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時をあやつる魔法族に転生した。未来のAIに導かれ最強の魔法王になる  作者: 飛来甲殻類


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 本格的な魔法修行がはじまってから数週間後。


 その日は、剣の稽古も魔法の練習も休みで、アッシュたちはひさしぶりに朝から村の空き地でボールを蹴る遊びをしていた。


 以前は空き地に線を引いていただけだが、今は長方形の立体物が両サイドに設置してある。

 サッカーの試合におなじみのゴールマウスである。


 角材を組み合わせてつくったシンプルな木の枠で、つい最近覚えた【木を角材に加工する魔法】を使ってアッシュが加工し、提供したものだ。


 これにより、敵陣奥にボールをドリブルで運べば得点というものから、枠内にボールを放りこむというゲーム性への変化が生じ、地球のサッカーに近いルールになったのである。



「オレにクリロナで勝てると思うな!!!」


 パワフルな突進をするディルが敵チームの子どもたちをぶっ飛ばしていく。


 ディルはもともと高い身体能力の持ち主だったが、サビーヌに師事して本格的に剣の修行をするようになったことで基礎体力が大幅に向上し、でもう手を付けられないほど成長している。


 アッシュが何度も憧れのひととして名前をあげていたせいか、ディルはいつの間にか自分で創意工夫してつくったボール遊びを「クリロナ」と呼ぶようになっていた。


 この世界で「サッカー」という本来の名称が根づく可能性を消してしまった。

 そう考えると複雑な気持ちになるが、この世界では「サッカー」という概念は「クリロナ」という概念へとかわったのだ。



 ディルが好き勝手大暴れするせいで、負けが確定しつつあったチームが助っ人を呼びこもうと思いつき、見物者に目をつけた。


「あ、ニルフェンもやろーよ」

「遠慮しとく。疲れそうだし」

「そんなこと言わないで、ディルをやっつけてよー」


 しばらく断っていたが、子どもたちがあまりにもしつこくせがんでくるのでニルフェンはしぶしぶといった様子で重い腰をあげた。


 ところが、いざ参加すると、乗り気じゃなかった人物とは思えないプレイぶりをみせた。


 横を戦車のような勢いで通過しようとしたディルからひょいとボールを奪うと、眼前に立ちふさがる守備陣を華麗にかわしてそのままゴールを決めてしまった。


 ただ、どう見てもニルフェンの足は1度もボールに触れていなかったのだが。

 

 歩くニルフェンの後ろに空中を浮遊するボールがひとりでについていき、自発的にゴールへ入っていったようにしか見えない。


(魔法だ……)

(ズルだ……)

(おとながズルしてる……)


 子どもたちから抗議の視線を浴びたニルフェンが小首をかしげ。


「わたし手はつかっていないけど?」


 などとすまし顔で言ってのけたものである。


 子どもたちが大人の汚いやり口を社会勉強しつつあったとき、村の入り口のほうがにわかに騒がしくなった。




 ちょうど騎馬の一団が村に入ってきたところだった。

 ロマノ城の騎兵隊だ。


 巡回の途中で立ち寄ったのかとアッシュは思ったが、一団のなかに黒光りする甲冑の姿を見つけた。

 黒騎士が自ら村を訪れることはあまりない。

 どうやら通常の巡回ではなさそうだ。


 黒騎士は出迎えた村人と短く話をすると、まっすぐ空き地にむかって馬を進ませてくる。


 嫌な予感がする。


 ふだんこの村に関心を示さない黒騎士の興味を惹くものといえば……。

 アッシュは、抗議や苦情の声をあげる子どもたちに囲まれて涼しい顔をしているエルフを見やった。


 ニルフェンを連れだして立ち去るべきかどうか迷っているうちに、黒騎士が空き地に入ってきてしまった。


 下馬した黒騎士は手綱を従者に預けると、ニルフェンの前に立った。

 ゴツゴツした甲冑で武装した長身の騎士と、小柄なニルフェンが並ぶと、それだけでもうパワハラじみた光景だ。


「おまえがエルフの魔法使いか」

「見ればわかるでしょ」

「名は?」

「ニルフェン」

「フェンではないのだな?」


 アッシュは、あっ、と思った。


 黒騎士はニルフェンの噂を聞いたのだろう。

 エルフの魔法使いが村に滞在している、と。

 その噂にはアッシュに魔法を教えていることも混じっていたに違いない。


 城で黒騎士と面会したときにサビーヌは、アッシュがフェンという旅の魔法使いから魔法を教わったと嘘をついた。

 我が子が誰にも教わらずに魔法を使えるようになった事実を隠すためだ。


 黒騎士がその嘘をすんなり信じたようには見えなかったが、やはり信じていなかったようだ。

 今になってその真偽を確かめに来たのだろう。


「親しいひとはそう呼ぶこともあるんだけどね」


 ニルフェンがそう補足したが、これはたぶん嘘だ。

 サビーヌがそんな愛称で呼ぶのを聞いたことがない。ニルフェンはとっさに話を合わせてくれたのだろう。


 黒騎士が冷たい目でニルフェンを見下ろした。


「かばいだてするとろくなことにならんぞ。たとえ老いたエルフでも容赦はせん」

「なんのことだかわたしにはわからないよ」


 横で見ているだけのアッシュが気圧されるほどの威圧感を放つ黒騎士の脅しにもニルフェンは平然としている。

 2人はどちらも視線を外さない。

 やがて。


「いつまでも隠しおおせると思うなよ。必ず尻尾をつかんでやる」


 黒騎士がちらりとこちらに視線を向けたので、アッシュはまるで自分に言われたように感じた。


「しかし。美しいと聞いて見物にきてみれば、こんな老婆とはな。期待外れだ」


 黒騎士は身をひるがえすと、馬に乗ってその場を離れた。


 どうやらこの場はなんとかおさまったらしい。

 アッシュは安堵しつつも、「老婆?」と首をひねった。


 横を見るとニルフェンがにんまりと笑顔をうかべていた。


「なんかヤバそうなやつだったから【見た目の年齢をごまかす魔法】を使っておいたんだ」

「そんな魔法もあるんですね」

「あとで教えるよ。便利だから」


 本当にニルフェンが使う魔法は多彩だ。

 そう感心したアッシュは目に力をこめて黒騎士を見やった。


「やっぱりヤバイんですね、黒騎士は」

「そうだね。すごい魔力だ。あれは強いよ」

「魔力?」

「教えたばかりなのにもうサボっているの?」


 そうだった。

 つねにひとの魔力を見るように、と教えられたばかりなのだ。

 そうすれば不意を打たれたり敵の実力を見誤ることもなくなるから、と。


 アッシュは慌てて黒騎士の後ろ姿に集中した。


 いずれは「意識しないでもつねに見ている状態を維持できるようになれ」とニルフェンに申しつけられたが、今は集中しないとムリだ。


 視界に変化が起こって、黒騎士の魔力をとらえはじめる。

 黒騎士の全身から目を疑うほどの大量の魔力が立ちのぼっていた。


「なんだ、あれ……」

「あれが威圧感の正体だ。魔法使いじゃなくても強い魔力をもった人間はいる。強い剣士は魔力を使って身体能力や技を強化する。覚えておくんだね」

「はい……」


 アッシュは手のひらにじっとりと汗をかきながら、肝に銘じた。



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