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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
33/80

新技

「ふん、姿が変わった程度で調子に乗るなよ参加者が!」

 怒り狂い、目の色を変えたタリエスはハーメルンの笛を吹いた。

 それに応えるようにギランカは四本指を握りしめて魔道士となった悠斗に殴りかかった。

「おっと」

 悠斗はそれを帽子を抑えながら後ろに飛んで難なくかわす。

 相手を失った拳は空を切り、強固な床へと叩きつけられた。ここはクリスタルの保護の為にどこも頑丈に作られている。

 しかし、それをもろもせず拳は床を砕いて破片が飛び散った。

「どうだこの破壊力! 体内に蓄えられた魔力のおかけで普通の奴の何十倍ものパワーが出せる」

 まるで自分の力であるかのように振る舞う姿は悠斗にとって滑稽(こっけい)以外の何ものでもなかった。

「まったく、俺も随分と舐められたもんだな。こんな奴一匹に負けるとか思われるなんて。せめてこいつをあと五十匹ぐらい連れてくるんだったな」

「ふん、戯言を。貴様はすぐに食われるのだ。剣士のままだったら勝ち目があったかもしれんが魔道士となっては逆効果。ギランカが魔力ごと体も食ってしまうわ」

「なら、やってみろよ。あんたも一緒にかかってきていいんだぜ」

 悠斗との挑発にタリエスは顔をこわばらせる。

「くっ、若造が!」

 怒りをギランカに託して悠斗に攻撃するが床の破壊が進むだけでまるで当たらない。

「すばしっこいな。だがそれだけではこのギランカには勝てんぞ。やはり、魔道士の姿では戦えらしいな。元の姿に戻ったらどうだ。少しだけ待ってやる」

 嫌味を言いながら、負けが見えないタリエスはニラニラと笑って余裕を見せる。

「いや、そんな時間はいらん。ようやく体が慣れてきたところだ」

「なに?」

 悠斗はただ避けていたわけではない。慣れない体を慣らしてたのだ。

 魔力とかには疎いのでモンスターを相手にどんなものか試していた。

「ふん、どういうことかは知らんがギランカは魔力を食う。どんな魔法も効かんわ」

 なので魔道士はギランカと戦う時は体の側面を狙う。

 そこの肉質が柔らかく、何より口に当たらないこで魔力を食べられないので済む。

 だが悠斗は違う。

「なら、試してやるよ。スターバースト!」

 二つの水晶玉が紫色に輝き、それをギランカの口に向けて投げた。

「はっは!馬鹿め。それではギランカの餌だ」

 タリエスが大きな声で笑い、ギランカも大きな口を開けて水晶玉を飲み込んだ。

「しっかり味わえよ」

 この声はタリエスには聞こえていないだろう。だがそれでも構わない。ギランカに伝えたかった言葉だ。

 悠斗は指を鳴らした。それは部屋中に響き渡り、ギランカの様子がおかしくなる。

「ん、ん! どうしたというだ」

 腹が異様に膨らんで限界に達すると肉を飛び散らせて破裂して消滅した。

 これは一瞬のうちに起きたギランカの末路。

 タリエスはそれをただ見ているしかできなかった。なぜこうなった理解に苦しんだ顔をしていたが、次第に歯を食いしばって悠斗を睨んだ。

 この部屋にいるのはもう彼と自分だけで妙なことをした人物だからだ。

「貴様……一体何をした参加者」

「なに、参加者の力を使わせてもらっただけだ」

 水晶玉がギランカの体の中から帰って来た。

「固有技か」

 全てを察したように、小さいながらも憎しみのこもった声で呟いた。

 魔力を使わない固有技ならばギランカに通じる。そのことは学園長から聞いていた。

 なので固有技の力とミノスの魔力を掛け合わせた攻撃をギランカに放ったのだ。

 外側にコーティングされた固有技の魔力を守り、体内に着いたと同時に両方の力が破裂するようにした。

 ギランカは突然のことで魔力を吸収できず、攻撃を防げなかったということだ。

「さあて、降参するか副学園長さんよ。今なら許してやるぜ。それともさっきの可哀想(かわいそう)なモンスターみたいな姿はにしてやろうか?」

 水晶玉を紫色に光らせて威嚇しながら、タリエスとの距離を気づかれないように少しずつ詰める。

「可哀想だと。あんな風にしたのはお前じゃないか参加者!」

 既に空気中の酸素と成り果てているが、破裂して死ぬのは(むご)い。

 だが、悠斗が言った可哀想とはそういった意味ではない。

「どうやら勘違いしてるらしいから教えてやるけど、俺が可哀想って言ったのはてめえみたいなクズ野郎に従わなくちゃあいけなかったことを言ってるんだぜ」

 途端、タリエスの中にある何かが切れた。

「ふざけるな! 異世界から来た無法者のくせに粋がるな」

 杖を悠斗に向け、とびっきりの魔法を食らわせてやろうとしたが動きが止まってしまった。胸辺りにスゥーという違和感がしたのだ。

 ふと首を下に向け、確認して見るとそこには大きな風穴が空いていた。

 殺られたのだ。

 悠斗ではない。そんな動きは一切していなかった。他の誰かかやったのだ。

 だが、それが誰なのかを知ることなくタリエスは力尽きた。

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