ヲタッキーズ69 変態バスターズ
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第69話"変態バスターズ"。さて、今回は秋葉原のトップヲタクを狙うシリアルキラーが出現w
ところが、殺されたのが小児性愛者と判り、背後にトラウマを抱えた異次元人のスーパーヒロインが現れて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 連続殺"TO"事件
変態が隠し撮りされている。
変態による隠し撮りではなく、変態自身が隠し撮りをされているのだ。
ソイツは今、タワマン最上階にあるゴージャスなペントハウスに入る。
「バニラ、いる?入るょ?」
カメラは切り替わって、室内の防犯カメラだ。変態はシステムキッチンに入って来る。
コンビニ袋から安い発泡酒の缶を取り出し、美味そうに一口飲んで冷蔵庫に目をやる。
「くつろいでネ。私はシャワー」
丸文字のメッセージが冷蔵庫にネコ耳マグネットで止めてアル。変態はニヤリと笑う。
「バニラたーん。ピクスだょ!一緒に浴びよっか?」
「…」
「OK?よぉしシャツ脱ぐぞぉ」
シャワーカーテンの向こうからは、水音が聞こえるだけなのに服を脱ぐ。変態なので←
「あれ?」
洗面台に妙な角度で置かれたカメラを見て不審に思った次の瞬間!意識が飛び…死亡w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌日。殺人現場と化したペントハウスに私服や制服の警官、鑑識、消防、さらにスーパーヒロインが集うw
「ヲタッキーズのエアリにマリレ、貴女達を呼んだのは私ょ。ご苦労様」
「ラギィ警部。異次元人犯罪の可能性がアルってホント?被害者は?」
「ピクス・サント。34才。トラック運転手」
エアリとマリレは僕の推しミユリさん率いるスーパーヒロイン集団ヲタッキーズの精鋭で…メイド服だw
ラギィは万世橋警察署の敏腕警部で僕とは前の職場で彼女が"新橋鮫"と呼ばれてた頃からのつきあい。
「財布は、大して入ってなかったせいか手つかず。免許の住所は東秋葉原。発泡酒は自分で買ったみたいでポケットにレシートがあった。一応、鑑識に回すわ…で、例によってイスに座ったママ、地獄を見たかのような恐ろしい形相で死んでる」
「第1発見者は?」
「またまた不動産業者。億ションの購入希望セレブと物件を訪れて死体を発見。即、事故物件扱いになり、商談は破談」
テキパキと情報共有を進めるラギィ。
「ただし、不動産業者は被害者とは全く面識がナイと言ってる。因みに、鍵は無理にこじ開けられた形跡はナシ。売り物件の看板は捨てられてた」
「同じ手口ね。被害者のコトは、秋葉原の推したり推されたりの裏事情に詳しいミユリ姉様に聞いてみるわ」
「お願いね、エアリ。6週間で3人。売り出し中の億ションで秋葉原のTOが次々と殺されてるの」
ラギィは1呼吸おき、逝い辛そうに付け足す。
「コレは…間違いなくTO狙いの連続殺人ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、僕はジャドー司令部で"逆立ち"してるw
「テリィたん?」
「あ、ルイナ。コッチだ」
「まぁ…深く反省してるワケね?どの件?」
ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを護る首相官邸直属の秘密防衛組織だ。
ルイナは、史上最年少の首相官邸アドバイザーで、凄まじいIQゆえに国宝級の扱いを受けてる天才。
「反省?コレは"事象の地平線"を見る準備だょ?」
「ブラックホールにでも行くつもり?テリィたんが行く宇宙発電衛星は静止軌道でしょ?」
「あ。謝罪の言葉なら手身近に…僕が宇宙へ逝く時刻は、刻一刻と迫ってるからね」
僕は、第3新東京電力のサラリーマンだけど今回会社初の宇宙発電所長の内示が出て…
宇宙に逝くのは夢だったが、正直な話、アキバは僕の宇宙逝きについて賛否両論だw
「私は…反省したの。テリィたんがキッズの頃からの夢をかなえるのは素晴らしいコトだわ」
「thanks」
「ただ…寂しい」←
「たった6ヶ月さ。確かに高度400キロを時速30,000キロで移動してるけど、スマホは繋がる。恐ろしく高額だけど」
「私も逆立ち応援しようかな。テリィたんが未知なる宇宙へと飛び立つコト、正直今まで応援してなかったわ。はい、お餞別」
ルイナ(趣味でメイド服を着てて眼福だけど逆立ちしてる前に立たれるとパンツがなw)は僕に薄い箱を渡す。
「気にスルなょ。でも、確かに態度悪かったカモ」
「開けて」
「…メイドのカチューシャ?」
「宇宙任務の安全祈願に持って行って」
「ルイナ…僕は、必ず無事に帰って来る(から持って行かないょw)」
「ホント?!ウレしい(定時報告の時にホントに持ってったかチェックしなきゃw)。ソレじゃ… ラギィの捜査を手伝ってくるわ。テリィたんも来る?」
「(逆立ちソロソロ限界だからw)喜んで」
「やったー☆」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕達は万世橋に設置された捜査本部で開かれた会議にジャドー司令部から会議アプリでリモート参戦スル。
