第二章 ⅦーⅣ
真剣な表情になり身を乗り出したフェスを改めて見据え、ロレンツは話を始めた。
「実は、君に声を掛けたのは、君の固有技能の力を借りたいからなんだ。『地図追跡』と言うそうだね?それでダンジョンに潜る手助けをして欲しい。斥候役が不足していてね」
フェスの事に関してはジョセフから聞いていた。その固有技能が元で隊商に助太刀に入った、という事も。そんな都合の良い固有技能が存在するのかと、三人とも半信半疑だった、先程までは。危険な場所に足を踏み入れるならば、三人は常に周辺の警戒を怠らないのは当然だったが、間近で自分達を目撃していた存在なぞなかった、と自信をもって断言出来た。しかし、あの場面についてあれ程までの詳細な描出が可能なのは、何らかの技能で遠くからでも眺めていた、としか考え様がないのだ。たとえギルドへの報告内容を知りうる機会があったとして、戦法まで含まれてはいないのだから。
「私に、ですか?ダンジョンは未経験ですが、大丈夫ですかね?」
少し不安げに訊ねると。
「それだったら、私達と一緒で良かった、と思える様な初経験を約束しよう。ところで、君の技能は罠など判るかな?」
「罠、ですか?どの様な?」
魔獣が罠など仕掛けるのだろうか、とフェスは訝しんだ。講習では、魔獣の中には知性と呼べるものを持つ個体も存在する、という事だったが、そんな個体がこの周辺のダンジョンを跋扈しているのだろうか?ロレンツは少し考えてから、口を開いた。
「…そうだね。私達が潜ろうとしているところなら、例えば落とし穴や釣り天井の類かな?落とし穴と言っても腰くらいまでの深さで、ただ毒を塗った木の杭等が仕込んである。仕込んでいなければ、近くに隠れ場所があって一斉に襲って来る、とかね。釣り天井なども、同じ様な杭が落ちてくる、といったところだね」
話を聞きながら、自分に可能な事を想像してみる。釣り天井ならば、露わになっていれば見る事は出来るだろうか?『暗視』が有効であるならば可能だろう。しかし。罠ならば何らかのカモフラージュが施してある可能性もある。何しろ初体験なのだ、それを見抜ける自信はない。落とし穴にしてもそうだ。この話を受けるにしても、その点は明白にしておかなければ。それで断られても仕方がない。彼は腹を括った。




