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時をあやつる魔法族に転生した。未来のAIに導かれ最強の魔法王になる  作者: 飛来甲殻類


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 逮捕された賊たちは城にひったてられていき、念入りな取り調べをうけた。

 その結果、ザスルア王国が送りこんだ偵察兵と判明した。

 偵察兵たちは旅商人に化けて周辺の村や町に潜伏し、長いあいだ諜報活動をしていたのだ。


 村娘はザスルア人ではないが、数年前から金銭と引きかえに現地連絡員となり、城の警備態勢や兵士の巡回スケジュール、そしてメドウズ卿の動向などの情報をザスルアに売り渡していたと白状した。


 以前メドウズ卿が疑いをかけたように、本当のスパイだったのである。


 ザスルアは何年ものあいだ黒騎士への恨みを晴らすチャンスを窺っていた。

 そんな折、スパイの村娘から「どうやらメドウズ卿が長期間城を空けるらしい」という情報がもたらされた。


 これは絶好のチャンス。

 かつて卑劣な策謀で部隊を皆殺しにされた意趣返しとして、お膝元の村を襲撃しようと画策したわけだ。




 偵察兵の2人が猟師の家を襲撃したとき、在宅していたのは女1人だけだった。

 すでに子どもたちは始末されたものと思いこんだ偵察兵たちは、猟師の妻に軽口のような調子でそれを告げたらしい。

 その煽り行為がサビーヌの逆鱗に触れ、連中の命運が決した。


 アッシュたちが家についたとき、庭には滅多打ちにされてかろうじて人の形をたもっているだけの赤い肉塊が2つ転がっていた。

 イメリア司祭によると、あと30分も治療が遅ければ2人とも死んでいたそうだ。


「おい、師匠ってなにものなんだよ?」


 いつの間にか呼び名をおばさんから師匠にかえたディルに問われたが、それはアッシュとしても知りたいところである。




 あの日、ティーエが反応しなかった理由も判明した。

 ティーエはアッシュが言うことをきかなかったことに腹を立てて無視したのではなかった。


『怒ったから無視した? やれやれ。マスターはわたしをなんだと思っているのですか?』

(ほら、きみって、人間臭いところがあるから、怒ってへそを曲げちゃったのかなって……)

『たしかにわたしは感情機構をも備えた超高性能AIですし、少なからずイラッとはしましたが、だからといって感情に流されて宿主の危機を見過ごすことはありえません』

(そうなんだ。僕、てっきり見捨てられたかと……)

『見捨てるなんてとんでもない。非合理的な行動でしたが、友人のために命をかける根性があったことに感心したのですよ』

(なら、どうして黙ってたの?)

『あのとき、わたしは一時的に機能が停止していたのです』

(なんで?)