「3人ともイスに座らされたママ、地獄を見たような恐ろしい形相で死んでた。1人目は、スコト・テルマ。47才。コンカフェ"ナース天国"婦長リリカのTO。6週間前に神田同朋町で殺害」
「2人目は、ジャレ・ホルト。32才のブローカー。コスキャバ"レイズAkiba"専用お立ち台ホルダー、サトミTO。10日前に神田台所町で殺害」
「被害者2人に関連はなさそうね」
「1つあるわ。2人とも発見現場が売り出し中の空き億ションだったってコト」
話に割り込むルイナ。アプリの向こうから即反応。
「ルイナ?ラギィょ。ソレが3件とも不動産会社が違うの。関連付けは厳しいカモ。ソレから鑑識結果が出て死因は未知のスーパーヒロインによる"心臓停止波"攻撃と判明、異次元人絡みなので本件はジャドーとの合同捜査になったわ。よろしくね」
「はーい。しかし…被害者が余り縁の無さそうな億ションに安いビールを買って自発的に来てる?何か妙ょね」
「コレから死ぬのに安い発泡酒は買わないわ。空き億ションに誘き出されたのカモ」
ココで僕は咳払い。
「ちょっち良いかな。億ションが事件の鍵なら、表面的には無作為に見えても何らかの識別出来るパターンがある可能性が高いょ」
「げ。テリィたん、ルイナと一緒?ミユリは知ってるの?」
「あ。しまった…」
すかさずルイナがフォローw
気のせいか何かウレしそう←
「なるほど!億ションのプロファイリングね?!多属性合成モデルを使って構造を細かく解析すれば、全体像が浮き上がるわ。犯人の好みが判明すれば、犯人が夢に描く理想の億ションも合成出来る」
「そして、ソレを他の売り億ションと比較してみてはどーだろー?」
「ソレだわっ!ねぇラギィ、次に選ばれそうな億ションのリストも送って。大至急!」
すると…アプリの向こうから、ラギィ警部の、まるで台風のような"溜め息"がビュービュー吹いて来るw
「ふーん天才は億ションを見れば、犯人がワカルってコト?ソレにしても…テリィたんとルイナ、夫唱婦随って感じょ。何ソレ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
会議終了後、ヲタッキーズのエアリとマリレ。
「連続殺人犯って、ターゲットをつけ狙うか、自宅に連れ込むか、どっちかナンだって」
「ふーん今回は空き億ションに連れ込む系?」
「ソレも全部売家でしょ?何でソンなに不動産情報に詳しいのょ」
因みに、エアリは図書館カフェ、マリレはノイズ喫茶のメイド長なので、2人共メイド服。ラギィが絡む。
「なのょねぇ。多分、内覧の予定ナンかも承知の上でTOを呼び出しては心臓を止めてる系?不動産関係者にはウチが当たるわ」
「ソレにしても、ナンで被害者を億ションに呼び込むのかしら?」
「で、被害者は全員、殺される直前にATMで引き出してるって聞いたけど。麻薬取引じゃナイの?」
「ソンな額じゃないわ。特に2件目の被害者は、2年前に池袋で幼女を買おうとして逮捕されてる」
「嫌だ、小児性愛者絡みなの?苦手w」
「とりあえず、3件目の被害者の通信記録を調べてみるわ。1件目の被害者は、ヲタクにしては珍しい既婚者なのょね」
「うん。ミユリ姉様が事情聴取に向かってるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
絵に描いたようなスイートホームだ。タワマン中層階で南向きの部屋。シックな内装。輸入家具。美人妻。
しかし、夫は戻らない。永遠に。
「ごめんなさいね。子供達が幼稚園に行った直後で。急いでお茶の用意をスルわ。おかけになって」
「コチラこそ。お忙しい時に…」
「結婚して7年ょ。遅くに子を授かったから毎日が戦場だわ…電話でおっしゃってた新たな情報って?」
結婚して7年?アラサー?アラフォー?でも、セーラー服を着せたらJKでも通りそう…ガード下限定だけどw
厄介な美魔女(と、ミユリさんは脳内苦笑いw)←
「ミユリさんっておっしゃったわね?素敵なメイド服だけど…現役?TOとかいらっしゃる?」
「はい。人サマ並みに」
「まぁ素敵。実はね、私は元アイドルなのょ。地下だったけど。当時のプロダクションの社長が夫だった…あ、何か新たな情報が?」
ウェッジウッドのティーカップで紅茶を薦められる。
「実は第3の被害者が出ました」
「ソンな…ナンてコト?!」
「大丈夫ですか?奥様、お気をしっかり…」
ウェッジウッドを慎重にテーブルに置いてから、オモムロに頭を抱える美魔女。万事が芝居がかっているw
「あぁ!主人が亡くなって明日で6週間。子供達が不憫で。息子のトムヤは毎朝泣いてるわ。でも、心配なのは娘のスザヌ。涙も見せないの」
「何度も思い出させてすみません」
「気にしないで。でも、貴女に話すコトは何もナイわ」
「実は…3件に共通点が浮上しまして」
「共通点?何かしら?」
「ご主人は現場へ逝く前に、ATMで現金をおろしています」
「今どき現金を?」
「数万円ですが」
「ソレが重要なの?」
「まだ不明ですが…奥様、何かお心当たりでも?」
「1年前、余り良く見ないでこの億ションを買ってしまったの。で、実は、もう少し大きなトコロを探しています。きっと、主人は下見に行ったのではナイかしら」
「お1人でですか?」
