少女の最期
自らの処刑を宣告されても少女は表情一つ変えず頷くだけだった。
泣くことも叫ぶこともしない少女はどこか異質であった。
処刑日が差し迫ってもなお落ち着き払っている少女を見てとある男が言った。「お前の父親は先ほど処刑された」と。
それでも少女は表情を変えない。ただ「そうですか」とだけ呟いた。
だが自分の処刑方法が毒物によるものだと聞いたときだけ少女は表情を変えた。
「他の方は首を切られていると聞きました。何故私は違うのですか?」
少女の問いかけに答えたのは二十代中頃の若い騎士だった。
「あなたとお父上は今回の事件の首謀者ではないこと、そしてこれまでの伯爵家としての功績を加味し他の者たちとは違う形での処刑となります」
その騎士は罪人である少女に対しても礼儀を尽くす人間だった。
「お父様も・・・。そうですか・・・。国王陛下のお心遣いに感謝いたします」
それからほどなくして少女は毒物を服用して死亡した。
その最期の時まで少女は泣き言も恨み言も言わなかった。
少女がこと切れる瞬間、少女が握りしめていた髪紐が床に落ちた。それを見て「あぁ・・・」と呟いたのを最後に少女は息を引き取った。
若い騎士はその髪紐を拾い、自分の懐にそっとしまった。
それを見咎める者はいなかった。