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山田と佐藤  作者: うんち
1章
1/23

1話 遭難した







 秋の土曜日、友達と街を歩いていると、気がついたら森の中だった。





「は?」





 話に夢中になって気を取られて、どっか変な所入り込んだのかと思ったが、街の辺りにこんなジャングル然とした場所なんて無かったと思う。



 しかもさっきまで会話してたはずの友達が居ない。



 辺りを見回しても緑しか無いし、聞いたことない鳥とか虫の鳴き声が聞こえる。

 肌寒かったはずが急に暖かい。

 訳がわからなくて不安になった。



 上を向いたら太陽の位置に違和感がある。

 今は真昼だったと思う。

 なのにだいぶ下に見える気がする。

 自分の時間感覚にも不安を覚えてきた。



 僕は神隠しにでも遭ってしまったのだろうか。



 しばらく呆然と佇んだ。

 妙に思考が滑る。

 色々考えて、まず頭に浮かんだのは記憶障害だった。



 ネットで読んだことがあった。

 たぶん創作だと思うが、フィルムを切り抜くが如く記憶が一定の期間抜け落ちた結果、主観的には唐突に見知らぬ場所に放り出された男の話があった。

 それを思い出した。



 今の僕の状況と重なる。

 だって街に居たらいきなり森だもん。



 まあでも、若年性認知症とか疑ったけど、それにしては服装がさっきまで着てたのと同じじゃんね。

 時間は飛んでなさそう感。



 じゃあ何なんだよって言うと、まあよくわかんないんだけど。






ー◆ー






 何となしに森の中を歩きながら、脳が勝手に神隠し説、記憶障害説に加えて異世界転生説、転移説、アブダクション説、黄泉比良坂(よもつひらさか)説、デスゲーム説などをつらつらと挙げていく。



 とりあえず転生説は違うかな。

 外見的に変化はないし。

 そもそも死んだ記憶がない。



 異世界転移説なら筋は通るが、そんな人間にとって都合がいい神など存在しないので却下だな。

 神の実存を仮定して、であるならば神とは無慈悲で無関心なのだ。歴史が証明している。

 とかそんなバイアスの掛かった話はまあどうでもよくて。

 本当は自分が異世界転移してると思うのが恥ずかしいだけなので、転移説は保留にしておこう。



 アブダクション説はどうだろう。

 宇宙人にキャトルミューテーション的な何かをされたとして、UFOの内装ってこんな感じなんだろうか。

 エイリアンさんがビオトープ的な実験をしていると考えると個人的には結構納得できるけど、ちょっと広過ぎる気がするし、空間拡張などの超科学を僕はなんとなく信じたくない。

