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第三章 ⅡーⅠ

 衛士隊本部を後にしたフェスは、宿へは戻らず万能職ギルドに向かった。依頼を受けると同時に、大金を預ける為だった。万能職は保管料を支払う事でギルドに預ける事が出来た(運用等はしないが)。昨日素材を売却した代金も預けてあった。今回入手した賞金は結構な金額なのだ、少なくとも彼にとっては。マリッツォにあるアンジェリコ魔術学院で魔術を行使する術を入手する、それが彼の当面の活動方針となっていた。どれ程か、とにかくマリッツォに滞在し、ベルチェが使用していた様な魔道具が入手出来たら。どうやら攻撃用のああいった魔道具というのはなかなか市中に出回らず、入手は困難な様子だった(当然といえば当然か。高火力の銃器を容易に入手可能な国とは違うのだろう)。魔術師が自分や信頼する者の為に作成する以外は、魔術師協会により規制されているらしい(魔術師協会とは、大雑把に言って現代の魔術師、その大多数が登録している業界団体的組織なのだ)。魔術の習得が困難なら、最低でも一つくらいは攻撃、あるいは防御に役立つ様な魔道具は入手したい。ベルチェの行使する様な攻撃用の魔術から身を護る為に必須の魔術を。最低限、危地を脱する事に成功出来れば充分有意義だ。そんな事を考えながら、彼はギルドに到着した。正面玄関を入り、整理番号を取ろうとして受付カウンターから声を掛けられた。

「ウラルクさん!」

顔を上げれば、登録以来色々とお世話になっている職員、サマンサが近付いて来るのが見えた。整理番号を取り上げかけていた彼に。

「あ、整理番号は結構です。実は、支店長が話したい事がある様ですので」

小走りに近付いて来る。フェスは木札を戻した。

「私に、ですか?昨日の事でですかね?」

訊ねるフェスに曖昧な笑みを返しつつ。

「とにかく、付いて来て下さい」

言って、元来た方向へと歩き出す。フェスも、後に続かない訳にはいかなかった。

 カウンターを抜け扉を潜る。初めて事務室内に足を踏み入れる。小学校の教室程はある空間に、整然と並ぶ事務机に着いた男女十数人が書き物をしていたり、書類をチェックしたりしており、奥に置かれた一ランク高級そうな机に着いた女性もペンを走らせている所へ、席を立った男性が近付いて行った。他に壁を埋め尽くす様な棚や引き出しからフォルダを取り出している者等、静かに、しかし効率よくギルドは活動している様だった。そんな彼らの視線が一瞬、自分に集中するのをフェスは感じた。

「こちらです」

部屋の右側奥には階段と、メティス商会の様な自動昇降機が設置されていた。そういえば、エリーナが五階以上の建物では昇降機の設置が義務付けられていると言っていたな、などと思い出す。職員が扉を開けてくれているのに一礼して乗り込む。扉が閉じると、彼女は五階にダイヤルを合わせた。

「あのー、支店長さんて、ここの責任者、って事ですかね?」

上昇を始めた籠の中で、恐る恐るとフェスが訊ねる。

「はい。ナーダの万能職ギルド職員全員の上司ですね」

前を向いたまま、職員は答えた。

「私は、まだ新人の一万能職なんですが、どんな用件なのでしょうかね?」

昨日の事、と言って彼は真っ先にグレーター・グリズリーの一件を思い浮かべたが、もう一つあったのだ。そう、別のパーティーに絡まれた一件が。それでまさか関係者が叱責されるのだろうか?あれは一方的に絡まれたので、しかも穏便に済ませた筈だった、少なくともフェスの中では。それでもまだ何かがあるのだろうか?不意に、職員が振り返った。

「全ては支店長が話すでしょう。まぁ、決して悪い事ではないと思いますよ」

微笑みを一つ残し、また前方に向き直った職員だった。 


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