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第二章 ⅩⅣーⅢ

 エネミーネの動きを止めさせたのはロレンツだった。

「やめておけ、後悔するぞ」

その、異様に凄味の利いた声が、まるで見えない腕でエネミーネを羽交い絞めにしたかの様だった。ロレンツは傍らの剣を取りつつ立ち上がると、フェスの傍らに歩み寄った。

「てめぇまでやる気か!?」

余計に声を張り上げるエネミーネに、しかしロレンツは静かに首を振った。

「いいや。ところで、今日ギルドには寄ったか?」

「?ここに来る前に寄ったが、それがどうした!?」

「だったら、ギルドが騒々しいのに気付かなかったか?」

「ああ?二頭目のグレーター・グリズリーが討伐されたらしいな……まさか、お前が!?」

ロレンツは再び首を振った。

「いいや。実を言えば、このウラルク君だ。我々の役割は、まぁ精々補助的だった。ともかく。このウラルク君はそれをこの剣で、一撃で斬り伏せた」

自分の剣を誇らしげに掲げてみせる。

「正しく剛剣」

フェスの背を見詰めるベルチェが、呟く様に付け加える。

「判るか?あの滑る毛を、丈夫な皮膚を、分厚い皮下脂肪と筋肉を、そして固い肋骨を断ち切り、心臓を斬り裂いたんだ。この私の、ただの片手半剣で、だ。あんな手際は、私には無理だ。相手がお前なら、私のこの剣で、鎧ごと真っ二つに出来るだろう」

「で、でまかせだ!」

鍛錬はそれなりに積んでいそうではあるが、エネミーネにはとてもフェスをそんな豪傑とは思えない。どことなく幼げな容貌の優男でしかないのだ。

「嘘だと思うなら、明日の朝早く、ギルドに顔を出せば良い。幸運なら処分前の魔獣を確認出来るだろう。私の言葉に嘘偽りのない事は一目で判る」

正確には、禍玉まがたまや爪、牙等採取時の傷もあるが。

「もしなんでしたら、貴方で実演しましょうか?確実に死者が出る事になりますが。それとも」

軽口の様に言って、フェスは入口の方へ視線を走らせた。カルネジーナは腕を組んだまま冷やかな視線を投げかけて来ている。カラミティーニはと言えば、おどおどと事の成り行きを見守っていた。そんなフェスはあくまで落ち着き払っていた。虚勢を張っている等の様子は微塵も窺えない。全ては話が事実だからこその自信の表れと、エネミーネは判断せざるを得なかった。もし先に抜剣すれば、正当防衛によって相手も応じるだろう。たとえこの態度が演技だったとしても、傍らにはロレンツがいるのだ。彼の実力は理解していた。何にせよ、ただでは済まないとエネミーネは判断した。抜剣の体勢を解く。

「……ちっ。河岸を変えるぞ!」

振り返りざま怒鳴る。大きな足音を残すエネミーネを先頭に、三人は酒場を出て行った。

「……」

外へ出る前にチラリ、カラミティーニは振り向くと小さく頭を下げた。直ぐに向き直る。あのパーティーに酷く場違いな人物だな、と、フェスは不思議そうにその背中を見送った。

「気になるかな?彼はカラミティーニ・ヴォティッチオというんだが、少々酒癖が悪くてね。それさえなければまともな斥候なんだがねぇ」

溜息混じりにロレンツ。なるほど酒の席でやらかして、入れてくれるパーティーが他にないのか、とフェスは理解した。そんなフェスの肩を軽く叩くと、ロレンツは踵を返した。

「さて。今ここに居合わせた皆さん、騒々しくしてしまった。迷惑料として一杯ずつエールを振る舞いたいが、どうだろうか?」

すっかり静まり返っていた酒場内が、たちまち割れんばかりの拍手で満たされたのだった。


随分と長くなってしまった第二章は、これで終わりです。引き続きお楽しみ下さい。

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