 まあこれも保留にしよう。



 黄泉比良坂説の場合、僕は生死の境にいるということになるのかな。でも黄泉比良坂ってこんな森の中だっけ。

 なんか記憶がおかしいと思ったら、黄金聖闘士のキャンサーのデスマスクの例の場所を想像してた。あの、なんだろう、言語化しにくい。なんか典型的な地獄みたいな……。

 なんか実在する場所だったと思うんだけど詳細を忘れた。確か森だったのは間違いないと思うが……岐阜? 覚えてない。

 よくわかんないのでこの説は保留しよう。



 デスゲーム説は睡眠薬等を服用させ、森に定間隔で参加者達を転がしておき、目を覚ました時点でスタートする、などと考えれば一応の筋は通る。

 記憶が飛んだのも薬品の影響と考えれば、強引だが説明はつく。

 黒服さんとかが背後から拉致ってハイエースしてきた、とかそういうのがあったのだ。



 デスゲームなら武器渡されてないと筋が通らねえよなあとか、存在するか知らないデスゲーム主催者に憤りを覚えつつ、一応パンパンと全身をまさぐる。



 財布とスマホと充電器しかない。

 今朝準備した持ち物と変わらない。

 まあ当然である。



 ゾッとした悪寒が背中に走った。



 思わず周囲を見渡す。

 目を澄ませても、耳を澄ませても人工物が見あたらない、自動車の音も聞こえない。

 深い森のどこか奥深くに僕は居る。



 デスゲームとか考えてる場合じゃなかった。



 ここに居る理由は置いといて、仮に人里離れた場所に居るとしたら、生命活動を担保する装備を整えなければ生命の危機である。



 改めて周囲を観察する。

 森というか、何というかどっかその辺の山の中みたいな雰囲気の場所だ。

 僕の乏しいアウトドア経験が、植生にどこか既視感を感じさせる。

 たぶん中学生頃に林間学校とかで経験したのが最後の記憶だ。



 こういう場合、まず山を降りるのではなく、登るのが正解だった筈だ。

 詳しい理屈は忘れたが、山道や川を発見する確率は単純に上がる筈だし、高い所から景色を見て人里を見つけることも出来るかもしれない。



 僕は山を(くだ)った。






ー◆ー






 だって面倒じゃんね。

 往復とか普通にしたくないわ。

 そもそもなんでこんな苦労僕がしなきゃならんの?

