21、解かれた封印
『はぁ、はぁ、はぁっ…っく、』
警鐘が鳴っている。
強く、激しく、私の脳内を駆け巡る。
乱さないで。
暴かないで。
いやだ。
こんなのはいやだ。
「お前が手渡されたっちゅうあの手紙、何が書いてあったか教えたろか?そんでもそないな血迷うたこと言えるんやったら、家族ごっこでもきょうだいごっこでも、なんぼでもつきおうたるわ」
「それって、どういう…」
聞いてはいけない。
反射的にそう思った。
けれど体はすでに兄の腕の中にあり、手も動かせない状況だった。
当然耳を塞ぐことはできない。
―――聞いちゃダメ。
「いい、やっぱりいい、聞きたくない」
「聞けや。あの女、お前にアレ渡したんやったら、軽くお前にも嫌がらせしてんねんで。お前が盗み見せんかったのは誤算やろうけどな」
頭の中で、警鐘がガンガン鳴っている。
―――思い出してしまう。だめだ、だめ、だめ、だめ…
「変態、やて」
『変態。』
「あっ…!」
その二文字が、耳を通して頭の中に突き刺さった。
「変態て、書いてあったんや。あん女は、俺が誰かの身代わりにしてることに気付いて、しつこく聞いてきた。せやから、教えたったんや。俺が誰を代わりにして抱いとるか、な。……そしたら、変態やて」
「ああ…っ」
「お前、ほんまに忘れとったんか?俺がお前に、何したんか…。お前とおって、いっつもこうしたいて考えとるような奴のしたことを、本気で今まで忘れとったんか?」
強く抱きしめられても反応できないほどの衝撃が頭を打っていた。
―――思い出した。
私が本当に忘れてしまっていたこと。
『はあっ、はぁっ、うっ、……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ』
何故忘れていられたのだろう。
あんなに衝撃的だった、あの出来事を。
兄が口にした二文字が、まるで封印を解除するための呪文だったかのように、今すべての記憶が私の中で溢れかえっていた。
『はぁ。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あああ、っっ…………みどりぃ!!』
「ああああああああああああああーっ!!」