第9章
「わあ――っ!!」
「ヒーリング・ウインド!!」
ルイザの癒しの力がエリーたちの傷を癒していく。
ルイザの回復魔法で、エリーたちは再び立ち上がった。
エリーとユリーが再度、シルヴィに攻撃を試みる。
「アクア・ウオーティ・フリーズ!!」
「アクア・スティアーサンド!!」
「無駄だ!! はあっ!」
「きゃあ――っ!!」
「エリー、ユリー! 大丈夫か?」と、フェイルが声をかける。
「ええ」
「はい、大丈夫です…」
「シルヴィ、これはどう? イリュージョン・ラビリンスミラー!!」
「なに!?」
シンクレアの幻術で、シルヴィは判断力を失った。
「くそ…! どこだ!!」
シンクレアにはシルヴィのいる位置がわかった。
「ユリー、この位置から斜め右を攻撃して!! シルヴィはそこにいるわ」
「わかったわ。 シンクレア。 いくわよ。エリー」
「はい、お姉さま」
「アクア・スティアー・サンド!!」
「アクア・ウオーティ・フリーズ!!」
「なに!? うわあ――っ!!」
「やったわ!」
「いいえ、まだよ! イリュージョン・スターディン!!」
「二度も引っかかる俺ではないわ!! ブラック・サンダー!!」
「ウインディ・ハリケーン!!」
ティシアの魔法がシルヴィの攻撃を防御した。
「シンクレア、今のうちに!!」
「ええ。 イリュージョン・スペース!!」
シンクレアが作り出した幻想空間は、エリーたちとシルヴィを一瞬にして包み込んだ。
「島の人々を襲ったりして、許さないわ!! イリュージョニスト・ミスティック!!」
「うわっ! おのれ…!! 我を守護するダーク・ストーンよ、我に力を与えたまえ!! ブラック・ファイヤー・スティール!!」
7人はいっせいに吹き飛ばされた。
「つ…強い…」
「でも、こいつを倒さなければルシアの元へはいけない」
「みんな、私の力で元気になって。 ヒーリング…」
「ブラック・ファイヤー!!」
「きゃあ――っ!!」
ルイザは地面に倒れる。
「ルイザ!!」
6人は、倒れたルイザに駆け寄った。
「ルイザ、しっかり! しっかりして!!」
「エリー… みんな…… ごめん…なさい… 力を貸せなくて…」
そういって、ルイザは意識を失った。
「ルイザ! ルイザ!!」
「大丈夫よエリー。 ルイザは意識を失っているだけ。 心配いらないわ」
「お姉さま…」
不安げなエリーに、ユリーは安心させるように 彼女の肩に手を置いた。
「よくもルイザを!!」
「フン! これでおまえたちの傷を癒すものはいなくなったぞ。どう戦うつもりだ?」
「おあいにくさま。まだ私たちには戦う力は残されているわ。 エリー、あなたのクリスタルの力を私に貸して!」
「わかったわ」
「シンクレア、あなたのイリュージョンクリスタルの力も貸してほしいわ」
「いいわ。 エリーちゃん、いくわよ」
「はい」
「イリュージョンクリスタルよ!」
「アクアクリスタルよ!」
「このものに力を与えたまえ!!」
エリーの持つアクアクリスタルと、シンクレアの持つイリュージョンクリスタルの力がユリーに注ぎ込まれた。
「シルヴィ、私たちの大切な仲間をよくも傷つけてくれたわね! あなたを絶対に許さないわ!!」
「ほう。どうするつもりだ?」
「アクア・イリュージョン・サンド!!」
「フン!」
シルヴィはバリアを張って防御したが、防ぎきれなかった。
「…なに!? うわあ――っ!!」
「お姉さま!! すごい!!」
「やるわね、ユリー!」
「こっちもいくぞ。ティシア」
「おう!」
ティシアはフェイルに、自分のクリスタルの力を貸した。
「グランドストーム・ハリケーン!!」
シルヴィは再び吹き飛ばされたが、体勢を立て直した。
「しぶとい奴め!! はあっ!!」