 被害者じゃん被害者。

 誘拐置き去りとか、民主的法治国家大日本帝国なら寝てて金が転がってくる事案だろ。



 あーあ!どっかに僕のこと大好きな社長令嬢とか落ちてねーかなあ。



 待てよ、家族付き合いとか考えてると親は居ない方が都合いいよな。

 親父は殺して、パツキンの星条旗ビキニとローレグデニムパンツが普段着の巨乳未亡人淫乱ママ社長が居る母子家庭って設定にしよう。

 スッキリさせてあげマース!みたいな口調のやつ。



 そんで普段着がマイクロビキニの金髪ロリデコ社長令嬢が、僕に愛を囁きながらロリマンコおっぴろげて山の中に転がってたら。

 うん、普通に恐怖体験だよな。

 何の撮影かってカメラ探しちゃうと思うし。

 そうでなくても普通に怖いわ。



 現実逃避しながら山を降る。

 その辺に落ちてた棒を使って、目の前の邪魔な草を薙ぎ払いながら進む。



 やっぱり季節感おかしいよな。

 秋っていうより春の植生だ。

 草ボーボーじゃないのは都合が(よろ)しいけど、現実感とは乖離(かいり)していて恐怖を煽る煽る。



 暑くなって、脱いだ上着を腰に巻き付けて歩いてたんだけど、腰回りがムワッとしてそこそこ不快。



 景色がひらけてきた。

 近づいてみると崖で、そこから周囲を覗くと川を発見。

 思わず声が漏れる。



 現実逃避してたけどやっぱ怖かったもんね。

 川を辿れば山を抜け出せるし、人里に出られる確率も上がるって寸法よ。



 崖を降りられるか下を覗く。

 地上までは結構な高さがあったが、そこに人影らしきものを見つける。





「なんだ……?」





 すわ社長令嬢か!?って妄想に引き()られて凝視すると、黒っぽい服を着た成人男性?の周りに、小学生くらいのサイズの緑色の人型の何かが3体転がっている。

 誰もが血溜(ちだ)まりに沈んでいるようで微動だにしない。





「……」





 あれゴブリンじゃね?って一瞬思ったのを、今まで(つちか)った理性と羞恥心が否定する。

 冒険者っぽいのが剣みたいなの持ってるのが見えたけど、見ないふり見ないふり。



 冒険者っぽい人は見た感じ長身の成人だが、実際は僕のこと大好きな桃髪ロリツインテ社長令嬢なのかもしれない。

 視覚的マジックに騙されている可能性がある。



 人は己の五感をもって世界と向き合わなければ、プラトンの論ずるイデアに近づくことさえできない。

 下位存在である我々が現実から目を逸らせば、真実からは遠ざかるばかりだ。

 つまりアレは社長令嬢かもしれないという事だ。



 理想の社長令嬢を求め、とりあえず降りようと決める。



 下までは4〜5階分相当の高さがあった。

 周囲を見ても一面が切り沿っており、地上までのルートは見当たらない。

 歩けば何処かにあるのかもしれないが、下に居る令嬢を見失うのは必至だ。



 この崖から降りよう。



 僕は運動神経がわりといい。



 崖は都合良く岩肌のようで、手がかり足がかりにして降りるには十分な強度があるようだった。



 腰に巻いた上着を着直して肌を保護し、おおよそのルートを決めてから降りていく。

 長年雨に晒された影響なのか、岩肌がやたらスベスベとしていて、取っ掛かりが少ないのに憤りつつ進み、半分ほど降りたら飛んで着地した。






ー◆ー






 崖を降りて令嬢を見る。僕の社長令嬢はやはり青年であり、僕と同じかそれより下くらいの歳に見えた。





「なんと……」





 腹を突かれたようで、苦しんだのだろう。

 青年は端正な顔に、苦悶の表情を浮かべて事切れていた。

 まだ若いだろうに、あまりにも惨たらしい最期だ。



 人生初直視した凄惨な光景に胸を痛めつつ、目の前の非現実的な光景に目を走らせる。



 やっぱり冒険者っぽい装備してるし、コーカソイドイケメンの髪はやたら青いし、周りに転がってるのはスタンダードなデザインのゴブリンだし、これ異世界転移のパターンだわ。



 壮大なドッキリの可能性も踏まえてゴブリンの死骸を(あらた)める。

 死んで久しいのか体温は失われていたが、虫が沸いていないので、死んでからそれほど時間は経っていないのだろう。



 イミテーションの可能性も頭を(よぎ)ったが、濃厚な血の匂いと、まろび出た臓物、横断された消化器から溢れた内容物の匂いと質感が、これは本物だと訴えてくる。



 現実感のなさに呆然としつつ、理性が警鐘を鳴らす。

 ここにゴブリンの死体があるということは、周辺にゴブリンが生息している可能性を示している。

 むしろ居ない方が不自然だろう。



 3体のゴブリンは石斧や石槍を装備しており、腰に巻かれた布や、頭に(かぶ)った鍋からは知性や文化を感じさせる。



 創作上においてゴブリンは狩猟・採集・略奪・異種姦レイプなどを生業(なりわい)としており、冒険者と戦ったこのゴブリンの生態が、そこから大きく逸脱しているとはとてもではないが思えない。



 この3体が集団における狩猟・採集の班や分隊の可能性があり、帰ってこない彼らを探しに来る可能性は十分に考えられる。

 早急にこの近辺から脱する必要があった。



 また、依然として遭難している身の上である。



 冒険者さんに手を合わせ、大急ぎで彼の遺留品を回収していく。

 内容の取捨選択は後にして、持てる限り全て持っていく。



 仏様には申し訳ないが、衣服も剥ぎ取る。

 何せ今の僕は着替えすら持ってない。

 流石に下着は断念した。

 (しの)びない上に僕も履きたくない。



 ゴブリンの武器や鍋、腰布も剥ぎ取る。

 見るからに不衛生っぽいが布は貴重だ。

 川で洗えば問題ない事にする。



 冒険者さんのマントに全て包み込み、彼の持っていた鞄を肩に下げ、剣を引っ提げて川に向けてチンタラ歩く。

 単純に走りたくないし、理屈の上でも遭難中の体力は貴重なリソースだ。

 いざ接敵したら僕の魔剣が火を吹くって寸法よ。






ー◆ー






 記憶を頼りに歩くと無事川を発見。

 川沿いに山を降る。



 邪魔な草を刈るために剣を持ってたけど、手がだるくて早々に棒に持ち替えた。

 腰に下げた鞘の重量感が増して非常に邪魔くさい。



 段々と陽が沈んでゆくのを感じる。

 いよいよ野営しなければならない予感。



 現代の安全な広場で、テント張って一泊すらしたことない陰キャだぞ僕は。

 危険地帯で野営とかどうすればいいかわかんねーよ。



 そもそもこんなとこで一人で野営とか無理だろ。

 青髪の彼も、たぶん不測の事態が起きて、一人であんな所に居たんだろうと偲ばれる。



 まあ月明かりにも寄るんだろうけど、田舎の夜は暗くて歩けないって聞くし、少なくとも焚き火の準備はしなきゃいけない気がする。



 あっ、そもそも火種ってあるのかな。



 回収した荷物を点検する。

 無事火打ち石的な物体を発見。

 これを僕が使いこなせるかどうかの話は置いとこう。



 その他、なんかの動物の皮でできた水筒(中身はワインっぽい匂いがする)・干し肉五切れ・干し葡萄っぽい乾物・岩塩・獣脂・松脂(まつやに)・砥石・ナイフ・スコップ・小さめのフライパン・食器・ロープ(10mくらい)2本・予備の着替え・タオル・体操服袋みたいな形の皮袋・貨幣(らしき物)の入った財布・身分証(らしき物。字が読めない)など。



