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第二章 ⅦーⅢ

 ギルドに戻ると、一行はテーブル一つを占めて着席した。未だ、フェスの熱い思いは冷めていなかった。

「もし、あの一撃で一頭目を仕留め損ねていたら、最悪貴方はあの爪で切り裂かれていたかも知れない訳ですが」

「ちょっと待ってくれないかな?君は、私達が何者か知っている、という事で良いのだよね?」

ロレンツにそう問い掛けられて、フェスの熱暴走した頭は幾分、冷えた。テレビの向こうの人物を知人か何かの様に錯覚する、そういうイタい状況に陥っていたと気付いたのだ。しかもテレビなら名前くらいは表示されるだろうが、自分はそれすら知らない。頬が朱に染まってゆく。

「いえ。知りもしないのに何か、馴れ馴れしくしてしまいすいませんでした!」

三人に向かい頭を下げる。ロレンツの面に、温かみのある笑みが浮かんだ。

「私達の名前は知らない、で良いのかな?なら自己紹介しよう。私はロレンツ・カタリノ。剣士でこのパーティー『黄の猟犬団』のリーダーをしている。ランクは銀だ」

自分達の事を知らないのになぜ、ああも本当の事を言い当てたのか?その疑問の答えをジョセフが予め教えてくれていたのだと、赤髭の大男に感謝しながら自己紹介する。

「私はベルチェ・ショーン=コール。鉄ランクの魔術使い(マジックユーザー)」

「俺はフェリッポ・リッポ。重戦士でランクは鉄だ」

自己紹介が済む毎に、フェスは軽く頷いた。彼は、ベルチェの頭部を飾る二本の簪が気になった。これはファッションなのか?それとも魔術使い(マジックユーザー)というからには、魔術に関係しているのか?自然と視線が行く。

「何かある?」

冷淡な口調のベルチェの問いに、思わずフェスは質問返しをしてしまっていた。

「その、貴女の頭部を飾るそれは、魔術関係の?」

「これらは魔道具。術式を封入した魔導石が幾つも嵌めてあって、容易に魔術を行使出来る」

ベルチェは簪に右手をやりながら、変わらず冷淡だが丁寧に説明してくれた。

「なるほど」

「ちょっと済まないが、こちらの話をして良いかな?」

ロレンツが苦笑しつつ割って入った。

「あ、はい」

フェスは居住まいを正した。浮かれ過ぎか、と内心反省する。彼は未だ魔獣との戦闘経験がない。ファンタジー物で定番のスライムやゴブリンの類でさえ。講義により存在する事は知っているが、実際に対峙してみて本当に戦えるのかは、未知数なのだ。人間相手には問題なく動けたが、それはそもそも人間相手が前提の格闘術を修得していたのだから当然ではあった。サイズや形態の異なる、異形の存在相手にどこまでやれるのか?極端な話、怖気づいて動けなくなってしまう様な事態に陥る可能性を、頭の中から拭い切れずにいたのだった。しかし。僥倖、としか言い様のない事に、ギルドへ登録したその日にそれは解消された。あの巨大な魔獣が一撃で屠られる現場を間近で目撃し(間接的にではあるが)、あれを成しうる人間が存在するならば、自分も冷静さを保ち積み重ねた鍛錬に身を委ねるならどうにかなるのではないか(さすがにあの巨大な魔獣は難しいだろうが)、と勇気を貰えたのだ。その、『あれを成しえた人間』から声を掛けられたからこそ、つい浮かれてこれほど軽薄にとられかねない態度をとってしまったのだった。


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