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第二章 Ⅸ

 早朝、フェスは東門手前にいた。この時間に間に合わせるため、いつもより更に早めに起床し朝のルーティンは短縮せざるを得なかった(それでも一セット減らしただけだが)。山脈の向こうから日が昇るため未だ暗く、門前の衛所などは煌々とランプが灯されている。周囲を見回せば武装した男女や馬車等がかなり集まって来ている。山脈を超えて行く人々もいるのだろう、とフェスはぼんやりと考えた。谷間を縫う道を四日程で抜けると、隣国があるらしい。地図がないので見た事はないが。山脈には山賊(隠棲民)がいて、護衛は雇うが、滅多にトラブルにはならない、とされていた。

「やぁ、待たせたかな?」

呼び掛ける声に振り返ると、ロレンツが手を上げていた。近付いてくる『黄の猟犬団』に、フェスも右手を上げ返す。実はもう一人、パーティーには臨時雇いの人物がいた。結構大きな荷物を背負っている。グレーター・グリズリー討伐のさい同行していた斥候スカウトだ、とフェスは気付いた。彼がいるからか、他の三人は腰回りの物しか荷物がない。

「少し早かっただけです。そちらの方は?」

確かに彼は、その斥候を『地図追跡』で目にしたのだった。ギルドでの席にいなかった理由は判らなかったが。

「ああ。さぁ、自己紹介を」

ロレンツに促され、斥候は前に出た。どこか挑む様な目つきでフェスを見詰めてくる。

「…パミール・ルーチィです」

素っ気なく言うと下がってしまう。どうやらフェスに対しライバル心を燃やしている様だった。恐らくは、パーティーが今回の依頼で二人を競争させ、雇う方を決めようと思っている、とでも考えていると、フェスは推察した。

「まぁ、今回は二人とも頼むよ」

苦笑しつつロレンツ。

「はい。今回だけではありますが、宜しくお願いします」

パミールには視線をやらずニコやかにフェスはロレンツに対応した。彼の言葉を聞き、パミールは勘違いを悟ったかバツが悪そうな表情になった。つまり、彼の推察は正しかったのだ。

「開門!」

野太い声が掛かり,衛士達により大門が重々しく開かれる。その隙間から、未だ頼りなげな朝の光が差し込んでくる。それを待ち侘びていた人々、馬車等の動きが俄かに活気づく。

「さて、それでは我々も並ぶか」

ロレンツを先頭に、一行は衛所へと伸びる列の方へ動き出したのだった。

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