 衣服と共に、手袋や革製の鎧(胴当て・肩当て・脛当てなど一式)や鎖帷子(くさりかたびら)を着ていたので、一度身に付けてみる。

 Tシャツの上に鎖帷子を着て、革鎧のベルトを(くく)り付ける。



 僕が190cm超えてるのに対して、仏様が180ちょいくらいありそうだったので、サイズが若干足りないけど問題なく着れた。

 僕がヒョロガリだからか、革鎧はスカスカして思ったより暑くないが、違和感が物凄い。

 ベルトを調整しつつ、これから慣れてく意味でも着けたままにする。

 これ寝る時どうすればいいんだろう。



 マントも着てみた。

 背に被せて胸元で紐をギュッと縛る。

 背丈が違うせいか、丈が膝裏くらいまでしかない。



 フードもついていたので被ってみる。

 薄手なので着心地は悪くなかった。

 雨は防げないだろうが、日光や風から身を守る事はできるだろう。

 濃い緑色なので、森では迷彩色として機能しそう。

 人の居るところでこの格好したら完全に不審者だけど。






ー◆ー






 川へ行き、ゴブリンさんの臭いウンコついてそうな、臭い布や臭い鍋を丁寧に洗う。

 ついでに斧と槍も洗う。



 多分少なくとも、何日か野営する必要があるだろう。

 飲み水の確保は必須だ。

 鍋と丸みのあるフライパン、コップがあるので、汚い水を蒸留して飲み水にするアレも可能だ。

 サバイバル漫画とかでよく見るやつ。



 上流から寄生虫とか野生動物のウンコとか流れてきても、安心してゴクゴクできるはず。

 まあ、まどろっこしくなったら煮沸(しゃふつ)して飲めば多分大丈夫。

 川は見た感じ澄んでるし、そのまま飲んでもいけそうな気はする。

 魚も泳いでいたので、獲れれば食料も確保できそう。



 つらつらと今後のことを考えつつ、手袋をはめて乾いてそうな(たきぎ)を拾う。

 薪は湿気っていても焚き火で乾かせる、という小話を何処かで耳にしていたので、(多分)十分量の乾いた薪を確保できたら、あとは湿気てても関係なく集める。

 幸いそこら中に落ちていたので、すぐに大量の薪が集まった。



 暇つぶしに見たサバイバル動画の記憶を頼りに、フィーリングで井の形に薪を組み、周りに石を積んで泥で補強した(かまど)を組む。

 竈に鍋をのせサイズを確認し、安定してるかどうかを確かめる。

 鍋を一旦どけて、シケった薪を竈の周囲に設置する。



 もうこの頃にはだいぶ暗くなり、手元が怪しくなってきて内心焦った。



 焚き火の準備が一通り済んだので、ナイフで薪を削って目の細かい木屑を作り、それに火打ち石で着火を試みる。



 なにこれ超難しい。



 発狂しながら数十回トライして、コツらしきものを掴めないまま気がついたら火がついてた。



 慌てて火種を薪にそっと差し込んでフーフーする。

 しばらくそうしていると、段々と火勢が強くなってきた。

 薪がパチパチと音を立ててオレンジ色に燃えていく。



 火が安定している事を確認し、鍋を持って川に行く。

 飲料水の確保のためだ。

 怖いので、とりあえず煮沸して飲む事にする。



 焚き火をするなんて初めての経験なので、全く気を抜けない。

 何しろ火が絶えたら行動不能に陥る可能性がある。

 どの動物が夜目が効くのかとかそういう知識は無いが、少なくとも嗅覚は僕より敏感だと思う。

 スマホで検索したい。



 そういえばスマホ持ってるわ。

 確認すると当然のように圏外だった。

 電源を落とす。



 まあスマホのライトもあるし、なんか安心してきた。

 喉が酷く乾いたのを感じて、水筒の残りを飲む。

 薄いワインだった。

 長時間携帯するなら真水よりアルコールの方が衛生的だもんな。

 アルコールならカロリーあるし。

 なるほどなぁと思う。



 つらつら思考を巡らせながら、沸騰した鍋を下ろし薪を追加する。

