第一部 第三章
『勇者の匂いがする』
そう俺達の頭に何かの声が鳴り響いた。
それと同時に窓枠ごと破壊して何かがこちらに飛び込んできた。
コウモリのような両腕とその巨大なナイフのような爪。
そして、それは俺にその爪でこちらに一撃を入れてきた。
その一撃は優がとっさに俺を蹴り飛ばして、その御蔭で俺の身体には当たらなかったが。
しかし、その巨大な爪は簡単に床をぶち抜いた。
大きく床が爆ぜたように抉れて突き抜けていた。
「ええええええええ? 何だよ、勇者ってゲロ幸かよっ! 」
すでにコウモリと合わさったような顔をしている彩人がいた。
彩人は俺を見て爆笑した。
余程おかしかったのだろう。
黄色い泡を吹いている。
不気味だ。
すでに身体の大部分も侵食されているのかコウモリのような身体が拡がっていてた。
「人間じゃ無いのか? 」
俺が呻いた。
「なんだよ。やっと勇者様と戦えると思ったら、やっぱり合体しそこねか? 」
彩人が黄色い泡をさらに吹き出しながら笑った。
『剣を! 剣を出してくださいっ! 』
優の方にいる聖女の声が頭に響く。
「ど、どうやって? 」
『剣を呼び寄せるイメージをっ! 」
再度、そう頭に響いた。
そこで俺が強く剣を呼び寄せるイメージをした。
そして勇者の剣が閃光とともに現れた。
不思議とその剣は重く感じず、俺は剣を構えた。
「何だ、その構えっ! 」
彩人の化け物がナイフのような爪を振り回しながら笑う。
「何のなのよっ! そのへっぴり腰はっ! 」
優が俺の腰の引けた構えを見て叫んだ。
「いや、剣なんて構えたこと無いし」
俺がそう反論した。
そもそもあの爪の一撃の凄さを見て、完全にビビっている俺がいた。
当たり前だろう。
普通の日本人の高校生なのだ。
「なあなあ! 勇者を殺したら勝ちなんだろ? 」
そう、彩人が誰かに話しかけた。
『勿論だ。変な適合体に転移した勇者には同情はするがな』
彩人の方から頭に響いて来る声が笑っていた。
「くぅぅぅぅっ! 」
凄い顔をして優が俺を見た。
自分の命が関わっているせいだろうか、凄い悔しそうに俺を見ていた。
「いやいや、無理矢理勇者がどうの言われても困るしっ! 」
俺がたまらず言い返した。
「そうだよな! じゃあ死ねっ! ゲロ幸っ! 」
彩人がそう言うとジャンプして反転して天井を蹴ると俺に爪の一撃を食らわせた。
その一撃は幸い剣を前に出していたおかげで剣に当たって斬りつけられはしなかったが、俺は思いっきり跳ね飛んだ。
爪が当たって無いはずなのに、肩から血が出ていた。
「嘘だろ? 」
『勇者を殺されるわけにはいかないっ! 』
そう優の中に居る聖女が叫んだ。
「いやいや、私、何も出来ないからっ! 昨日のはたまたま運が良かっただけだしっ! 」
優がそれに必死に言い返している。
やっぱり、優もうまく適合したのかどうか分からないけど、戦うのは無理らしい。
そりゃ、そうだ。
戦国時代とかならいざ知らず。
こんな平和な時代に戦えと言われても無理だ。
「いやいや、間に合わねぇよ」
そう彩人が泡を吹きながら笑って、俺の腹を思いっきり蹴とばした。
凄い力で跳ね飛ばされて、俺はそのまま旧校舎の古い黒板に当たって衝撃で血を吐きながら気絶した。
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さみしいです。
しくしく。