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第三章 Ⅳ

 食堂の朝食メニューが終わる頃、ジョセフのパーティーは商品を積んだ数台の荷馬車に分乗してマリッツォの門を潜った。ナーダへの復路、その商品の中には幾つもの高価な魔道具が含まれていた。

「今夜も休憩小屋泊まりか。ま、俺達には関係ねぇが」

頭を掻きながらジョセフは呟いた。マリッツォからナーダまでは馬車で一日半近く掛かる。つまり今夜はどこかで宿泊せねばならない。宿場町の様なものは整備されておらず、丁度良い辺りに村等もない。そこである程度の間隔で休憩小屋が設置されている。川辺や井戸の傍ら等に設置され、馬等を休ませる事を主眼とし、小屋内部には大きなテーブルと椅子数脚、壁際に作り付けのベンチ、というのが定番だった。場合によっては飼葉や保存食が残されている場合もあった。しかし護衛の彼らは荷馬車の荷台で食事や仮眠をとり、また夜通し周辺を警戒するのだ。当然、来た時にも同じ目に遭っていた。

「一晩の辛抱っしょ?それとも老体には堪えるっすかね?」

まだ年若いサブリーダーが、荷台から周辺を窺いつつ訊ねる。

「このっ、生意気になりやがって!」

笑顔を作りつつ、ジョセフはその後頭部を軽く叩いた。軽く、のつもりだったろうが、ベチッ、と良い音がする。

「痛っ!乱暴はやめて下さいよっ!」

叩かれた辺りを右手で摩りつつサブリーダーも笑顔で答え、ジョセフの横に座り直した。

「帰りの積み荷は殆ど魔道具だよな?」

取扱注意、な物等もあるため、護衛にも簡単な情報は降りてくる。

「そうっすね。まぁ、『学術都市』からの帰りっすし」

マリッツォはアンジェリコ魔術学院のほか、魔術関係の研究施設、魔道具の工房等も多数存在する。そういった所には多く、学院出身者の姿があった。ナーダにも魔術関係の研究機関等は複数存在するが、やはり商業及び軍事の重要拠点としての色合いが濃い。魔道具は民生用の扱い易い、言い換えれば制限の多い比較的安価な物から、軍事用の主に攻撃、破壊を目的とした物まで幅広い。学院では王族や貴族、商人等から依頼を受け特注品(機密性の高い物も多い)、試作品等を製作する事もあった。機密性の高い物に関しては、王国軍や貴族の私兵団等が輸送に携わるのが普通なので、ジョセフ達が関わる様な事はまずないだろうが。その様に、彼らにとっては珍しい学院からの荷物がある事を、そう言えば、とジョセフは思い出した。

「なぁ、そういえばアンジェリコ魔術学院からの荷物があったよなぁ、何だったかな?」

「確か、自動昇降機を更新する為の魔導石とかじゃなかったでしたっけ?」

欠伸を噛み殺しつつ、サブリーダーが答える。

「とすると、イエーナ設備宛てか?メティス商会も更新を受けるのかねぇ?」

「そうじゃないんすか?いいなぁ、金のあるところは。うちのとこにも付けてくんないっすかねぇ」

「てめぇは三階建ての貸し部屋住まいだろうが、いるか!」

再び大きな音を立てジョセフが今度は頭頂部を叩く。

「痛ってぇ!ポンポン叩かないで下さいよ!頭が悪くなったらどうすんすかっ!?」

「こうやって刺激を与えりゃ、むしろ良くなるだろうよ」

ジョセフがニヤけながら言うと。

「そんな訳ありますかって!」

二人は笑い声をあげた。そうしている間にも、隊商は快調にナーダへの道を進んで行くのだった。


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