攻撃をよける6人。
王の間。
「いいぞ、シルヴィ。そいつらをとことん追い詰めろ」
ルシアは満足そうな笑みを浮かべた。
「ファイアリー・インフェルノ!!」
「ブラック・シールド!!」
ジェミーヌの攻撃魔法がシルヴィの防御シールドに跳ね返され、吹き飛ぶ6人。
「わあ―っ!!」
「ハハハハ。どうした? もう終わりか?」
「こんなところで… 負けるわけには行かない!!」
「そうよ。私たちはレイリア様と約束したんですもの。 おまえたちを倒すと」
「みんな、今こそ俺たちの力をひとつに合わせよう。単体の攻撃ではシルヴィに防がれてしまう。 それにこれ以上傷ついてしまっては、ルシアとの戦いに支障をきたす恐れがある。倒れたルイザのためにも、俺たちはがんばらなければ!!」
「フェイルの言うとおりだわ」
「うん!」
6人はシルヴィを見据えて立ち上がった。
「ここがおまえたちの墓場となるのだ!!」
「何を言ってるの?」
「なに…!?」
「俺たちはまだ死ぬつもりはないぜ。 みんな!!」
エリーたちは輪を作って並び、中央に聖剣を重ね合わせる。
剣の柄の部分に収まっていたクリスタル・ストーンがエリーたちの頭上に浮かんだ。
守護精霊たちもクリスタルを囲むようにして集まる。
「レイクフェアリー・セシア! アクアクリスタル!!」
「マリンフェアリー・エアレス! アクアクリスタル!!」
「アースフェアリー・グリース! アースクリスタル!!」
「イリュージョンフェアリー・ミスティ! イリュージョンクリスタル!!」
「ウインディフェアリー・ハレイス! ウインディクリスタル!!」
「フレームフェアリー・ファイアリー! フレームクリスタル!!」
「我らを守護する精霊たちよ! 我らに力を与えたまえ!! かのものを倒す力を貸したまえ!!」
6体の精霊とクリスタルがまばゆい光を放ち、それぞれの守護者の全身を包み込んだ。
「な、なんだ!?」
あまりの眩しさに、シルヴィは目を閉じた。
そのとき、スカイクリスタルが光を放った。
「見て。ルイザのスカイクリスタルが!」
「俺たちのクリスタルが呼び寄せたんだ。 きっと」
スカイクリスタルの守護精霊・ディアスが傷ついたルイザの身体を癒した。
「…ん…」
「ルイザ…大丈夫?」
その呼びかけに、ルイザはゆっくりと目を開け、起き上がった。
「……ディアス… ありがとう」
「さあ、みんなのところへ」
「ええ」
ルイザは立ち上がると、ジェミーヌの隣へ行って剣を重ねた。
「ルイザ!!」
「みんな。心配かけてごめんなさいね」
「ルイザ…」
「エリー、私はもう大丈夫よ。 ごめんね。 心配かけて」
「ううん。無事でよかった」
ルイザはにっこり微笑むと、呪文を唱えた。
「スカイフェアリー・ディアス! スカイクリスタル!!」
ルイザの全身も、光に包まれる。
7人は光の渦の中にいた。
「精霊たちの力を感じるわ」
「みんな、ここで一気にシルヴィを倒して ルシアのところへ行こう!!」
「おう!!」
「いったい…何が起こったんだ?」
光の衝撃がおさまったシルヴィはエリーたちと一緒にいるルイザを見て驚いた。
「おまえ! いったいどうやって!?」
「クリスタルと精霊が力を貸してくれたのよ!」
「シルヴィ!! 私たちの力、いまこそ思い知りなさい!!」
エリーたちの心と7体の守護精霊、そしてクリスタル・ストーンの力がひとつになった。
聖剣の中央部分が光を発し、綺麗な虹色のクリスタルが出現した。
「これは…?」
「新しいクリスタルなの…?」
シルヴィはそのクリスタルを目の当たりにして、言葉を失った。
一方、王の間にいるルシアも驚愕に目を見開いた。
「これは…! 伝説のエターナルクリスタル!!」