第一部 プロローグ
特に目立つ特徴も無い。
フツメンで普通の体力に普通の学力。
完全に俺はいわゆるモブであった。
どちらかと言うと小心者で、特に苦しい事や辛い事があると嘔吐してしまう癖がある。
友人達には神代弘幸と言う名前からゲロ幸と呼ばれていた。
それで皆の前で吐いて落ち込んで学校を休んだ時に、先生が来て延々と南方熊楠のは話を聞かされた。
いつでもどこでも相手にゲロを吐きかけれる特技があったとか。
いやいや、俺のは自分が小心者で心が弱いだけだし、そんな知の巨人と一緒にされてもと思った。
俺は生きている価値の無いドブネズミなのだ。
そう思っていた。
その時が来るまでは……。
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「勇者転生失敗です」
「何故だ」
「適合者がいなくて、最後に見つけた適合者に転生できませんでした」
「嘘だろう? 奴らがあの世界に転移してしまう」
夢の中で、中世のヨーロッパの僧のような連中が騒いでいた。
「どうする? 」
「仕方ありません。適合者に強引にアクセスして転移させなさい」
彼らの背後から女神のような女性が現れて、そう指示した。
美しい腰まである長い髪。
海のようなブルーの目。
そして、女神らしい人の光り輝いている姿が凄まじい力を感じさせていた。
「しかし、それだと勇者の人格が……」
「構わない。奴らをあちらの世界に行かせて、そのままにさせて置けば、向こうを蹂躙した後に力を溜めてこちらに戻ってきてしまう。やってくれ」
剣と美しい甲冑を身にまとった白銀のような髪をして豹のようにしなやかな体躯のエメラルドのような印象的な目をした男が強大な魔法円の中で叫んだ。
「し、しかし、勇者様! 貴方が転移しても、貴方の人格が移行できなければ戦闘など無理では? 」
その中の高僧らしい人物がおずおずと進み出て勇者に話しかける。
「だが、すでに仲間があちらに転移している。俺だけ行かないわけにはいくまいよ」
そう、その勇者は悲壮な顔で笑った。
「良し、再度転移だ! 適合者に何としても勇者を送り届けるぞ! 」
女神のような女性も勇者の覚悟を見てさらに叫んだ。
「転移を始める! 」
「勇者に幸運を! 」
「異界のものなれど我ら人類に勝利を! 」
「勇者に勝利を! 」
呪文と言うよりも心からの願いのような言葉が次々と皆の口から叫ばれる。
皆が祈るような思いで勇者を転移させようとしているのが分かる。
「おおおおおおおお! 今度こそ行くぞっ! 」
白銀の美しい髪をなびかせながら勇者が絶叫した。
「奴等を必ず倒すっ! 」
そう勇者が絶叫した。
それと同時に俺の目が覚めた。
自分に関係あるのかとあちこち見回したが、特に何も無かった。
そうして、またいつもの意味の無い毎日が続くと思ってた。
行き当たりばったりで投稿しましたが、何とか一日一本毎日投稿できると良いなと思ってます。