第二章 ⅩⅠーⅥ
自分が地図にない横道を発見出来た理由について、フェスはLMに訊ねてみた。
『回答。固有技能が有効となるのは、地図に示された全域に存在する、道の定義に合致する全空間に対してです。ただし、本技能には解像度の概念があり、それによる制約を受けます』
『つまり、隠し通路の様な物も判ってしまうと?』
『肯定。その通りです』
『なるほど。なかなか剣呑ですね』
もし暗殺者がこの技能を持っていれば、そのターゲットは逃げられないかも知れないな、と思った。
『回答、続き。解像度は地図の示す全域に対して、情報を取得可能な単位に課される制限の事です。例えば一国の地図に示された都市の、市街地の情報取得は制限されます』
『なるほど。大は小を兼ねる、という訳にはいかないのですね?』
『肯定。その通りです』
その様な問答を胸中で繰り広げながら、フェスは地図上に指を滑らせ隠された新たな通路、既知の通路同士を繋ぐ横道を描いた。その中には、結構な数のゴブリンが隠れていた。それを示された『黄の猟犬団』達は、困惑しながらもフェス達をその場に誘った。
「この辺、の筈だね」
そこはどう見ても只の土の壁だった。魔術の光に照らし出されたそこには、隣接する通路とを結ぶ横道の入口がある筈だったが。
「はい。奥の方で、何十体もの魔獣が固まって警戒しています」
そう言うフェスを、もはや疑う者はなかった。彼以外の四人で、手探りに入口を探し始める。と、間もなく。
「!ここです!」
地面近くを探っていたパミールが声を上げた。右手で叩くと、コンコン、と乾いた音がした。屈んだベルチェが、魔術の光でそこを照らす。そこは土の壁にしか見えなかった。光源を移動させると、自然に影も変化する。彼女は、右手をそこに突き入れた。暫く探り、何かを引き抜こうとする。かなり手強いのが判ると、呼吸を整え力を入れ直す。華奢とさえ思われた右腕に血管が浮き、筋肉が瞬時に盛り上がった。と、間もなく勢いよく引き抜かれる。その手には、硬式野球ボール大の赤い宝珠があった。と、同時に土の壁が一部、消える。姿を現したのは、高さ五十センチ、幅四十センチ程の木製の扉だった。小さなノブがあり、ほぼ中央には宝珠大の穴が開いている。これこそ隠された横道の出入口なのだろうと、みな容易に想像が出来た。




