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13、理想と現実




(どうしてこんな風になってしまったんだろう)


もちろん自分が原因だってことは百も承知の上だ。

けれど、確か私は、「きょうだい」というものにひどく憧れを抱いてはいなかったか。


少なくとも二年前までの私は、確実に兄に対して様々な理想を宛がっては喜んでいた。

いつか再会できるだろう、成人して、働くようになって、一人暮らしでも始めたら、母に聞いて父と兄の所を訪ねてみよう。

母が答えない場合は、自分で調べてみようとまで思っていたのだ。


それなのに、現実はどうしてこう容赦なく何もかもをぶちのめしてくれるんだろう。

別に、理想通りの兄や家族なんて、そこまでは望んでいない。

ただもう少しだけ、兄が歩み寄ってくれれば。

ほんの少しでいいのだ、壁を低くしてくれたら……。


…………。


(驚いた。私って実はけっこう兄が好きなの…?)


そんなはずはない。

あんなふしだらで得体の知れない男を、実の兄として許せるはずがない。


(でもそれならどうして、こんなに兄を気にしてるの)


嫌悪しているからだ。

行動がいちいち目につくのだ。

それだけ。

……ただそれだけのことだろう。

いやだ、あまり考えたくない。


―――あんたのお兄さん、残酷なやつよ。


元カノらしき美人の声がする。

考えたくない。

私は膝を抱えてしゃがみこみ、頭を膝の間に伏せた。

今はまだ、何も知らず、何も理解できないままでいいのだ。

そうでないと何もかもすべてが壊れてしまう気がした。


私は、恐れているものの正体を、本当は知っているのだ―――。






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