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バイクに乗せる相手

作者: WAIai
掲載日:2026/08/31

大川は駅で降りると、駐車場に向かっていた。

秋の夜は早く、もう暗闇のカーテンが閉まっていた。

早く帰ろうと足早になったのだが、途中で止まる。

ーん? 何だ?

20代前半くらいだろうか。

ロングヘアーの女性が妙な歩き方をしている。

灯りを頼りに見ると、履いているものに問題があるようだった。

ーヒールが折れたのかな?

大川は目を凝らすと、そう結論づける。

秋の風がそうっと流れてきて、髪にさらりと触れていく。

大川はどうしようか迷ったが、女性に声をかけてみる。

「どうしたんだ?」

「!! び、びっくりした」

女性は大川の姿を認め、目を丸くしている。

確かに金髪にジャンパー姿は目立つ以外の何ものでもない。

大川自身は気に入っているのだが、ヤンキー仲間からは王道だから変えろと言われている。

ー俺は俺を貫く。

そう決めていたので、女性が大川に声をかけられて、びびるはずである。

なるべく刺激しないように、大川は柔らかく言う。

「その靴、折れているんだろう? 捨ててしまえ」

「え…。で、でもあの、履くものが…」

「俺がうちまで送ってやる」

ぽろりと口からこぼれていた。

女性は驚いたようだが、大川自身も驚いていた。

ー確かに好みの女だけど。

モデルみたいにオシャレで、顔が整っており、お付き合いになりたくなるのだが、ストレート過ぎたようだ。

ー俺、不器用だからな。仲間にもそう言われているし。

どうもヤンキー仲間からも、古くさいとか、昭和の親父とか、言われるくらい気遣いだった。

大川のせいではなく、家庭環境が複雑で、母親はいるのだが、父親がいなかった。

病死のようで、若い写真で写っている。

シングルマザーの母親を助けるために、バイトしたりしているのだが、それだも明日どうなるか分からなかった。

ーだから困っている人を見ると、助けたくなるんだよな。

もちろん下心もある。

あるのだが、彼女とはゆっくり付き合いたいなと思う。

スマホを取り出し、仲間に遅くなるとLINEすると、女性と向き合う。

「どうする? 俺、バイクなんだけど、後ろに乗れば、送ってやれるんだけと…」

「バイク…。で、てもタクシーを拾おうかと」

「あ、そう。じゃあ失礼」

一気に興味をなくし、行こうとすると、女性が慌てて声をかけてくる。

「あの!! 変なことはしませんか?」

「失礼な。俺は変態じゃない」

はっきり言うと、大川は女性を眺める。

細いウエストに、長い脚。

後ろに乗せたら目立ちそうだなと思いつつ、女性に頼られるのは悪くない。

ー早く俺を選べ。

そう急いでいると、女性が迷った結果、ビールを捨てて、大川に言ってくる。

「その…。良かったら乗せてもらえますか? タクシー代も馬鹿にならないので」

大川は心の中でガッツポーズすると、女性に背中を向ける。

「ほら、背負うから乗って。その足じゃ、歩きづらいだろう?」

「え…あ、あのでも、重かったら…」

「いいから。早く乗れ」

ヤンキーモードが出て、そう言うと、女性は身体をびくっと反応させる。

しまったと思いつつ、大川は優しくカバーする。

「大丈夫。背中に掴まって」

「…失礼します」

女性の身体が大川の背中に預けられる。

立ち上がると、どこが重たいんだというくらい、軽かった。

だから、つい言ってしまう。

「もっと食べろ。軽すぎる」

「え…。そ、そんなことはないんですけど…」

「人の忠告はよく聞くこと。分かったか?」

「は!はい…!!」

女性は肩に掴まるように、接してくる。

大川は軽々と運んでいくと、バイクにたどり着く。

「はい、ヘルメット」

女性をおろし、ヘルメットを渡すと、自分もヘルメットをする、

守らないと警察がうるさいので、守ることは守っていた。

「かぶれたか?」

「何とか。これでいいんでしょうか?」

女性の頭を確認すると、ふわりと甘い香りが漂ってくる。

大川はすん、と鼻を鳴らすと、ますます気に入ったと狙っていく。

「はい、後ろに乗って」

「えっと、どうすれば…?」

「俺の肩に手を置いて。…そう。それでいい」

女性がバイクを跨ぐと、大川はバイクのエンジンをかける。

2人乗りは初めてではないが、女性の身に何かあったら困るので、安全運転で行くことにした。

「行くけどOK?」

「お、OKです…!! お願いします」

そう言うと、バイクが走り出す。

法定速度を守りながら、女性のためにゆっくりと進んで行く。

「うち、どこの近く?」

「ガストの近くなんですけど…。分かりますか? そこで降ろしてもらえれば、いいです」

「ガストの近くね。よし、行くぞ!!」

大川は気合をいれると、颯爽とバイクを飛ばすのだった。

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