進路相談
「村の生活には慣れたかい?」
ん、寝てた? ここは居間、揺り椅子に腰掛けてる。
「見ていたのは過去の記憶。何かわかったかい?」
「物心付いた頃には既に見えてた。自分では気づかずに「祓い」を使ってた。死にかけた時に初めて「結界」が使えるようになった。あ、でも「剣」は・・・」
「それは言わずとも知っとる」
あの時のことは誰にも話してないけど、祖母は知っていた?
「こっちに来てからは何か見えたかい?」
「見えてた。影響がなかったから無視してたけど。」
「それでええ。この村は他に能力者が居ないから、もう不思議なことは起きないかと思う」
「何も起きないならそろそろ大阪へ帰ろうかな?」
「まだ早い。手を出しなさい」
私の手に掌を当てられる。軽い火傷をしていたが消えてしまう。
「これが「治癒」。お腹や頭が痛かったら手を当てるだろう? 昔の人たちは皆それで治すことが出来た。医療や薬が進化して、必要のない能力として退化してしまい、今では使えるのが能力者だけさね」
「じゃあ、これを身に付けてから?」
「もっと強力に使えるようになってからかな。催眠術も身に付くだろうし、他にも優くんが見た能力を覚える可能性もある」
「教えてくれるの?」
「この村には他に能力者は居ないんじゃよ。卒業したら隣町の高校へ進学するのが殆どだが、遠くの方へ行ってみるとええ。寄宿舎だってある」
「そこへ行けば他の能力者が?」
「わからん。そこに何があるかは優くん次第。縁じゃよ。そこで強くならないと大阪へ帰る意味がない」
*
まだ1年生の二学期。ここで祖母と進路について語るとは思っていなかった。それも目的が能力の強化。
確かに、このまま村に居ても似たような日常の繰り返し。
繰り返し? 何か引っ掛かったが、その意味は思い出せなかった。
過去に書いた外伝に登場した優はもっと強かった。
先にそういう設定を作ってしまったせいで色々とそれらに縛られております。