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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
39/80

煌めく炎

 ここは迷いの森。

 木々で複雑な道のなっていて、始めてくる人は必ず迷うとされている森。

 そこに荷馬車に乗った一人の商人に迷いこんだ。普通はここは通らないが早く荷物を届けたかったから、この森に入ってしまった。だが、もう夜だから先が見えない。さらに下は木の根が張り巡らされていて上手く進まない。

「へい、待ちな」

 突然、斧を担いだ小汚い男が話しかけてきた。

「な、なんですか?」

 馬はゆっくりと歩いてたのでこの男に当たることなく、少し遠くに止まった。

「なんだじゃねーよわかるだろ?俺たちは山賊だ。命が欲しかったらその荷車を俺たちに渡すんだな。そうしたら直ぐに解放してやる」

 不気味に斧を舐めまわしてニタニタ笑う。

 しかし、この荷物は先にある都市に運ぶ物。

「商人にとって荷物は命よりも重いものだ。お前なんかには渡さん!」

 少し怖かったがもう引き返すことはできない。山賊は気性が荒く、狙った獲物は決して逃さない。

 それにここだと荷物が邪魔になって、人が走ったら追いつかれてしまう。

「ほう、若いのに威勢はいいな。その勇気に免じて痛み味わう前に殺してやるよ」

 舐めまわしていた斧の切っ先を商人に向ける。これは脅しではない。

 山賊はもう失うものなどない者たちだ。殺人などいともたやすく行える。

 ジリジリと近寄って来て一発でやれる時を伺う。

「待てそこまでだ!」

 逼迫(ひっぱく)した空気の中、薄い鎧を着た一人の男が割って入ってきた。

「誰だお前?」

 騎士ではない。それは鎧に紋章がないことから一目瞭然。ならば彼は誰なのか、なぜこの商人を助けようとしているのか山賊には理解できなかった。

「僕は参加者だ。ランキング五十位でここに来る人としては最下位だけど正義の心だけは一番だと思ってる。だから山賊にも屈しない」

 そう宣言すると参加者である男は腰の片手剣を引き抜いた。

「ふん、参加者か。大歓迎だぜ。お前らは死んでも誰も国とかに報告しないから騎士も出てこないからな」

「うっ……。あ、あまり舐めるなよ山賊! 僕は悪に屈したりはしない」

「ふ〜、こんなこと言ってますけどどうします?」

 小汚い男の後ろから闇夜に紛れていた大きな男が現れた。

「全員でやっちまえ」

 リーダー的存在のその男の一言で闇夜に紛れていた三十ほどの山賊現れた。

「こ、こんなにいるなんて……」

 ランキング五十位の参加者は絶望して剣の震えが止まらなかった。




「ガッハッハ! にしてもあの参加者は面白かったな。正義とかほざきながらあんなに弱いなんてな」

 山賊たちは焚き火をしながら強奪したものを食べたり、飲んだりして今回の収穫を喜んでいる。

「俺でも一発でやれたね」

 酒に狂って酔った山賊は大声で騒いだ。

 それは彼らに粛清(しゅくせい)を与えるものを呼び寄せてしまった。

「ぎゃあーーーーー!」

 突然一人の山賊が鋭利な刃で斬られ、森の中に悲鳴が響き渡る。

「だ、誰だてめえ」

 悲鳴がしたところへ駆けつけてみるとそれがいた。

 それは人の形をしながらとても人とは見えなかった。

 特徴的なのはほとんど白だということ。剣道の面のような兜も白、さっき山賊を斬ったのを白、着ている服も白。それらは月に照らされてまばゆく光る。

「我は(きら)めく炎。煌炎(こうえん)。罰として貴様らの命を全てを燃やし尽くしに来た」

 お面の奥から響く声はとても流暢(りゅうちょう)で、鞘に収めた刃を抜き出した。

「ほう、面白いことを言うな。ならやってみろ。俺が直々に相手してやる」

 この山賊たちを率いるリーダーで大柄な男が両手に斧を握った。

「でた! リーダーの斧二刀流。あれを食らったら一溜まりもないぞ」

 他の山賊がざわつく中、煌炎だけは静かだった。静かな殺気。それが煌炎の強さの秘訣でもある。

「死ねこの白野郎!」

 いろんな角度から斧を縦横無尽に振り回すが煌炎にはかすりもしない。

「笑止千万」

 煌炎は鞘から抜いた剣を彼らが見えなほどのスピードで横に振り、山賊のリーダーの腕を斬った。

「く、くそーーーーー! 全員でかかるんだ生きて帰すなよ」

 リーダーを失った山賊たちは各自、斧を持って突撃する。

 しかし、彼らの足元から白い炎が立ち上って全員を包み込んだ。

「焼却」

 白い炎は山賊たちを灰になるまで焼き尽くした。そして残ったのは静寂。あまりにも静かすぎる勝利。

 そしてその勝利を収めた煌炎は石を積み立てて何処かへと消えた。

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