『はっきりした原因はまだいえません。調査中です。ですが、マスターが魔酔状態に陥ったことが関係しているかもしれません』


 原因がわからないのは気になるものの、見捨てられたわけじゃなかった。

 そのことにアッシュは胸をなでおろした。




 この一件があってからロマノ城の守備隊は厳戒態勢をしいて国境の巡回活動を増やしたが、偵察兵が戻らなかったせいか、ザスルアの侵攻部隊はついぞやってこなかった。


 もとよりザスルアは小国。

 大国のフラゴニアと正面切って事を構えたいわけではないのだろう、というのが大方の見解だった。


 村の危機を救ったことでディルは一躍英雄としてまつりあげられることになった。


 なにしろ偵察部隊とはいえ相手はザスルアの正規兵である。

 7歳の少女が3人もの兵士とスパイを打ち倒してしまったというのだから、英雄視されるのは当然のことだ。


 村娘と偵察隊長を倒したのがアッシュではないことにしてくれ、と事実に反することをディルに頼んだのはサビーヌだ。

 子どもが魔法を使ったことが噂になると今後に悪影響を及ぼしかねないと懸念したのだ。


「アッシュのためになるんなら、オレはかまわないぜ」


 とディルの快諾を引きだしたサビーヌは、どさくさに紛れて自分が滅多打ちにした2人もディルの戦果に足してしまったのである。


 村人のほうでも敵の数さえあっていれば内訳なんてどうでもいいらしい。

 そんなわけで、ディルはザスルア兵どもを倒して村を救った英雄になった。




 サビーヌの工作とディルの協力のおかげで、アッシュが魔法を使ったことを村人には伏せておくことができた。

 しかし、現場を見た人間にまで隠しておくことは不可能だった。


 そのうちの1人がイメリア司祭である。


 イメリアは騒ぎのごたごたがおさまると山奥の家を訪れ、留学話を再燃させた。


「ご存じのように子どもにも魔力はあります。なかには大人顔負けの魔力を持つ子もいます。ですが、魔法は高等技術。どんなに素質があっても、教えられてもいないのに魔法を使えるようになることはありえないのです」


 開口一番、イメリアは断言した。


 両親が反論もせずに黙っているところを見ると、どうやらこれはこの世界では普遍的な事実のようだ。

 おおっぴらに魔法を使ったのは失敗だったかも、とアッシュは思ったが、あのときは他に手立てがなかった。

 もしやり直せるとしても同じことをするだろう。


「これは頭がよいというレベルの話ではなく、明確に天与の才能です。ちゃんとした教育機関でその才能を伸ばし導いてあげるべきなのです」

「ですが司祭様、なにも教団の学校じゃなきゃいかん理由はないんでは?」


 アドルが反論すると、イメリアは深くうなずいた。


「おっしゃるとおりなのです。フェリニアがお嫌なら魔法学校でもかまいません。僭越ですが、わたくしが責任をもって紹介状を書きます」


 意外なことにイメリアはアッシュを教団の後輩にすることにこだわっているのではなかった。

 純粋にアッシュのためを思っての提言なのだ。


「魔法は大いなる力です。力である以上、毒にも薬にもなりえます。力の使い方を学ばなければ、いずれ人を死なせるかもしれません。実際、今回の事件でもあと少しでそうなるところでした」


 アッシュはぐちゃぐちゃに砕け散った村娘の足を思いだした。

 あそこまでやるつもりはなかった。

 自分では威力を抑えたつもりだったのに。


 難しい顔をしていたサビーヌがため息をついた。


「司祭様、折り入ってお話があります」

「サビーヌさん、そんなにあらたまらないでどうかいつもどおりイメリアとお呼びください。わたくしとあなたの仲なのですから」

「じゃあイメリア。2人で話しましょう」

「なぜなのです? アッシュくんの話なのですから、本人も聞く権利があるのでは?」

「……イメリア聞いて。この子はマーシアなの」


 サビーヌが淡々と口にすると、イメリアはまず怪訝そうな顔をしたが、すぐにハッと表情を変えてそれ以上とやかく言うのをやめた。


 2人は部屋の隅にいくと、ひそひそ声で長いあいだ話しこんでいた。

 アッシュもそれとなく話を聞こうとしたのだが、アドルに止められた。


「女同士の会話に入っていってもいいことなんかないぞ。覚えとけ坊主」


 深刻そうな話が終わると、イメリアはどういうわけか留学の話を取り下げた。


 ただアッシュに真剣な眼差しをむけて、


「わたくしはいつでもアッシュくんの味方なのです。それだけは忘れないでください」


 と言い残して帰っていった。




 こうなってくるとがぜんマーシアというのがなんなのか気になってくる。

 だが母に「マーシアってなに?」と聞いても「いずれわかることよ」といつものごとくはぐらかされるだけだった。


 しかし、アッシュには心強い味方がいる。

 さっそくティーエに聞いてみた。


『フラゴニア王国の西方にマーシア領という土地があります。ですが、それ以上の情報はありません』


 ティーエがわからないのならもうどうしようもない。アッシュはそれ以上の詮索をあきらめた。



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