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第三章 ⅡーⅡ

 昇降機の扉が開くと、フロア隅のささやかな空間に降り立つ。左手と、右隣の階段前方に通路が伸びており、職員は左手の通路を進んで行く。幾つかの扉の前を過ぎ、窓から差し込む朝の光に照らされながら、一際大きな扉の前で立ち止まった。職員は数度、重厚そうな扉をノックした。

「ウラルクさんをお連れしました」

そう告げると少しの間があり、「入って」と短い返答があった。「失礼します」と、職員は扉を引いて開け、フェスに入室を促した。足を踏み入れると、背後で扉が閉じられる。思わず室内を見回す。奥行き五メートル、幅は六メートルほど。中央には応接セットがあり、三方の壁際にはフォルダや書籍が収められた棚が並ぶ。正面とその右手には事務机が置かれ、右手奥には隣室への扉が見えた。次に彼の注意を惹いたのは、各々の机に着いた二人の女性だった。正面の人物は、自分より二十以上は年配に見えた。フローラの様な浅黒い肌をしており、天然パーマ気味の黒髪を短く刈り込み眼光は鋭い。右手の机に着いているのは彼と同年代だろう。長いストレートの金髪を後頭部で纏めており、白いシャツに青いジャケットが目立つ。胸には五聖星教会のシンボルを下げ、優しげな微笑を浮かべている。教会の聖職者だろうか?ここにいるのは、やはりギルドの運営の為だろうか、などと考える。と、不意に正面から笑い声が上がった。そちらへ視線を向けると。

「はははは。見惚れるのも判るけどね。ちょっと、そこに掛けてくれないかね」

愉快そうに笑いながら、浅黒い肌の女性は応接セットを指さしていた。右手の女性はと言えば、頬を心なしか赤らめ、伏し目がちに隣の女性へと恨めしげな視線を投げ掛けた。

「では、失礼します」

一礼し、手近なスツールに腰かける。二人はほぼ同時に動き出し、三十秒と掛からずテーブルを挟んでフェスと相対する。

「さて。君はフェスティノー・エル・ウラルクで間違いないね?私はカルナ・マカロバ。ここの支店長を任されている。こっちはエリザベータ・クリレ。五聖星教会の助祭で、私の相談役、だ」

相談役、のところで意味ありげな笑みを口の端に浮かべた。

「そうですか。ところで、失礼かもしれませんが、質問を良いですか?」

「ん、何だい?構わないよ」

「そうですか。私はここから遠く離れた場所の出身でして。参考の為にお伺いしたいのですが。貴女はもしかして、ガリル帝国出身ですか?」

瞬間、空気が完全に変わった、春から真冬へ。

「ほう?何で、そう思うんだい?」

凄まじい目力と共に凄味を利かせた声で、カルナが訊ねる。並の人間なら凍り付いているだろうが。

「いえ。貴女の様な肌の色の女性を知っていたもので。気を悪くしたなら誤ります」

ペコリ、と頭を下げる。しかし、カルナは相好を崩し大笑いした。

「はははは。こちらこそビビらせちまったかね、悪かったよ。確かに、私は帝国の出身だよ。この近辺じゃ珍しいかね。あちらでは結構いるんだけれど。まぁ、『東征の民』の末裔だね」

「『東征の民』、ですか?」

訊ね返す。LMは現れなかった。

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