「私がアイドルだった頃から、身の回りのコトは主人が全てマネージメントしてくれた。億ションの購入も、彼が決めた…実は、私のお誕生日がもうすぐなの。お金は、私へのプレゼントを買うためだと思いたい…でも、とんだバースデーになってしまったわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ミユリさんが美魔女と丁々発止やってる頃、未だ僕はジャドーでルイナとウダウダ中。逆立ちは終えたがw
「幼少期、性的な虐待を受けた犯人が、自分が育った豪邸に似た億ションで人を殺す…」
「テリィたん。ソレって、まるでヒッチコック。昭和の名画劇場だわ…天体望遠鏡、ソレでOK?私の学生時代のお古だけど」
「おぉコレで十分さ。なるべく一緒にいたいけど、今後は通信手段がかなり限られるからね」
「限定的な通信手段って望遠鏡のコトなの?」
「ミユリさんと約束したんだ。宇宙から僕は見下ろし、アキバからミユリさんが見上げる」
ほとんどブーイングに近い溜め息をつくルイナ。
…ところが、ソレを遮るようにして鳥の囀りが…
「え。待って?!あのケータイ嫌いのテリィたんがケータイを?」
「うーん宇宙飛行士の仲間入りナンで、NASAとの連絡やら何やらあって社級品を持たされた…はい。テリィです」
「…テリィたんの言ってた犯人の幼少期だけど、変数を変えて少し考えてみようかしら」
僕が場を外してる間もスゴい勢いでPCを叩いてたルイナだが、戻って来たのを見てダラリと両手を垂らす。
「ど、どーしたの?テリィたん、真っ青ょ?!」
「宇宙に…逝けなくなった」
「はい?何のコト?」
「太平洋の向こう岸の国から我が国の宇宙発電衛星プロジェクトにストップがかかった。コード"broken arrow"だ…」
第2章 矢は折れた
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したらヤタラ居心地良く常連が沈殿して困ってルンだが…
今宵はカウンターにメイド長のミユリさん、スツールに僕だけだ。コレは…きっとミユリさんの差金だな。
「テリィ様。宇宙逝きの可否は、未だ決定ではナイそうですね。あきらめないで」
「僕がバカだった。旧万世橋駅の地下トンネルで孤独に耐える訓練とかして…バカみたいだょ」
「テリィ様は私のTO。ヲタクだけど、明るくて、魅力的で、セクシーな方です。ソンなコトより会社がタイヘンなコトに…」
先週、太平洋の向こう岸の国の産軍複合体が、突如、第3新東京電力で行われている自主点検・補修作業全般に不正があると指摘、経営陣が引責辞任スル騒ぎに…
「国から送り込まれた立派な方々が、会長以下、次々と辞任に追い込まれたそうですね?しかし、ナゼこの時期に太平洋の向こう岸の国が我が国に牙を剥いたのでしょう」
「昔から、国際情勢に振り回される業界だったのさ。世界の東の果てにある資源に乏しい島国が、世界経済の恩恵に塗れて繁栄し続けるコトには無理がアル」
「そのせいで、人類が気候変動問題の切り札となる宇宙発電衛星を諦めざるを得ないとは」
「別にSPSを諦めたワケじゃない。ただ、宇宙分野で自分達の前を歩くな、と警告して来ただけだ。その煽りで、僕達は宇宙への翼をもぎ取られたのさ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、万世橋の捜査本部は今宵も眠らない。
「被害者の身辺調査、どうなってンの?」
「はい、警部。被害者の学歴、病歴、家系まで調べました!」
「で、共通点は?」
「ジャレは施設の出身で"封印記録"がありました。複数の里親をタライ回しにされて"そして、バトンは渡された"的な…今、裁判所命令を待ってます」
「他は?」
「スコトはロリコンでした。買春容疑で逮捕歴アリ」
「あらまぁ。2人の共通性は?」
「…性的な体験は、怒りや暴力と結びつきやすい。もう少し謎を追いかけてみます!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ジャドー司令部も眠らないw
「レイカ司令官、ダメなのかな」
「どうかしら。すぐわかるわ」
「あ、帰って来たわ」
ルイナのラボで、ヲタッキーズのエアリとマリレもレイカの電話が終わるのを待っている。
因みに、ルイナは趣味のメイド服、ヲタッキーズもそれぞれメイド長なので全員メイド服。
実にアキバ的な風景で萌え萌え←
「で、レイカ。ワシントンのお友達は何だって?」
「ホワイトハウスは大騒ぎになってる。TEPCO-3の国から送り込まれた役員は全員検挙だって強硬論も出てルンだって」
「ナゼそこまで…太平洋の向こう岸の国は、同盟国じゃなかったの?」
「ウチが大人しい飼い犬でいる間はね」
「え。宇宙発電衛星を打ち上げるコトは、飼い主を噛むコトになるワケ?信じられない」
「中華な国に追い抜かれた今も、彼の国は仲間内では番長でいたいのょ」
「でも、その間にも気候変動問題は深刻化…」
「気候変動はヨーロッパが言い出した問題。私達の子孫は、氷河期で震えてるカモ…あら、ルイナ。ソレは何?」
「ラギィからゲットした不動産情報。犯人の億ションへの執着を数値化出来ないかと思って」
「うーんルイナ。貴女はマイホーム探しとかとは無縁な人だからワカラナイでしょうけど、家探しで最も重要なのは"立地"なの。"立地"にも注目して」
その瞬間、ルイナの顔がパッと輝く!