 そうしたら燃料を切らさないよう、湿った薪を火に当てるように組む。

 乾いた薪はまだあるが多いに越した事はないし、湿った薪から消費していきたい。



 ふと考え、ホカホカと湯気を立てた鍋の湯をコップに一杯汲み、鍋底に乾いた薪を何本か並べて、その上に水筒を置いた。



 長時間携帯した場合の衛生面を踏まえて、水筒を煮沸消毒しようと考えた次第だが、再度鍋を火にかけようとしたところで、動物製のもん熱したらタンパクが不可逆的変化起こして駄目じゃねって思って、慌てて水筒を取り出そうとしたところで火傷して悶絶。



 もう湯ごと地面にぶち撒けようとしたけど、余計に水筒が泥で汚れるじゃんねって思って、最終的に薪トングで慎重に水筒を救出した。



 もう面倒になってきたので、川で火傷冷ますついでに直に水筒に水を入れた。

 これで腹壊したらそこが僕の寿命だろ。

 知らん知らん。



 飲料水は確保できたので、次は食料だ。

 そこら辺に生えてる(つる)とか草で(かご)を作っていく。



 これもサバイバル動画で見た。

 川に籠を設置して魚や海老などを獲る漁法だ。

 川底に籠を石かなんかで固定して、そこに向かって魚が流れるように、岩かなんかで流れを作るのだ。



 放置するだけで釣果(ちょうか)が期待できる。

 餌などがあればなお良い。

 今回は干し肉があるので、それが餌になると思う。

 干し肉に釣られるかわからんけど大丈夫大丈夫。



 フィーリングで適当に籠を編んでいく。

 蔓を八本くらい釣鐘型に曲げて外枠を作り、そこに互い違いに蔓草を編んでいく。

 欲を出して大きめに組んだら、早くも編むのに飽きてきた。



 寝る前にこれ組んじゃいたいんだけど、まあ明日でもいいや。

 干し肉あるし。

 もう真っ暗なんで、今から川に罠設置するのは危ないもんね。

 全部明日でいいよもう。

 あーあ! 僕を養ってくれる都合のいいマンコどっかに落ちてねえかなあ。



 薪を弄りつつ、マンコのことを考える。



 青髪ローライズのセーラー服ロリポニテがスカートをたくし上げた、僕に都合のいい笑顔が頭に浮かぶ。



 青髪ポニテ転じて社長令嬢即ち冒険者さんのことが頭に浮かんだのは、考える葦である我々人間にとっては普遍的とも言える連想だろう。



  彼の事を偲びつつ、マンコの事を考えていた。






ー◆。ー






 さっきも考えたけど、あの冒険者さんは、なんであんな所に一人で居たんだろう。



 まさに今の僕の事だが、ゴブリンさんの出没する所で、個人で何日も野営などすれば死んでしまう。

 交代で見張りをする必要がある。

 冒険物のテンプレでもそうだ。



 そもそも冒険者ってマジで存在すんのかな。

 なんだよ冒険者って。

 冒険ってそんなに印象のいい言葉じゃないぞ確か。



 でも彼の服装から考えて、この世界の軍隊の正装とか知らんけど、軍人さんの格好じゃない気がする。

 僕もパッと見で冒険者さんって思ったし。



 軍隊というのはどの時代でも共通する普遍的な要素というものがあるだろう。

 パッと見の印象というのは侮れない。

 そこに規律が感じられるかどうかという奴だ。

 一見して彼の装備はゴチャついていたので、やはり軍人さんでは無いと思う。

 同じ理由で警邏(けいら)さんとかでも無い。



 じゃあやっぱり職業冒険者って存在すんのかな。

 なんだよ冒険者って。

 無限ループするわ。

 止めようこの想像。



 あれ、何考えてたんだっけ。

 ……そうだ。青髪ポニテの人があそこに一人で居た理由だ。



 まあ普通に考えて、ゴブリン退治とかの目的があってこの山に入って、何かあって仲間と(はぐ)れたんだろう。



 つまりこの山の徒歩圏内に、人の住む場所があるって言えるのかな?

