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設計図

 レールをスライドするシートに腰掛け、全身を使ってオールを漕いで後ろ方向に進み、2000メートルのコースを競い合うというスポーツだ。勿論、コースは湖や川など屋外のため、天候など自然の影響が大きく、レースが中断されることも珍しくない。そこで、屋内での練習用として『ローイングエルゴメーター』という機器が開発され、ボート競技の世界ではなくてはならないトレーニングマシンとなっている。

 設計図を見るとその造りはボートとは似てもにつかぬ形だが、スライドするシートやオールの代わりに引っ張るワイヤーなど、使用者は実際水面をオールで漕ぐような動作が体感できる仕組みになっているようだ。

「へえ、でも、私の会社は、発電機を作ってる会社ですから、スポーツトレーニング器機は専門外じゃないかなぁ」

「確かに、エルゴの有名メーカーはアメリカの方で、この設計図は、その外国のメーカーのものを参考にしているが、根本的に違う箇所がある。ここだ」

 そう言うと、大門は設計図の中の丸い部品を指差した。それは、オールの代わりに引くワイヤーに負荷をかける装置だった。

「普通は、この部分は負荷をかけるために中にフィンがついていて、ワイヤーを引くとそのフィンが回り、空気抵抗が生じて絶妙な重さ加減になるものなんだけど、この設計図では、その回転するフィンの替わりにダイナモが付いている」

「ダイナモ?」

「ああ、ダイナモ・・つまり発電機だ。実は、うちのボート部にエルゴが5台あったんだけど、古くなったので更改しようという話になってな。普通に注文しようと思っていたんだが、部員にエコクラブを掛け持ちしているヤツがいて、エルゴの回転運動を発電に使えないかと前から思っていたと話し始めたんだよ。

今、世の中では太陽光発電や風力発電などエコ発電が注目されている。ところが、大概のものは天気や環境に左右される可能性が高くいまいち安定しない。なんかいい方法はないもんかなあ・・そいつはそんなことを考えながらエルゴを漕いでいてハッと思いついたんだそうだ。このエルゴを漕ぐ力ってすごく無駄にしてるんじゃないかって。

 そうしたら、今度は科学研究会を掛け持ちのヤツがいて、構造的にそんなに難しくないと思うよとか言い出して、じゃあ設計図を作ってみようということになったんだよ。そうなれば俺もだまっちゃいられない」

 確かに工学部出身の大門にしてみれば、設計図つくりは得意技のひとつである。

「知り合いからCADソフトを調達して、ボート部・エコクラブ・科学研究会の部員みんなであーでもないこーでもないとこの設計図を作り上げた訳だ」

「どうりで玄人はだしの設計図に仕上がってますよね」

「どうだろうか、この図面を基につくれるかなぁ」

「うーん、私は技術のほうじゃないんで即答はできませんが、経費的に結構高くつくかもしれませんよ」

「お金のほうは、既存品の倍くらいまでは大丈夫だと思う。ボート部だけじゃなくエコクラブ・科学研究会の合同企画だし、校長や理事会でも結構乗り気でね。うまくいけば学校のPRにもなると考えているみたいなんだな」

 なるほど、今世の中は地球温暖化阻止に向けてすごい勢いで流れている。少子高齢化が進む中、環境に配慮した学校となればイメージアップ・生徒数アップに役立つと踏んだようだ。

 山崎の会社にとっても悪い話ではない。うまくいけば、全国のボート競技関連団体への新商品販売という新しいマーケットに参入することができるかもしれない。

「わかりました。じゃあ設計図をお借りします。社内で相談してみますので、結果についてはまた連絡します」

 そう言って山崎は設計図を携え、大門の学校を後にした。

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