「そっか!私、億ションばかり見てきたけど、見るべきは、周辺の環境なのね?!見るべきは"立地"。わかったわ!大事なのは"立地"よっ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、万世橋の捜査本部でも進展が…
「被害者3名の通話履歴やカード使用歴には、特に共通点はありません」
「メールは?」
「プロバイダーに問い合わせ中です」
部下の報告に溜め息をつくラギィ警部。
「また振り出しに戻っちゃったわね」
「そうでもありませんょ警部!」
「え。ナニナニ?」
手を挙げた若い刑事に駆け寄るラギィ。
「児童相談所にあったスコトの"封印記録"の開示命令がやっと出ました」
「え。異例の速さね」
「7歳の時、里親から性的虐待を受けた疑いがアルとのコトでした…因みに、虐待の被害者の性的嗜好には、一定のパターンがあります」
「成人になってから、自分が加害者側に回るとか?」
「Yes。他の被害者についても調べてみました。ジャド・ホルドが逮捕された時の売春婦は…9才の少女でした。強姦罪では免訴が確定してますが」
「1人目のプロダクション社長は?」
「彼のオフィスは、いわゆるジャリタレ専門のプロダクションでした。最近、小学生巨乳アイドルでヒットしましたが、その前は引っ越しの繰り返し、その度にオフィスの名称が変わり…7年間で2回も秋葉原と池袋を渡り歩いてます。理由は…誰も多くを語らない」
「ヤレヤレ。商品に手を出したのね?社長が小学生をつまみ食いしちゃダメでしょ」
「ロリコン買春する男。小学生巨乳アイドルにいたずらするプロダクション社長。最後は、性犯罪の被害者から加害者に転じた男か」
「被害者3人のメール履歴は不明ですが、チャットログを見つけました。サイト名は"ロンリー腐女子オンリー"と"小学生キャバ嬢日記"」
「そのサイトのチャットで会う約束をしたワケね?」
「YES。そして、殺された」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部全員が、そのママで朝を迎えるw
「おはよう」
ラギィ警部がポケットマネーで全員にスターボックスコーヒーを奢る…が、既に半分は寝落ちw
「犯人の標的は、性犯罪者ばかりだわ。ソレもロリコン系。残虐性を見れば動機も明らかね」
「ズバリ、復讐です」
「きっかけは過去の恨み?かつて、自分が被害者だったか、娘や姉妹が犠牲になった可能性もアル」
「共通点はチャットです。3件共、チャットで標的を探してる」
「チャットログを見せて」
「モニターに出します」
「ココから犯人の痕跡を追跡出来るわね」
「YES。この3人に絡んで来た共通のハンドルネームを探します。上手く行けばソイツが犯人カモ」
「よっしゃ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
情報を聞いたミユリさんは、再び美魔女を訪問スル。
「ゴメンなさい。またまた子供達を送り出した後なの。いつも散らかってばかりで」
「奥様。ご主人はチャットを利用されてました。ローティーンのアイドルを相手にする、40才のプロダクション社長。奥様は、ご主人が億ションへ逝った目的を御存知?」
「ナンのコトだか」
「度重なる社名変更と引越し。未だ、ご主人をかばうんですか?」
「夫と結婚して22年。家族だったの。簡単に見捨てられない。カウンセリングで辞めると約束もさせた。でも、彼は止めなかったの…ソレでも、誓ってくれたわ。娘には触らないと」
「ご主人はチャットで犯人と知り合った。少女だと思って会う約束をし、現場の億ションに誘き出された…ご主人のPCを見ましたね?そして、小児性愛者のご主人をかばってきた。でも、ソレは殺人犯を庇うのと同じコトなの」
美魔女は、真正面からミユリさんを見据える。
「話はおしまい。もう帰って」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ジャドーのラボ。ヲタッキーズのふたりがルイナに話しかける。
「10分間黙ったママょルイナ」
「考えてるの」
「私達には見分けがつくわ。方程式を解く時のルイナの顔と、友達を心配する時の顔の違いがね。テリィたんのコトを考えてたでしょ?」
「半分YES。でも、残り半分は私自身のコトょ。テリィたんの夢が壊れた瞬間、私は喜んだ…最低女子ょ」
思わず失笑スルヲタッキーズ。
「ソレは貴女がテリィたんを心配している証拠じゃないの。ねぇ"推し"との正しいお付き合いは、天才ルイナにも少し難し過ぎたかな?」
エアリとマリレにウィンクされルイナに笑顔が戻る。
「はい!データの解析が終わったわ!犯人の標的は…恐らく性犯罪者ね。ソレも小児性愛者限定ょ。近隣分析の変数をティーンエイジャーの興味に変えてみたら…予測される現場は学校、映画館、ショッピングモール、ゲーセン」
