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時をあやつる魔法族に転生した。未来のAIに導かれ最強の魔法王になる  作者: 飛来甲殻類


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11 サッカーってどの世界にもあるんだね


 空き地につどった子どもたちは1つのボールを蹴り、夢中で追いまわし、大声をだしながら奪い合っていた。

 神殿に届いていたのはこの声だ。


「これは、サッカー?」


 ゴールらしきものはなかったけど、陣地の概念はあるらしい。

 どうやら手を使わずに敵陣の奥までボールを運んだら勝ちのようだ。


『地球の話ですが、サッカーの原型となる遊びは中世の頃から広く庶民のあいだでも行われていたという記録があります』

(そうなんだ。歴史が古いんだね)

『戦のあとでは敵の生首をみんなで蹴り飛ばして勝利を祝う習慣もあったとか』

(それは聞きたくなかったかも……)


 しばらく見物した。

 みんな土まみれになりながら楽しそうに熱中している。


 そういえば、直近に迫ったワールドカップを見る前に死んだっけ、と感傷的な気分になったとき、何人かがアッシュの存在に気づいた。


 すると、いちばん体のおおきな子どもがやってきた。

 赤い髪にバンダナを巻いている。


「見ない顔だな。何歳だ?」


 体もおおきいが声もおおきい。

 さっきから事あるごとに大声をだして場を盛り上げていた中心的な人物で、ガキ大将といった威圧感がある。


「ご、5歳」

「オレは6歳だ。敵チームの人数が足りないから入れよ」


 この対戦は現状5対6の不公平な状態で行われている。

 自分の所属チームの人数を多くするあたり、このガキ大将は勝ちたがりらしい。


 同年代の子とこういった遊びをした経験がないアッシュは二の足を踏んだ。


「僕やったことないんだけど……」

「誰だって最初はそうだろ。数合わせに期待なんかしねーよ。ほら入れ」


 お言葉に甘えて参加することにした。

 実はさっきから体がうずうずしていたのだ。


「手を使うのはなし。あと、パスは横と後ろだけな。前はダメだ。あーおまえ名前は?」

「アッシュ」

「オレはディルだ。みんな、こいつそっちのチーム入っから!」


 アッシュが空き地の土を踏むと、すぐにゲームが再開になった。


 パスを前に出してはいけない、というラグビーみたいなルールが設定されている理由はすぐにわかった。


 ゴールマウスの枠もなくキーパーもいなくて、敵陣の奥にボールを運べば勝ちというルールの性質上、前に蹴ってしまうと駆け引きが減り単純につまらないからだ。


 横や後ろの味方にパスをだすのはいいけど、得点になるのはドリブルによる持ちこみのみ。

 少ない人数でもゲームとして成立するようにと、なかなかよく考えられている。


 みんなで遊ぶことに舞い上がっていたせいでアッシュはせっかく回ってきたボールをあっさり奪われてしまった。




 その後も立て続けにヘマをしてボールを失ったが、入ったばかりだからか、それとも初対面だからか、味方から罵声がとんでくることはなかった。

 ただつまらなそうな顔をするだけだ。


 しかし、意外な人物から叱責が飛んでくる。


『なにをしているのですマスター。勝つ気はあるのですか?』

(楽しいし、べつに負けてもいいかなって……)

『楽しいから負けてもいい、ですか。クリロナが負けてヘラヘラしていたと思いますか?』


 頭をぶん殴られた気がした。


(思わない。彼は絶対にそんなことをしない)

『なら勝つのみです』


 アッシュは本気になった。

 これは僕のワールドカップだ、と。


 未来のスポーツ科学を知識として持つティーエの指導のもと、アッシュがフィジカルトレーニングを始めてからずいぶん経つ。


 なりゆき任せにのびのび育ってきた子どもとは根本的に基礎体力が違うのだ。

 あっさりボールを奪うと圧倒的な走力でぶっちぎって得点を決めた。


「なんだこいつ速すぎだろ!?」


 敵は呆気にとられているが、味方は無邪気に盛り上がり、アッシュを囲んで歓喜の輪をつくる。

 チームメイトに褒められた経験など皆無のアッシュは照れ臭くてどう反応すればいいかわからず、困惑する。


 その光景をジト目で見ていたディルがガキ大将の沽券にかかわると思ったのか、プレイの質を切り替えた。

 強烈なタックルをぶちかましてきたのだ。


「ラフプレイだ!」


 地面に倒れたアッシュが抗議の視線をむけたが、ディルは不敵な笑みで受けとめる。


「なんだよ、体ぶつけちゃだめなんて一言もいってないぞ」

「ふ、普通ダメだよ」

「いーんだよ。この遊びを考えたのオレだからな。オレがルールだ」


 どうやらこの世界でサッカーという競技を発明した人物と出会っていたらしい。

 本来なら感動してもいい場面だが、すでに腹が立っているのでそんな気分にならない。


 とはいえディルは年上で、体重差がある。

 まともにぶつかったところで弾き飛ばされてしまう。


 それにディルはなかなかの身体能力の持ち主らしく、ボールを保持した状態では走力で置き去りにできそうもない。


 2人のプレイに激しさと真剣味が加わったことで、ゲームの次元が1段階あがったことに他の子たちも気づいた。


 もはやただの遊びではない。

 この勝負にかかっているのはこの空き地の王の座。


 直接対決を邪魔しないようにとボールを回してくるので、自然にアッシュとディルの1対1のデュエルが多くなる。


 対峙してみると、ディルはラフプレイ頼みの荒いだけのプレイヤーではなかった。

 創始者だけあってボールの扱いがうまい。

 さっき初めてボールに触れたアッシュでは技術で太刀打ちできそうもない。


 勝負は一進一退でお互いに得点できない。

 一見すれば互角。

 しかし、内容は違う。


 スピードではアッシュが上。

 パワーとテクニックはディルが上。


 強みの数で負けているぶん不利だ。

 しかも相手にはいざとなったらタックルという奥の手まである。

 きっかけさえあれば均衡が一気に崩れる気配がある。


 それをディルもわかっているのか、策をしかけてきた。

 左にいくとみせかけて右にドリブルした。


 フェイントだ。

 それに引っかかってしまったアッシュはバランスを崩し、横を抜かれてしまう。


 幸い、自分もフェイントで万全の体勢ではなかったディルのドリブルがわずかに乱れたおかげで追いつくことができたが、危なかった。


 運に助けられた。

 つぎはないだろう。

 そういう予感がする。

 結果がどうなるにしても、つぎのプレイで決着がつく。


 緊張する状況。

 ただの遊びだというのにアッシュの全身に武者震いが走る。

 ふとティーエがいった。


『なかなかできる相手のようですね。こちらもそろそろ本気をだしましょう』



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