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第二章 ⅩⅢーⅡ

 フェスは、頬を掻きながら言葉を紡いだ。

「それはまぁ……しかし、あの大物が洞窟内に潜んでいたのを誰も気付かなかった、というのは、偶然とは恐ろしいものですよね」

話題を変えに行く。グレーター・グリズリーが洞窟内に潜んでいただろう事は、帰途話題に上がっていた。ロレンツは頷いた。

「そうだね。ダンジョン内の魔獣は、同類であろうと外からの侵入者には攻撃的らしい。放置すれば生き辛くなるだろう事は判っているんだろうね。しかしあの大型魔獣は、短時間で先住者達を黙らせてしまったんだろう。ゴブリン達は、あんな狭い通路に追いやられてしまった。あれじゃないと判ったから襲って来たのかな?」

「そうかも知れません。とはいえ、それがあったからこそあの通路に気付けた訳で、怪我の功名、というものでしょうか」

「その、洞窟では王様気分の魔獣も、人には一撃で斬り伏せられてしまった」

酒が回って来たのか、ベルチェのフェスに向ける視線が熱を帯びて来た様だ。

「良い場面見逃しちまったよなー」

「私もだよ」

「同じく」

フェリッポ、ロレンツ、パミールがぼやく。パミールに至っては、大した怪我でなかったとはいえ体当たりを受けた上に気絶していたのだ。何ともフェスにはこそばゆい。ただ自分の身を護る為と、剣術の腕試しのつもりだったのだから。

「あれは、先にショーン=コールさんが戦って、あの魔獣の癖が判ったからこそで。そもそも、一頭目を斃したカタリナさんも同じなのでは?」

一突きで一頭目に致命傷を負わせたのだ、確かに同等の称賛を受けて然るべきだろう。

「あれは依頼だったからね。しかし君は……あの時点で、君の仕事は終了していたんだ、逃走する、という選択肢もあったと思うけれど?」

ロレンツはじめ、四人は真摯な目でフェスを見詰めてきた。フェスも表情を引き締める。

「それはそうです。しかし」

少し間を置き、彼はあの時考えていた事を正直に話した。それを静かに聞いた後。

「……なるほど。未だ登録して間もない銅ランクの万能職が、そこまで冷静に状況を分析出来ていたとはね。普通だったら、恐怖に駆られて一目散に逃走していてもおかしくない所だが。しかし、あれを斃す自信もなしに、結果斃せてしまったのだから、一体どういう訓練を積んで来たんだい?」

自分の過去については、あまり話したくなかった。既に過去を捏造しているのだ、どこで襤褸が出るか判らない。

「いやぁ、まぁ。なかなかに、厳しい環境だったもので」

この程度に留めておくのが適当か、と思う。

「そうか。でもま、あんた正直だねぇ。むしろあの場で逃げ出してくれてた方が、俺達には好都合だったかも知れないよな?こう言っちゃなんだが、あんたが命を落としてたとしても、それはあんたの自己責任、ってもんだ」

フェリッポの言葉にロレンツも頷き。

「魔獣を引き連れて結果命を落としたとしても、こちらは不可抗力という事でお咎めはないだろう。世知辛い話だが」

「その時には、遺体の回収ぐらいはするだろうさ。まぁ、かなり酷い事にはなってるだろうけどな」

今だからこそ、気楽そうにフェリッポ。最悪辛うじて人型を留めた肉塊と化していたかもしれないのだ。

「そうならずに済みましたよ。ところで、ギルドは大変でしょうね」

「そうだね。今日は徹夜作業になるかな」

フェスの言葉に頷きつつロレンツ。つい先程の光景が思い返された。



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