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第二章 ⅩⅣーⅠ

 ゴゥ、と、強い風が居酒屋の外で鳴った。その音が、扉の開かれる音と共に大きくなる。

「ようよう、随分と賑やかじゃあねぇか?」

吹き抜けた風に続く様に、男性の大声が聞こえてきた。それに、拍手は一斉に鳴りやんだ。ロレンツら『黄の猟犬団』三人の表情が険しくなる。

「これはこれは、『黒の毒手』一行ではないか。森を警戒する依頼では見掛けなかった様だが?」

ロレンツが視線を向けた先には、三人の男女が立っていた。先頭に立つ男性はフェリッポもかくや、とばかりの体格をし、金属鎧で全身を覆っている。胸甲の真ん中には、どくろを縦に割く三本の爪痕の様なマークが描かれている。奇妙なのは、晒された頭部だった。眼光鋭く、居合わせる者達を嘲弄する様な表情で居酒屋内を睥睨している、その角ばった両の頬には手の刺青が。まるで背後から抱き着く様な構図で、腕がうなじまで伸びている。腰には長剣、背中には両手剣の長い柄が見える。彼、エネミーネ・オクタンは鼻を鳴らした。

「ふん。あんな金にならねぇ依頼を受ける奴なんざ馬鹿さ!」

「そうそう。銀ランクには、それに相応しい依頼ってものがあるのよ?」

その後方にいた女性が進みで、エネミーネに寄り掛かる。とにかく派手な印象だった。黒い鍔広帽子にマント。しかし腰にあてた両腕によって覗く、血の様に赤いチャイナ服状の、ボリュームあるボディラインの出る服装。短めの袖や裾からは、二頭の蛇が絡み合う様な刺青が伸びている。名をカルネジーナ・メルケンという。三人目は、エネミーネの陰から居酒屋内を窺う様にしている男性。隠れる様に、という所で身体はエネミーネより一回り小さい。皮鎧の上に弓を斜めに掛けている。一目で斥候役と判る。その姿を見掛け、ロレンツが口を開いた。

「カラミティーニ。君はまだそのパーティーにいるのかい?」

「……」

斥候、カラミティーニ・ボティッチオは、目を合わせない様に小さく頭を下げた。

「おいおい、人のパーティーにケチ付けようってのか?どうしてもこいつが欲しい、ってんなら、何ならベルチェと交換でも構わねぇぜ?」

言って野卑な笑みを浮かべるエネミーネに、少し怒った様にカルネジーナが肘鉄をくれる。もちろん金属鎧の上からではノーダメージだったが。

「御免被る。死んでも嫌」

すげなくベルチェが答える。

「済まないが、斥候役ならたった今決まったよ。そもそも編成上、魔術師を失う訳にはいかないね」

冷静にロレンツ。睨みつける様に、カルネジーナが口を開いた。

「ふん。そんな、魔道具なしじゃ何も出来ない役立たず、いらないでしょ?貴方達だって、もう少しましなのを見つけたらどう?」

その一言で、ロレンツの表情が一変する。今にも斬り掛からんばかりの怒気を放つ。

「おやおや怖い」

茶化す様な調子で言いつつエネミーネの背後に隠れた。

「仲間の中傷はやめて貰おうか……ところで、今『貸し作り』をしていたんだが、君達も乗るかい?」

辛うじて笑顔を作り、不意にロレンツは話題を変えた。エネミーネは怪訝げな表情をした。


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