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第三章 ⅩⅡーⅠ

 放課後になった。アンジェリコ魔術学院の正門真正面に、校庭を挟んで壁の如く聳える四階建ての職員棟、その一階片隅に彼女、カサンドラ・シェリル=ウーノの部屋はあった。室内には彼女の執務机と、中央に十人は掛けられる大きめのテーブル。執務机右手の窓際にはソファ。壁という壁は書棚や多数の抽斗を持つ家具で埋められ、様々な書籍やファイル類、また大小様々な魔道具、魔導石等が収められている。それでも足りず執務机やテーブルの上も大半がそれらで占められていた。テーブル上には教授の上衣が乱雑に置かれ、つい先程までそれを着用し教壇に立っていた本人は、今執務机の上に突っ伏していた。授業が終わると大抵この状態となる。彼女は魔術史と詠唱魔術を担当していたが、どちらも人気がない。卒業のため労力を掛けたくないのでとりあえず履修する、といった態度の露骨な生徒も多い。そもそも魔術学院に通う者は、その大半が王侯貴族や裕福な家の出で、幼い頃から家庭教師等によりある程度の素質を見出され、教育を受けてきた者達なのだから(彼女自身もそういった者達と同類ではある)。より詳細な内容に踏み込むとはいえ歴史は大抵押さえており、詠唱魔術など古臭い技術だと見下されているのだ。彼女に言わせれば、それらは魔術的な閃きの源泉と言えるものなのだが。先達達の試行錯誤、発想や思考に思いを馳せるとき、自分が見落としていたもの、気付かなかったものを教えてくれる、そんな確信が持てた。そもそも神代に源流を持つ魔術を、現生の人類種は正統に引き継ぐ事が出来なかったのだ。矮小な存在だった人類種は、神々が去ったのち大陸各地に残された遺跡、遺構のそこかしこからかき集めた魔術の欠片を繋ぎ合わせ、欠損部分を推測して埋め、苦労して再構築したものを現代魔術と呼んでいる。彼女の考えでは、現在再構築された(それらが神代のものと同一なのか、判断する材料は乏しいが)魔術の量は、神代の少なくとも数十分の一程度に過ぎなかった。一部あるいは大部が欠損し、何の術式なのか未だ判然としない魔術も多数発見されているのだった。未発見のものがどれ程なのか、想像すら出来ない。またその存在はかなりの確度で間違いないが、術式等の情報が著しく不足している魔術も多数存在する。彼女もまた、そういったものの一つを生涯を掛けるつもりで研究していた、のだが。その進捗は捗々しくはなかった。現代魔術は、神代魔術に対し羨望と嫉妬という二律背反の感情を抱いていた。

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