「全部お子ちゃまヲタクが好きな場所ばかりね」
ルイナはうなずく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ほぼ同時刻。捜査本部も同じ結論に達する。
「警部!分りました。3人が訪れたチャットです。殺害された日に、同一人物とチャットしてます。相手のハンドルネームは"南極1号Z"」
「げ。"南極1号Z"は、7才の少女のフリしてるじゃないの?アクセス元は?」
「神田山本町の防犯カメラのないネカフェ。支払いは現金です」
「うーんココまで来て行き止まり?」
「ウチのITチームにチャットルームの解析をさせてますが難航して…とりあえず、去年の秋まで遡ってますが」
「え。去年から現れてたの?」
「つい3ヶ月前です」
「今になって殺害におよんだ理由は?」
「不明ですが、容疑者は特定。ブレダ・マクリ。IPアドレスを追跡しました」
「ソレで?」
「プロファイルとも一致します。娘が性犯罪被害に遭い自殺してる。妻の仕事は住宅関係で、不動産情報を入手可能です」
「ドンピシャだわ!連行して!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
裏アキバにある、芳林パークのミニサッカー場。
サッカーキッズがシュート、得点!ハイタッチ。
「パパ!今の見た?」
「見たぞ!やったな…あ、もしもし?」
「…いたぞ。アイツだ」
スマホに話し込む男に小走りで近寄る刑事達。
「ブレダ・マクリ。万世橋警察署だ。話がある」
「え。何?」
「"南極1号Z"に聞き覚えがアルか?」
サッカーフィールドから怪訝な顔で見る息子。
「両手を後ろに回せ」
「誤解だ!我々は警察と同じ正義の側にいる!」
「どんな正義だょ?」
「子供の前で手錠は…説明させてくれ!」
「わかった。署で聞く。事情聴取としてな」
父親が手錠をかけられ呆然とする息子。
チーム全員もゲームをヤメて目撃スルw
「ママに電話して弁護士を呼んでくれ!」
第3章 変態バスターズ
万世橋警察署でブレダ・マクリの取調べが始まる。
「お前が"南極1号Z"だな?」
「確かに私のハンドルネームだ」
「7才の売春少女を装い、小児性愛者を釣り歩いてるな?」
「チョイ待ち。私の容疑は?」
「殺人教唆。スコト・テルマ、ジョナ・ホルトの2名のTOが"南極1号Z"と接触後、指定された億ションに誘き出され殺されてる。その際のお前とのチャットログを読んで聞かせてやろう。"今どんな格好?""知りたいの?バカね""会いたいな""パパとママはお出掛けょ億ションでオメカシして待ってる(爆)""今から行くぜベイベ"…」
「もう十分だっ!ただ、ソレは私じゃない!確かに"南極1号Z"だが、違うんだ!」
「黙れ。少なくとも3ヶ月前から、この"TO殺し"は連続している」
「…警察は、いつも何もわかってナイ」
「わかってる!警察はワカッテルぞ!お前は、死んだ娘さんの復讐をしてルンだろう?」
「だから…ソレが重大な間違いナンだ」
「だが、お前は娘さんを守れなかった!」
「違う!違う!違う!守れなかったのはアンタら警察だ!アンタら警察が、ロクでもナイ小児性愛者を野放しにスルからだ!娘が殺されて、私は小児性愛者から子供を守る"変態バスターズ"を結成し、自ら変態を装いチャットで奴等を釣り上げては警察に突き出してルンだ!」
「ナンだって?!」
「ウソだと思ったら、警視庁のサイバー少年課に問い合わせろ。所轄だ、本庁だ、と縦割りやる前に!」
「…もしもし。生活安全局を。"変態バスターズ"って…あぁ!しかし、何てこった!」
「きっと"変態バスターズ"の誰かが、私のハンドルネームを利用したんだ!私は、殺してナイ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「あぁアナタ!」
「パパ!」
「お前達、もう大丈夫だ。誤解。全て警察の恐ろしい誤解だったンだ!」
万世橋の捜査本部で、家族の再会劇が演じられるw
「でも、アナタ!アナタは殺人事件の容疑者だって…」
「冤罪…いや、警察の完全な捜査ミスなんだ」
「でも、パパが手錠をかけられるトコロ、友達もコーチもサッカーママ達も、みんなが見てたンだよっ!」
実は、娘の死後、ブレダ・マクリの家庭は崩壊していたのだが、シタタカな家族はその片鱗スラ見せないw
「警察が!アンタ達、警察が"正しく"仕事をしてさえいれば、娘は未だ生きていた!」
捜査本部からの帰路、閉まり行くEVドアの隙間から、ムダに金髪の妻がラギィを指差す。動画に撮る息子w
誤認逮捕のお詫びも兼ね、EVまで見送りに来たラギィ警部達も仕方なく、ドアが閉まるまで平身低頭スル←
「ヤレヤレ、やっちまったわ。コレで、あのガキの YouTuber デビューを華々しく飾ってしまったw」
