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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
19/80

スターゲイザー

「竜人は逃したが人間は始末できたか」

 黒い煙で先が見えないがあれだけの威力なら木っ端微塵になっているだろう。

「ひ、ひぇ〜さすが本物のドラゴンっすね。威力が違うっす」

 もはやどこが巣だったのかわらかないほど破壊されている。

「悠斗様……降ろしてくださいボクアさん。悠斗様を探さないと」

「ダ、ダメっすよ。もう崩れかけてて危険っす」

 ジタバタと暴れるレイナを(なだ)める。

 もういつ壊れても不思議てはないほどの見た目となっている。

「私はどうなったっていいんです。それよりも悠斗様を……」

「おーーーい」

 涙目で暴れ続けるレイナはその声を聞いて急に止まった。なぜならその声に聞き覚えがあるからだ。

「悠斗様!」

 レイナは喜びで声が裏返っていた。それほど、それほど心配したから安堵(あんど)でそうなっていた。

「ご無事だったんですね」

 信じていた。

 レイナは悠斗が生きていると信じてはいたが絶大な威力のドラゴンの火炎弾を見て少しだけ揺らいでしまった。

 だが彼女が信頼し尊敬している彼は生きていた。

「こいつのおかげで助かったぜ」

 悠斗を支えて空に浮かしているのは黒くて丸い数十匹のコウモリ。

「アルジのためならアタリマエじゃ」

 指さされたコウモリは口はないが偉そうに甲高い声でそう言った。

「コウモリが喋ったっす」

「コウモリじゃないわよ。ア、リ、ア。アリア・マリアッセハート二世よ」

 コウモリの正体はアリア。彼女は悠斗の危険を察知してヴァンパイアの能力であるコウモリに変化して空へと逃げたのだ。

「こうなるとイロイロとフベンだしコエがおかしくなるからいつもはしないのよ」

 パタパタと必死に羽を動かしかしながらそんな愚痴を言う。

「と、とにかく逃げるっすよ〜。またドラゴンが襲ってくるっす」

「いや、ここで迎え撃つ。そのためにはボクアの力が必要だ。一緒に戦ってくれないか?」

 開いた拳には余った片方の(リンク)リング。

 彼女はキョトンするばかりであった。




「ぬぅ、なかなか止まんな」

 ドラゴンは自分で巻き上げた黒い煙によって悠斗たちを発見できていなかった。

「あの人間が真っ黒けになった姿が見たいんだが」

 奪い取った巣は自分が壊してしまった。ならばせめてあの人間を痛めつけてこの気持ちを鎮めようとしているのだが、あの人間は灰になってしまったのだろうかそれとも……。

「おいトカゲこっちだ」

 忌々しいあの声が頭上から聞こえそれに反応し、顔を向けると金属の塊が勢い良く振り下ろされた。

「ぐぬぅ!」

 幸い、鱗に当たり剣を弾いたがもう少しで目に当てるところだった。

「やっぱかてえなその鱗。さすがトカゲだぜ」

「貴様……さっきの人間か?」

 声は同じただが姿形がすっかり変わっていた。

 背中には体を覆えるほど大きい翼、頭にはとぐろを巻いた二本の角。

「そうかお前にはまだ見せてなかったか。これはお前がバカにしてた竜人と合体した姿だ。これで倒さねーとなんかしっくりこないからな」

「しっくりこない?まさか俺を倒せると思ってるのか。おめでたい奴だな」

「ああ、そのおめでたい奴にお前はやられるんだよ」

 急上昇、そして急降下。頭目掛けて剣を振るう。

 しかし、ドラゴンは後方へ飛んでひらりとかわした。

「遅いぜトカゲ野郎、そんなんじゃあ指一本でも倒せるぜ」

「トカゲ、トカゲと。人間、馬鹿にするなよ」

 逆鱗に触れた。

 ドラゴンは大きく口を開き炎の息吹を発射した。火炎弾とは違い、炎の密度が低いこれならば突破できる。

「それを待ってたぜ!」

 悠斗は空気を吸い込み口から炎を吐いた。すると息吹の威力は削がれてその隙をついて突進して行った。

「おら!」

 炎を抜けた悠斗は手に持った剣を力一杯に横に斬った。

 鱗はガリガリと剥がれてその線上にあった目は両方とも血を吹き出してドラゴンは目の前が真っ暗になった。

「ぐぅわーーーーー! 人間よくもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーー‼︎」

 怒りの咆哮で空気はビリビリと振動するが、何も見えないなら何も怖くはない。

 悠斗は借りている翼でさらに天高く飛び、剣を振り上げたままドラゴンの脳天目掛けて落ちていく。

「スターゲイザーーーーーー!」

 悠斗が技名を叫ぶと剣が薄い紫色に輝きだした。

 そしてドラゴンの頭に鈍い音と共に落ちてそのままひび割れた巣まで落とす。

 巣は崩壊寸前だったのが崩壊へと変わり、音を立てて崩れる。

 ドラゴンは絶命することはなかったがピクピクと痙攣(けいれん)して指一本も動かない状態で目も白目を見せている。

「そこで空を眺めてな。そして俺を思い出して今までのことを反省するんだな」

 剣を払い背中にしまう。その時に剣についていたドラゴンの鱗が落ちた。

 それは地面に着いた瞬間に粉々に砕け散った。

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