第14章
「な、なんですって!?」と、シンクレア。
「この人が…?」
「みんな、落ち着け!! 以前レイリアさまは、こうおっしゃっていただろう。エリーとユリーのお父さんは、ディール島の探索へ向かって行方不明になったと」
「ええ。フェイル。確かにレイリアさまはそうおっしゃっていたわ。でもこの人は紛れもなく父よ!! エリー、あなたも覚えているでしょう? 小さい頃、お父さまと一緒に遊んだことを」
「ええ、お姉さま。今私たちの目の前にいるのは、パパに間違いないわ!!」
「そう。おまえたちの言うようにこの男はおまえたちの父親だ。だが今は、私の配下にある」
「父に何をしたの!?」
「答える必要などないだろう。この男はすでに私の僕だ。さあ、やれ!!」
ルシアの命を受け、ジェイディスはエリーたちに剣を向けた。
「お父さま! やめて!!」と、ユリーが叫ぶ。
しかし、ジェイディスの攻撃は止まらない。
「お姉さまっ!!」
エリーが戦えない姉をかばい、飛び出した。
「きゃああーーっ!!」
ジェイディスの攻撃を受け、倒れるエリー。
「……エリー!!」
ユリーがそばに駆け寄った。
「エリー、しっかりして! エリー!!」
「…お姉さま… 無事で…よかっ…た……」
意識を失うエリー。
「エリー!! ごめんなさい…。私のために……」
「ユリー! とにかく今は、やるしかない!!」
「フェイル…」
「フェイルの言うとおりよ、ユリー。今は戦うことしかできないわ。でも、必ずお父さんを救ってあげましょう」
「シンクレア… わかったわ!」
「エリーのことは私に任せてください」
「お願いするわね。ルイザ」
「はい」
ユリーは意識を失っているエリーをルイザに預けた。
ルイザは回復魔法を唱えはじめた。
しかし、エリーの傷はひどく 彼女のヒーリング能力を持ってしても、一部しか直すことができなかった。
「ごめんなさい。私にはここまでしか…」
「気にする必要はないわ。ありがとう、ルイザ」と、ユリーが言った。
エリーを危険が及ばない場所へそっと横たえると、ユリーたちは剣を構えた。
「いいか、みんな。今俺たちは、アレス島の中でも最強の戦士と呼ばれた、ジェイディスさんを相手にしているんだ。絶対に油断はするなよ!! 少しでも手を抜けば、やられるぞ!!」
「フェイル、それはわかってるけど、まさかユリーたちのお父さんと戦うことになるなんて…」と、シンクレア。
「確かにな。だけど、あんなに強くて優しかった人がどうしてこんな…」
そのティシアの言葉が言い終わらないうちにジェイディスが突進してきた。
「くるぞ!!」
「イリュージョン・ラビリンス・ミラー!!」
「ブラック・シールド!!」
「そんな…!! 攻撃を受け止めた!?」
「ブラック・フリーザー・ストーム!!」
「きゃあっ!!」
「シンクレア!!」
「大丈夫よ…。フェイル」
「アクア・スティアー・サンド!!」
「聞かぬな。はあっ!!」
至近距離で攻撃を受けるユリー。
「きゃあーーっ!!」
「ユリー!!」
「大丈夫か!?」
「ええ…」
「一体、どうしたらいいんだ!?」
「どうした? 攻撃してこないのなら、こちらから行くぞ」
ジェイディスが剣を振り上げた。
フェイルは即座に転移魔法を唱えた。
7人の姿がディール島内から消える。
「なに!? 逃げたか…。ルシアさま、申し訳ございません」
「まあいい。 次に会うときが楽しみだ」