「警部!追い討ちをかけるようで恐縮ですが、お引き取り願ったブレダ・マクリおよび"変態バスターズ"の裏が取れました!ブレダは3ヶ月前、被害者を装い、変態に警告レターを送ってます」
「どんな?」
「カウンセリングを受けなければ、小児性癖を家族や会社にバラすと脅してます。ただし、金品の要求はナシ。また、3件目のピクス・サント殺害時には、完全なアリバイがアリます…意外に正義の人なのカモ」
「ヤメて!全くアンタ達は、ナンでこーゆー時だけ調べが速いのwねぇ前に頼んだ犯人の億ション選びの基準ってわかった?他に何か"私に優しい情報"はナイの?」
このタイミングで、捜査本部に救いの声。ルイナがジャドー司令部から会議アプリで話に割り込んだのだ。
「ラギィ!犯人が億ションを選ぶ基準は、億ションそのものじゃなかったの!」
「え。ルイナ?何かわかった?」
「見えて来た。犯人が選んでたのは"立地"ょ。風営法は知ってるわょね?」
「えぇ。風営法の保全対象施設に相当スル裏アキバにある芳林小学校から70m以内の対象地域には、萌え系の店舗の営業許可は出してナイわ」
「ホットゾーンと殺人現場3ヵ所を地図に図式化してみた。問題の億ションは、3ヵ所ともホットゾーンのド真ん中ょ」
「つまり、ソコを捜査しろと?でも、秋葉原全域のホットゾーンをカバーするには、警官が何人いても足りないわ。不可能ょ」
「…ソレが犯人のメッセージなのかしら?つまり、性犯罪は止める方法はナイというコト?」
「犯人自身がヤメる以外は…」
ソコへ若い刑事が駆け込んで来る!
「ウェブ管理会社から通報です!犯人が動画をUPしました!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
動画の中で、男は殺風景な場所でイスに座らされ、恐怖に歪んだ形相を浮かべている…が、未だ生きてるw
「俺は何もしてねぇ!推しに会いに来ただけだ。俺はピクス・サント。9才の微少女とのセックスが目的で来た。コレが初めてじゃない」
死ぬ前の最後の言葉がコレとは…男としてどーなの?
「ヤタラと目線が不自然だわ」
「恐らくセリフを読まされてます。しかも、読む前に激しく暴行を加えられた痕跡がアル」
「死体に刻まれたアザはコレだったのね」
さらに動画は続く。
「今まで30人以上の微少女と会った。彼女達とご家族に心から許しを乞いたい…」
ココでITチームが動画を静止。
「この先は、異次元人犯罪お約束の心臓停止シーンです。動画は、自殺や処刑専門のダークウェブにUPされました。匿名性が高く追跡は困難」
「UPされたのはいつ?」
「今朝です。2件目ジャレ・ホルトの告解動画も同時にUPされてます」
「確かピクス・サントは3件目だったわね?1件目のスコト・テルマだけ動画がナイわ。何で?…ねぇホントに追跡は無理なの?」
「匿名性の高いダークウェブで、しかも追跡防止プログラムを使用しています。フレームがヤタラとヲタクで未だ破れません。もしかしたら、我々の手には負えないカモ…」
ITチームから泣きが入り、ラギィは決断スル。
「OK。ヲタクなハッカーの出番ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「オニオンルーティングだわ」
スク水少女…うーん既にアラサーかw何て呼べば良いんだ?スク水アラサー?マニアックだょ萌えるけど←
「匿名性を維持したママ、データ通信を可能にスル手法ょ。封筒の中に封筒を入れて、手紙を投函スル感じ?受け取った人は封筒の中の封筒を次々と転送して行くワケ。タマネギの皮のように暗号化が次々と重なって…結局、追跡は困難に」
「でも、スピアなら解読出来ルンでしょ?コレが追えれば喜ぶわ、テリィたんが」←
「そ、そぉかしら?!OK。前にテリィたんの仕事を手伝った時に描いた"ヲタク専用の追跡アルゴリズム"を試してみるわ。元カノ会長の面目躍如よっ!」
スピアはスゴ腕のサイバー屋で、早い話がハッカーなんだけど僕の元カノどころか付き合ったコトもナイ。
あと彼女はキャバ嬢の頃からスク水専門で、今回もジャージ姿で出頭?したが、その下は恐らくスク水だ←
「ルイナ。聞いてる?」
スピアはスゴい勢いでキーボードを叩きながら、コーヒーブレイクのノリで話しかける。
答えは、捜査本部とは会議アプリで常時オンラインのジャドー司令部から即返って来る。
「Hello。ルイナょ。今、ジャドーのラボにいるわ」
「この前は、テリィたんの元カノ会に入会してくれてthanks。カレの宇宙への翼、折れかけてるけど、貴女、ナントカ出来ナイの?」
「…手段がわからないのょ。太平洋の向こう岸の国が、威信をかけて日本のSPSプロジェクトを潰しにかかってる。そのために、先ず彼の国は、昔取った杵柄で第3新東京電力の弱体化を狙った。お陰でTEPCO-Ⅲは、国が送り込んだ会長さん以下全員のクビが飛んで、もうガタガタょ。コレはもう国家レベルの陰謀。とても、私の手には…でも、誰かが子供の頃からの無邪気な夢を砕かれ、萌え尽きた星屑になるのも見てられないし」
