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人間不信様のハーレム世界   作者: 和銅修一
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降ってきた竜人

「は〜、全然進んでる気がしねーー」

 悠斗は目の前に広がる草原でそう文句を言った。

 不快にこの草原は広すぎて今自分がどこにいるかわからなくなってしまう。

「もう少し、もう少し頑張りましょう悠斗様」

 ここはモンスターが出る可能性があるエリアだ。もっと先に進めばそうではない場所に出るのでそこまでは行きたい。

「はぁ……ゲームの時は楽だったのに」

 武器を背中に背負い、防具を着た状態のまま歩き続けるのは流石に辛い。

 ゲームでは簡単だったのにこれだけは違うのかとがっかりした。

「は〜、空を自由に飛びたいな」

 だがレイナは便利な道具は出せない。

 仕方なく空を見上げると点があった。

 点は毎秒、毎秒大きくなりついに悠斗の元へと落ちた。

「い、いてて」

 よけきれなかった悠斗は防具によってその落ちたもので怪我をすることはなかった。無傷だ。

「主、大丈夫か?」

 衝撃で体が痛いということ以外は大丈夫だ。なら立ち上がって無事を知らせてあげようと未だに腹に落ちてきた何かをどかそうと手を出した。

 ムニッ。

 柔らかく弾力のある感触が手に伝わった。

「な、な、なんだこれ」

 驚きで目を見開くと、目の前には褐色肌で短い赤髪の女の子がいた。

 それも普通の女の子ではない。頭に角が生えている。

「あ〜、る〜、じ〜」

 殺気がプンプンと伝わってくる。もちろんアリアからだ。助けを求めてレイナに目をやるが

「最低です」

 と見放されてしまう。

「待てアリア。これは不可抗力だ。俺の意思じゃない」

 そそくさと空から降ってきた女の子から離れる。

 その彼女は呑気に寝息を立てている。あの高さから落ちてきても平気だとは不思議なものだ。

「それはもう問題ではないのだ。主がその女の乳を揉んだという事実だ。粛清(しゅくせい)を下さねば」

 爪を突き立てその粛清とやらを実行しようとするが女の子が起き上がるのに気がついて手を止めた。

「ん〜、むにゃ? 勇者……様?」

 空から降ってきた少女は悠斗を見てそう言った。

「は?」

「勇者様だ〜〜〜〜〜〜〜‼︎」

 女の子はいきなり悠斗に抱きついた。

 三人はわけも分からず目が点となったのは言うまでもない。




「おいおい。よく食うなお前」

 彼女に話を聞こうとしたが、腹が減ったと聞かないのでレイナが空間収縮で持ち運んでいた食料でおもてなしをした。

 だが数々の料理をペロリと平らげてしまった。

「おいらの名前はホグア、見ての通り竜人っす」

 竜人、確かにそんな感じはする。角とか牙なんてそれっぽいけど、一つ気になるとすると服だ。

 何かの民族衣装のように布が少なく、露出部分が多い。へそ丸出しなのである。

「で、お主はなんで空から降ってきたのじゃ」

「ただ腹減って落ちただけっすよ。そん時に勇者様がいただけで……」

「だからその勇者とは一体どういうことだ」

「いやね。おいらの村の集落に伝わる伝説に災害が起きた時、それを払う勇者がいるというのがあって、その昔の人が描いた勇者様にそっくりだったからつい……」

 てへっ、という感じで自分で頭を小突いた。

「災害って……まさか何か起きたのか」

「はい。おいらの村の食べ物を貯蔵している洞窟にドラゴンが住み着いてしまったんです。村には若い人が少なくて倒すどころか撃退するのも難しい状況みたいで……」

 アリアは肘で悠斗の横腹を突ついた。

「おい主。もしかしてこの小娘を助けようというわけではあるまいな」

「なんだダメなのか」

「なるほど、小娘の乳を触ったから……しかし竜人とは……なら我でも良いではないか」

 何かボソボソと呟いているのはわかったが内容まではうまく聞き取れなかったが、多分彼女は違う方向へと捉えてしまったらしい。

「ああ、何か誤解してるようだな。確かに俺はこの世界の神を目指してはいるがその前にこの世界を良くしたいと思ってる。だから目の前にある問題は見過ごせねーよ」

 そこまで言うとアリアは自分の間違いに気づき、ハッとする。

「アリアさん。観念したらどうですか?悠斗様は頑固ですよ」

 悠斗の真っ直ぐな目を見てアリアはあることを確信した。

 これからもこの目のせいで厄介ごとに巻き込まれるだろうと。

「わかった。元より主に我が命は預けてある。それをどう使おうとそれは主の勝手だ」

「すまんなアリア。わがまま言って」

 “ふん”という感じの雰囲気満々でそっぽを向く。

「あの〜、お話どうなったすか?」

 タイミングを見計らったようにホグアが手を上げておずおずと質問する。

 もちろんその答えは決まっている。

「俺は勇者じゃなくてただの人間の榊 悠斗だがその問題を解決してやる」

 見る見るうちにパァーと表情が明るくなる。

「ありがとう悠斗〜〜〜‼︎」

 両手いっぱい広げてホグアの豊満の胸に悠斗を押し付けた。

「こ、こら! 小娘、主に手を出すな」

「う、ふがっ!」

 悠斗はその後、生死の境を彷徨(さまよ)った。

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