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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
30/80

隠されていたクリスタル

「あっちは大丈夫っすかね?」

 五人で迂回して森を進んでいる中、ホグアはふと疑問に思った。

「多分大丈夫だろ。あの爺さんもいるしたくさんの魔道士が揃ってる。やられはしないさ」

「そうだといいんですが……」

 (うつむ)きながらミノスは暗い顔をした。

「ん? どうしたミノス。心配事でもあるのか」

「それが……私もそうなんですが、学園の生徒は低級のモンスターなら野外訓練で何度も倒したことがあるですけど生徒の安全の為にギランカのような手強いモンスターと戦ったことがないんです。先生たちは経験があるでしょうけれども経験のないみんながあのギランカと対峙できるかどうか……」

 確かに学園長もそれを気にしていた。

 だが大半は生徒を占めているのが現実。その生徒が戦えないとなると勝ち目はなくなり、都市に侵入されてしまう。

「だが我らには何もできんのではないか?それなら主が決めた役割を果たすまで。眼鏡っ娘はただついてくればいいんじゃ」

「確かにアリアさんの言う通りかもしれませんね。私たちがここで悩んでいても時間の無駄だと思われます。それなら生徒さんがたを信じて私たちは私たちの仕事をすればいいんです。そうですよね悠斗様」

 少し言い過ぎな気もするが、レイナの言う通りだ。心配をしても生徒たちが助かるわけでもない。

「そうだな。とりあえずあれを探さないとな」

「あの……その“あれ”ってなんですか?まだ聞いてないんですけど」

「そうだ私にも教えてくれないとはどういうことだ」

 アリアは悠斗に隠し事をされて不機嫌そうだ。

「すまん、すまん。できれば誰もいないところでいいたかったからな」

「それは学園の中に真犯人がいるということか?」

「え?」

 ミノスは口を開けて驚いた。しかし、アリアの言った通りのことを悠斗は考えていた。

「そうだ。だから今までお前らには伝えなかった。その時に真犯人に聞かれたら俺の作戦は失敗するからな」

「でも、何か確信はあるんですか。学園の中に真犯人がいるっていうことに」

 どうやらミノスは学園の中に真犯人がいるとはこれっぽっちも考えていなかったらしい。

 それもそうだろう。劣等生と言われていたとはいえ、いつもお世話になっていた人が悪さをしたということは信じたくないものだ。

 だが悠斗はそれしか考えられなかった。あれを見た時から。

「実は、ミノスに学園を案内してもらって一つ気になったことがあったから夜に一人で散策をしてたんだ。そしたらあるものが見つかった」

「あるもの……ですか?」

 ミノスの様子からして、どうやら悠斗が参加者だからということで隠していたわけではないらしい。

 彼女が人を騙すことなんてできないことは今まで見てきてわかっていたことだが、少し安心した。

「知らないのか? 学園の地下には大きなスペースがあって中央に大量の魔力を蓄えたでっかいクリスタルがあったぞ」

「クリスタル……」

 透き通った水色のクリスタルで形はそのまま取ってきたという感じで、岩のようにゴツゴツとしてたが触ってみるととても滑らかだった。

 それが悠斗が初めて見て、触ってみた感想だ。

「ではその悠斗様が見たという巨大クリスタルを狙ってあのモンスターが都市を攻撃しに来たということになるのではしょうか」

 レイナはいつも通りの機械のような冷徹な声で悠斗に疑問を投げかける。

「いや、それはない。あれは前からあったものだ。それならクリスタルが学園に運び込まれた時に襲ってこないとおかしいだろ」

 多分クリスタルの周りに結界を張って魔力が漏れるのを阻止しているのだろう。

 魔道士でない悠斗でも中に入った途端に妙な感覚に襲われた。

 対策はバッチリというわけだ。

「すいません失言でしたね」

 レイナはぺこりとお辞儀して謝罪する。

「いや、謝ることじゃねーよ」

 悠斗は昔からこういう堅苦しいのは嫌いなのだ。中学校の時や高校の時も先輩と呼ばれ、敬語を使われるのは歯がゆかった。

「でも、そのクリスタルで学園に真犯人がいることがわかったんですか?」

 首を傾げて悩むミノスだが隣のホグアは話すら聞いていないようで、興味なさそうな感じでボーとしている。

「あれの存在は学園の関係者か知らないだろ。それに俺が来る前に誰かが入った形跡があった。後で学園長を問い詰めるとそこに入るには学園長の許可がいるんだが、ここ数年にそんなことはなかったらしい」

 つまり、悠斗の前に入った者は無断で入ったことになる。悠斗もそうだが。

「じゃあ、その中に入った人が真犯人ってこと」

「そういうことだ。理解できたようだなミノス」

 仲間にわかってもらえるということはいいものだと悠斗は思ったが、後ろで冷たく見つめる者がいた。

「主! 眼鏡っ娘ばかりかまいおって。やはり眼鏡好きじゃったんじゃな」

 アリアは頬を膨らませて怒った。

「大丈夫ですアリアさん。私が全員分の眼鏡を買い揃えておくのでミノスさんを優遇することはなくなります」

 グッと拳を握ってアリアを励ますレイナ。

「いや、優遇してねーし買うな!」

「悠斗様がそう(おっしゃ)るなら……」

 握りしめた拳を下ろしてレイナは気を落としてしまった。

「そう落ち込むなよ。眼鏡なんてなくたってお前らはそのままでいいんだよ。眼鏡には似合う、似合わないがあるし俺はそのままの方が可愛いと思うぞ」

「か、か、可愛いですか! あ、ありがとうございます」

「ふん。そ、そんなの当たり前じゃ」

「やった〜〜〜悠斗に可愛いって言ってもらったっす」

 三者、大いに喜んだ。

 しかし、悠斗はそれに気づいてはいない。レイナとアリアの顔が赤くなったのがどうしてかもわからない。

「悠斗さんって女たらしですね」

 ミノスはその一言だけ残して先へ進んで行く。

「俺なんか悪いことしたか? ほんと、女ってなに考えてるかわからんな」

 悠斗は頭をかきむしりながらミノスを追いかけた。

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