猛スピードで打ち込みつつ顔だけニヤリと笑うスピア。
「ルイナ。貴女、だんだんテリィたんに似て来たね…首相官邸の史上最年少アドバイザーなんでしょ?太平洋の向こう岸の国で貴女のカウンターパートは誰?」
ルイナはキョトンとスル。タタみ掛けるルイナ。
「ねぇカレが宇宙に行ってしまうとアタシだって寂しい。でも、テリィたんにはテリィたんらしくいて欲しい。そう思わない?そのために、貴女が出来るコトは何?」
「スピア…」
「思い出して。元カノ会のポリシーを」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「Hello。ルイナょ。今、ワシントンは何時?ハーバードを卒業して以来ね。ところで、お話ししておきたいコトがアルの…」
第4章 シリアルキラーの正体
引き続き、万世橋の捜査本部。
「警部。犯行の間隔が狭まっています。最初は6週間。次は10日間、その次は12時間です」
「スピアは追跡してくれてる?」
「はい。追跡アルゴリズムをプログラムしてくれました。ただし、1つ問題がありまして…」
「何?」
「犯人がアップロード中でないと、アクセス元をたどれナイそうです」
「え。次の犯行を待てってコト?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ヒット!犯人がアクセスして来た!」
スピアの叫び声と同時に、オペレーターがダークウェブにUPされた動画を本部のメインモニターに流す。
「…俺の名はヘンダ。15才の少女とセックスをしに秋葉原へ来た。俺は、既に20才の頃から数えて40人以上の微少女と…」
ヤタラ生活感の無い、モデルハウスのような室内で、イスに縛られたアラサー男が息も絶え絶えで告解中w
「…俺は、運命さえ未だ知らないイタイケな瞳の微少女達の人生を台無しにし…」
「どうなの?スピア、追えてる?」
「もう少し…でも、妙だわ。転送ファイルのサイズが増え続けてる?チェックサムも絶えず変わってるし。もしかして…コレはライブだわっ!生配信中よっ!彼は、未だ生きてる!」
「アクセスしてる場所は?」
「サーバーに侵入して、リンク追跡でソケットを探すわ。ちょっと待って…神田元佐久間町!」
「全員出動!」
捜査本部は30秒でモヌケの殻。虚しく動画が流れる。
「…今はただ微少女達に謝りたい。俺のせいで、無垢な彼女達が心に傷を…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田元佐久間町は、今の外神田5丁目で中央通りから少し入ったトコロ、昔からの中小ビルが立ち並ぶ界隈。
いわゆる"アキバ"のハズレで、夕方には洗面器を抱え銭湯に急ぐ町の人…をかき分けパトカー続々到着!
上空にジャドーの銭湯…じゃなかった、戦闘ヘリw
「ヲタッキーズのマリレとエアリは裏に回って!私達は正面から突入スル!マスターキー!」
現場は、古い雑居ビルで恐らく昭和の頃は事務所だった路面の玄関は施錠されている。
若い警官がラギィ警部の命令にうなずき、ショットガンでドアノブを上から撃ち抜くw
「万世橋警察署!万世橋警察署!動くな!両手を頭の上へ!」
「キャー!アンタ達、誰?警察を呼ぶわよっ!」
「ママー!怖いよー!」
手に手に拳銃を目線で構えたラギィ警部と警官隊が突入スルと…TVを見ながら御煎餅を食べてる母と息子←
「家には…2人?」
「そうょ。貴女達、万世橋警察署?マジ?」
「え。えぇまぁソッチの方から来ました…ネットは接続中ですか?」
「いいえ。TVは地上波。受信料は払ってナイけど」
「すみません。家を間違えました。ゴメンナサイ!」
「ゴメンナサイって…ドアノブが木っ端微塵だわw」
「補償の方は必ず」
制服警官が気色悪い笑顔でピーポ君ステッカーを手渡すが、息子は怖がり受け取らズ、ママにヘバりつくw
見たトコロ、小学校の高学年だが…
「犯人にヤラレタわ!」
「無線ルータに細工されたようです」
「失礼しました…え。何?」
悲劇は終わらないw
ヘンダと名乗った変態?の画像が途絶w
しかも、最後に恐ろしい断末魔を残ス…
「警部、問題発生です!ヘンダが変だ!」←
「どうなってるの?映像が途絶したわ。死んだの?」
「警部、ルイナょ。犯人は近くにいる。無線LANの使える近くの"売り億ション"を探して!」
「スピア、聞こえた?」
「今、調べてる!あった。蔵前橋通りを渡った地下アイドル通り沿い。"Akibaガーデン&タワーズ"北棟37Fのペントハウス!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
最上階は専用プールもあるメゾネットタイプ。
中央のモデルハウスへと飛び込むラギィ警部!