 その目算は高い気がする。



 冒険者さん達が馬車に乗って来たと仮定しても、この山の近くに乗ってきた馬車を預ける施設がある訳で、馬には人の手入れが必要だから、やっぱりこの山の近くには、人が住んでるって事が言えるんではあるまいか。



 人が生活するには水が必要だから、予定通り川を沿って降っていけばいい。

 川が幾つかあったとして、仮にハズレを引いちゃっても、山沿いにぐるっと周れば人里に辿りつけるだろう。



 あっ、そうなると青髪セーラーが一人で居た理由って、日帰りで行き帰りできるからかもしれない。

 都合の良い想像に希望が湧いてきたぜ。



 とかごちゃごちゃ考えてるうちに籠が完成。



 松明も作れたが松脂が勿体無いので、川べりにざっくり薪を組み、火種用に薪をナイフで毛羽立(けばだ)たせ、それに焚き火の火を移す。

 川で作業する為の明かりがほしいのだ。



 簡易焚き火で川の辺りが明るくなった。

 冒険者さんの靴に履き替え(すそ)をまくり、川に入って石を組み、干し肉の欠片を入れた籠を設置した。

 流されないように気を付けて固定する。

 これでお魚さん用の罠も完成。



 タオルで足を拭いて、再び靴を履き替える。

 革の脛当てとスニーカーって最高にミスマッチだよな。

 冒険者さんの靴は革だったけど、履き心地がうんちでもう履く気が起きねえわ。



 タオルは洗って軽く絞り、枝で干し場を作って靴とタオルを火に当てる。

 そういえばゴブリンさんのチンカスついてそうな腰巻きも、洗って放置したまんまだったわ。

 石鹸とか使ってないし、まだ汚い気がしたのでもう一度洗って干す。



 眠くならないので道具を整理して、あと投石器とか手槍も作ろう。

 投石紐は草鞋(わらじ)っぽく編めばいいんだっけ。

 詳細は全く覚えてないからフィーリングで作ろう。



 陽が落ちるにつれて気配が変わり、野生動物の気配を感じる気がする。

 ゴブリンさんの生態なんて知らんけど、猪や鹿なんかは夜間に畑を荒らすと聞いたことがある。



 蛇や虫なんかも出るだろうし、そもそもこんなとこで寝ていいのか疑問だ。

 それでも寝るしかないのだろうが、焚き火の世話もあるし、長時間眠ることはきっと出来ないだろう。



 なんでこんな所に居るんだろうと考える。



 テンプレ的には神とか女神とか出てくるんだろうけど、僕あれ嫌いなんだよな。

 なんで人間如きの生き死にを神様が気にしなきゃいけないんだろうっつーアレだよ。

 人間とかマクロで見るとその辺の大腸菌と変わんねえだろって思うもん。



 あと全然別の理由で、レベルとかステータスとかスキルも嫌いだわ。

 まあ物理法則ありきで考えるから悪いんだろうけどさあ。

 別に僕、特別物理に詳しい訳じゃないし底辺のアホだけどさ。

 でもファンタジーの一言で片付けんのは読んでて気持ちよくないじゃんね。

 まあ物にも寄るけど。

 素直に好きって認めたくない気持ちがなんかある。



 設定上防御極振りのヒョロガリが、発情した体高五mのゴリラのウンコついたパンチ喰らって無事なのは百歩譲っていいとしても、吹っ飛ばされないのは体重差考えるとあり得ないと思うんだけど、どうやってその辺説明つけんのってそういう……。



 そういやアレやってなかったな





「ステータスウィンドウオープン」


「……」


「スキルウィンドウオープン。……鑑定」


「……」





 やっぱなろうってクソだよな。







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