1/9
プロローグ
世界には、いくつもの国が存在する。
その中でも長く対立してきた二つの国――
エーベル国とグライス国。
小さな衝突は幾度も繰り返され、互いに睨み合う関係が続いていた。
そんな時代の中で、一人の少年が任務を受ける。
ロム・ルーカス。
エーベル国の特殊部隊に所属する十八歳の兵士。
彼に与えられた任務はただ一つ。
敵国グライスへ潜入し、軍の内部情報を探ること。
志願兵として敵軍に紛れ込み、正体を隠したまま生きる危険な任務。
もし正体がバレれば、その瞬間に死を意味する。
だがロムは迷わなかった。
それが任務だから。
そして――
その国には、ある男がいる。
エルダ・シリル・ヴィルギル。
グライス軍の教官であり、多くの兵士から恐れられる軍人。
本来なら決して出会うはずのなかった二人。
敵国同士の兵士。
交わるはずのない運命。
だが、戦場の裏側で
静かに歯車は動き始める。
これは――
スパイとして敵国に潜入した少年と、
その国の軍人との出会いから始まる物語。




