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第二章 ⅩⅢーⅠ

 フェス達がギルドにやって来た時には、日はすっかり落ちていた。時間が時間なのでまずは依頼対象の納品を行い、ダンジョンの変貌と二頭目のグレーター・グリズリー討伐に関しては後日詳細をロレンツ達が報告する、という事になっていた(素材の換金に関しては、その前に済ませていた)。そうして、今日の仕事の成功と、仲間の敵討ちの成功(正確ではないが、その原因を究明出来たのだから同然、という事で)を祝って西区画の居酒屋に場所を移し。

「さて、今ここに居合わせた万能職諸君!今日、我ら『黄の猟犬団』は臨時収入を得ていささか懐が温かい。そこでだ、今酒杯を傾けている諸君らに、エール一杯を奢る栄誉を賜りたいと思うが、どうだろうか!?」

ジョッキ片手に立ち上がり、朗々と口上を述べるロレンツ。途端、居酒屋のあちこちから頭上で打ち鳴らされる拍手が沸き起こった。すぐさまクロエ達従業員が、拍手の起こったテーブルにジョッキを配り始める。それはよくある光景なのだ。一通り終わると。

「それでは。今日も一日、お疲れ様!」

ロレンツの音頭で、ジョッキが高々と掲げられた。

「こんな習慣があるのですね」

店主に自らの懐から奢り分の勘定を支払い着席したロレンツに、フェスが興味深げに言った。

「『貸し作り』の事かい?この仕事では、こういった、ちょっとした貸し借りを作っておくのは、結構重要なんだよ」

余裕の笑顔でロレンツは説明した。

「そうそう。俺達にもこの手の借りがあったりする。相手にもよるが、素直に受けとくのもまた良し、さ!」

ジョッキを傾けていたフェリッポが、言いつつそれを掲げて見せた。幾つかのテーブルから、同様の反応が返って来た。

「例えばの話なんだが。君が単独行動に高い誇りを持っていたとしよう。だからどこのパーティーに誘われても受けない。さてある日、非常に実入りの良さそうな依頼で誘われたとして、受けたいが誇りが許さない、といった時にこういう借りがあれば、それを口実に一旦誇りは脇に置いておけるかもしれない、だろう?」

「誘う方も、その実力が必要だから声を掛ける訳さ。そりゃ命が掛かってるんだ、人選には慎重になるよな?そういう時の為の『貸し作り』でもある」

「そういう点では、今回は大成功だった。正確ではないかも、でも仲間の敵討ちも出来た。もうここを離れたと思われたグレーター・グリズリーも討伐出来た」

主に自分の方に視線を向けてくる三人に対し、フェスは照れた様に頭を掻いた。

「まぁ、全ては成り行きですから。ルーチィさんが先頭に立ってくれていたお陰で、余裕をもって洞窟内を探索出来ていただけで」

引き合いに出されたパミールは、降参、とでも言いたげに両手を揚げ溜息をついた。

「少なくとも、私にはあそこまで手早くゴブリンの処理は出来なかったと思います。背後はがら空きだった訳で、あれは大きかったでしょうね」

「そう。自分の身だけでなく、全員を護ったのも同然」

頷きつつベルチェも同意する。彼女からしてみれば、直接背中を守って貰ったも同然なのだ。一同からの視線に、どうにもフェスはむず痒さを感じていた。



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