第6話 ナイフ投げ
どうも、Rowun☽です。
第6話を読みに来てくださりありがとうございます。
今回は少しドキッとするような展開が入っている回になっています。
これまでとは少し違った空気感も感じてもらえたら嬉しいです。
それでは、第6話をどうぞ。
次の週の朝だった。
俺はいつもの日課をこなすため、野外訓練場へ向かっていた。
朝の空気は冷たい。
まだ兵士たちの姿もほとんどない。
……静かだ。
「よし」
軽く肩を回す。
最近は潜入や基地の構造把握ばかりで、まともな訓練をしていない。
体を動かさないと鈍る。
ナイフ投げでもするか。
そう思い、的のある場所まで歩いていった。
だが。
俺はその場で立ち止まった。
『教官不在時の使用は禁止』
木の板にそう書かれている。
「……マジか」
思わず声が出た。
せっかく来たのに。
「ナイフ投げも出来ないのか……」
肩を落とす。
「筋トレと走りだけって……」
朝はまだ早い。
兵士たちはほとんど寝ている。
どうしたものか。
俺はその場にしゃがみ込んだ。
そして無意識に呟く。
「せめてエルダ教官がいればなぁ……」
「俺がなんだって?」
後ろから声がした。
「きょ、教官!?」
振り返る。
そこにはエルダ教官が立っていた。
俺は慌てて立ち上がる。
「お、おはようございます!」
反射的に敬礼する。
「ああ、おはよう」
エルダ教官は落ち着いた声で答えた。
「こんな朝早くから何をしている」
「えっと……」
俺は的の方を指差す。
「ナイフ投げしたかったんですけど、教官いないと使えないみたいで」
するとエルダ教官は少し考えたあと言った。
「今は俺がいる」
「え?」
「やりたいんだろう」
「いいんですか!?」
思わず食い気味になる。
エルダ教官は小さく頷いた。
「やってみろ」
ラッキーだ。
俺はナイフを一本手に取った。
軽く重さを確かめる。
……問題ない。
的に向かって投げた。
シュッ。
ナイフは真っ直ぐ飛び――
中心の少し外に刺さった。
「ほう」
エルダ教官が言う。
「惜しいな」
「最近やってなかったので」
俺は苦笑する。
二本目を投げる。
今度は中心に命中した。
「お見事」
エルダ教官が言った。
「次はあれを狙え」
人型の的を指差す。
「右耳だ」
「右耳……」
俺はナイフを構える。
そして投げた。
だが、少しずれて外れた。
「ふむ」
エルダ教官が呟く。
「センスはあるな」
そして。
「もう一度」
「はい」
ナイフを構える。
その時だった。
後ろから腕が伸びてきた。
「体の中心が少しブレている」
エルダ教官が俺の腕を取る。
「こうだ」
背後から体を支えられる。
……近い。
「この状態で投げてみろ」
耳元で低い声が響く。
くすぐったい。
変な感じだ。
俺は言われた通りナイフを投げた。
シュッ。
右耳に命中した。
「教官!やりました!」
嬉しくなって振り向く。
その瞬間だった。
距離が近すぎた。
俺の唇が――
エルダ教官の唇に触れた。
一瞬だった。
でも確かに。
触れた。
俺は固まる。
そして。
「す、すいません!!」
慌てて離れた。
エルダ教官も少し驚いた顔をしている。
「……いや」
短く言う。
「俺の方こそ距離が近すぎた」
微妙な沈黙が流れる。
気まずい。
その時だった。
遠くから声が聞こえた。
「おーいロムー!」
ナルアだ。
隣にはヴェスターもいる。
こっちに手を振っている。
「……」
俺はこの空気から逃げようとした。
だがその瞬間。
エルダ教官が俺の腕を掴んだ。
「っ!?」
そしてそのまま――
茂みに引き込まれた。
「しっ」
口元に指を当てられる。
ナルアたちが近づいてくる。
「さっきここにいたよな?」
「教官と一緒じゃなかった?」
足音が近い。
……近い。
エルダ教官の顔が。
かなり近い。
そして。
エルダ教官はゆっくりと顔を寄せ――
俺に口付けた。
【あとがき】
第6話を読んでくださりありがとうございました。
少しずつ関係や空気が変わり始めてきた回だったかなと思います。
ここからさらに物語も動いていきますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも応援していただけると励みになります。
それではまた次のお話で。
またね。




