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第三章 ⅩⅠーⅠ

 マリッツォは、ナーダ程ではないが大都市と言えた。ナーダ同様市壁に囲まれた面積は比較して多少狭く、人口も十四万人余り。東、西、北に門があり、東門を入ると広場があった。都市中央にも円形大広場があり、その広場中央には十段余りの階段をもつ土台と、その上に聳え立つ、塀に囲まれた立派な五聖星教会の大聖堂がある。ナーダ同様、その広場を中心として大通りが門へと伸びている。ナーダで言う北区画には市民の大半が居住し、東、南を合わせた区画には市政庁をはじめ軍の施設、宿舎や新兵の教練場、衛士隊詰所等が置かれ、殊に教練場の広さは目立った。西区画はアンジェリコ魔術学院をはじめ魔術関連の研究施設、魔道具を扱う店舗等が犇めいている。元来ここは、王国東方防衛の要であるナーダの後詰的役割を果してきた(その点は今でも変わる事はない)。志願や徴兵等により集められた新兵の訓練、また魔術師の養成を主目的とし、それは現在も大差がない。ただ、時の流れと共にそういった緊迫感は薄れ、『学術都市』と称される様になっている。昼下がり、晴れ渡る空の下東門を潜り広場を抜け、今メティス商会隊商の馬車列は中央大広場へと進んでいた。

「へぇ、ナーダとはまた趣が違いますねぇ」

荷馬車の幌から頭を突き出し、フェスは周囲を見回した。一見したところ、ナーダに比べ落ち着いた雰囲気がある。比較的高層の建物が少なめで、見通しが利き易いのもそういった印象に寄与しているかもしれない。今、左手を小隊程度の規模の歩兵部隊が整然と二列で行進していた。鎖帷子の上に、レガースの様な金属製の防具を両腕、両脚に装着し、胴体を護る金属鎧はライフジャケットの様な形状だった。兜は頭部のみで、まだ幼さの残る横顔が見えた。そういった男子達が、長剣を佩き長槍を抱える様に持って行進しているのだ。新兵教練の一風景なのだろう。先頭を行く兵士の一人が、槍に旗を掲げている。フェスは軍隊の編成等には疎かったが、連隊規模の旗か、と推察した。LMは沈黙を守った。

「珍しいですか?」

馭者台に着いた年下の男性職員が話し掛けてきた。その職員は、フェスの講習を最初から受けていた一人だった。

「ナーダでは見掛けなかった様な」

「新兵訓練の一環ですね。このまままっすぐ行くと西門のところに左へ折れる通りがあって。市壁沿いにぐるりと回って東門へ戻るんですよ。これを何周もするそうですね。ナーダでは交通量等もあって、東区画内とか市壁外でやっていますね」

なるほど、一大商業都市であるナーダでは交通の邪魔になってしまうか、とフェスは得心がいった。そう話している間に、隊商は中央大広場に差し掛かった。左手には広い車寄せを持つ立派な建物が見えてくる。

「あれがここの政庁舎です。万能職ギルドに行かれるなら、あの横道を入ってすぐの裏手です」

職員は左手で指さし教えてくれた。

「そうですか、有難う」

フェスが小さく頭を下げると。

「いえいえ!師匠にこの程度。お安い御用ですよ!」

言って職員は嬉しげな笑顔を見せた。と、前の馬車が停止する。手綱を操り、職員も停止させる。歩兵部隊はその横を通過していった。先頭を行く教官の掛け声で速度が上がり、見る間に遠ざかって行った。

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