ能力。相手の感情や記憶を呼び覚ます。あとそれが俺に流れ込んでくる仕組みだ」

 これはレイナが事前に教えてくれたことだが実際に使ってみると相当危険だ。

 複雑な感情、記憶が頭の中を巡って浸食されている気分で、意思を保つのが精一杯だった。

「お前も俺と同じで人間が信じられなくなってしまったんだな。だがお前はまだ、信じたいという気持ちが残っている。俺と一緒に来い!」

 悠斗はアリアに手を伸ばす。

「一緒って……何処にじゃ」

「何処か遠くだ。ここじゃない何処かだ。外に飛び出せ! でないと、何も変わらない」

 ズイッとさらに手を伸ばす。

「し、しかしこの城は……」

 伸ばした手は止まり、剣の柄を握る。

「仕方ない……んじゃあ」

 悠斗は剣を天井へと掲げた。

「き、貴様何をするつもりじゃ」

「うぉぉぉぉーーーーーーーーーーー‼︎」

 剣が紫色に輝き出し、天井にぶつかるのではないかというほど振り上げて、叫び声と同時に床に叩きつけた。

 その衝撃であやゆる柱は折れ、飾ってあった絵が落ち、シャンデレラが砕け散り、ものの数分で城が崩壊した。

 そして暫らくして瓦礫(がれき)の下から三人が這い出てきた。

「な、何をする!」

「何って城を壊したんだよ。お前の逃げ道を無くすためにな。いいか人間は信じなくていい、むしろそれでいい。だが、自分を信じることまで忘れるな」

 アリアは目を丸くした。

 こんな理解不能な男は初めてだ。そしてこんな心動かされるのも初めてだ。

「はあ、わかった。居場所も壊されてしまったしお前さんの仲間となろう」

 この洞窟の外は何があるだろうか?街の様子はどんな感じなのだろう?

 城を壊されたことを何とも思っていない。むしろ壊して欲しいとさえ思っていた。

 自分を縛るこの鎖を……。それを壊したのは嫌いになったはずの人間だった。

 だから人間をもう一度だけ人間を信じてみたいと思えたのだ。この無茶苦茶な男のおかげで。

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