「万世橋警察署!突入!」
突入も何も、ドアは開けっ放しのオープンハウスで、拳銃を目線で構えた警官隊が土足で続々と踏み込む。
「バスルーム、クリア!」
「キッチン、クリア!」
「…警部。ダイニングです」
毛足の長い高級カーペットに馴染まない粗末なイス。
座らされたママ、地獄を見たかのような形相の死体。
「あぁ!遅かったわ!」
「くそ。死んでます」
「忘れ物は…Wi-Fiルータと三脚に載った使い捨てスマホ。カメラ代わりですね」
ラギィ警部は八つ当たり←
「ジャドーの戦闘ヘリが気づかれたのよっ!次は、もっと静かにやりましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
全員、万世橋の捜査本部に引き上げ。
「4人目の被害者は、ウデル・ヘンダ。32才。自称ハッカーの板金工です。1ヶ月前に小児性愛者サイト"小学生ブラジャー同盟"のチャットルームで"南極1号Z"と接触した形跡がアリます」
「この段階で、犯人は既にブレダ・マクリのアカウントを乗っ取り、PCファイルにも侵入していた模様」
「Wi-Fiルータを売った店主に拠れば、購入は現金、人相は記憶にナイと言っています」
「警部!"変態バスターズ"の名簿とチャットログを押収しました!」
「え。見せて」
「ソレが…ハンドルネームとネットスラングの大洪水で、我々には全くお手上げです」
ココで、ルイナが食いつく(アプリ経由でw)!
「ソレ、ハンドルネームより、チャットの内容を解析すれば良いと思わない?日常会話と同じで、チャットの言葉や構文には、話し手の個性が出る。ソレを統計言語学を使えば解析出来るわ!」
「そぉよ!その通りだわ…って何言ってるのか凡人には意味不明w」
「子供のネックレス作りをイメージして!ビーズを糸に通す時、その子のセンスや個性が出るでしょ?ソレがチャットなら、描き手の特徴パターンとなって浮き出るワケ」
「文章を比較するだけで良いの?」
「YES。犯人のチャットが、犯人自身を追い詰める。チャットが命取りなの。被害者も…そして、犯人も」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ソッチはどーなの?ルイナ」
「あ。ミユリ姉様wどうやら、漸近的組合せ論が有効みたいなの。ちょっと試してみるわ」
「ジャドーのラボは、貴女にとっては最高のオフィス環境ね」
「姉様、スピアです。ねぇもしも、あくまで、もしもですけど、テリィたんの宇宙行きが復活したら…やっぱり姉様は寂しい?」
「ソレは…実は予想していたより、かなり辛くなりそうょ」
「そ、そう…でも、テリィたんは帰って来るわ。姉様も元気出して」
「そうね。ルイナ、貴女から借りた望遠鏡もあるし。スピアもありがとう。じゃ切るわね」
ミユリさんがオフラインになったのを慎重に確認してから交わされた、元カノ会長と会員のサエない会話←
「あぁ私達って、正真正銘のおバカさんw」
「全くだわ。またまたミユリ姉様の独り勝ちじゃナイの。ヤんなっちゃう」
「つまるトコロ、テリィたんがソレを望んでるワケょw仕方ナイわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
捜査本部。元カノ会長&会員がアプリで報告w
「ラギィ警部、おまたせ。解析結果が出たわ。犯人とメンバーのチャットを比較してみた。5%以内の誤差で近似値を特定した」
「ルイナ。結論からお願い」
「解析結果によるとブレダ・マクリょ」
「でも、彼にはアリバイがあるの」
「だ・か・ら!完全な一致じゃないの。5%の誤差がアル。ねぇペットって、飼い主に似るでしょ?家族も同居で暮らしていると、考え方や話し方が似る傾向がアルの」
「え。ブレダ・マクリの家族?…確かムダに金髪にしてる妻は、EVのドアが締まりかける時、私に悪態ついたわ。息子はソレを動画に撮ってたしw」
「その動画のお陰で、息子は今やYouTuber。でも、悪態ついた妻は明らかに激情型。あのね。今回の犯人は、かなり内向的。そして、冷静」
「となると…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ブレダ・マクリの一家は、神田山本町にアル古いマンションに住んでいる。
家族の倍以上の人間が詰め掛けたダイニングは、文字通り立錐の余地ナシw
「コレは君のPCだょね?秋葉原在住の小児性愛者のリストとチャットログのファイルがアルけど」
テーブル上の息子のPCにデータを示すラギィ警部。
息子は憮然とした顔でうつむきブレダは激昂スルw
「コレは…私のPCにあったファイルだ!お前…パパのPCからデータを抜いたのか?」
「ねぇこのリストの中から、もう4人が殺されたわ。知ってるコトを話して欲しいの」
「警部さんの質問にお応えして」
傍らの母親が息子の肩を抱きしめる。
「…僕は殺してない」
「じゃ誰?復讐したかったのょね?実の妹が被害に遭えば、誰でもそう思う。私だって同じ。殺したいほど憎いわ」
激しくうなずく息子。
「でも、復讐で人を殺せば貴方も犯人と同じ。同じになりたい?」
激しく首を振る息子。
「あんなコトが起きるナンて思わなかった。まさか、殺されるナンて!」
「何をしたの?教えて」
「小児性愛者による犯罪被害者の会のチャットで知り合った人がイル。本名は知らないけどwでも、僕の話を聞いてくれたンだ!」
「なぜパパやママに話してくれなかったの?」
「無駄だろ?パパは、バスター気取りで変態探しに夢中。ママは、死んだ妹の部屋にこもってボンヤリしてる。誰も僕の気持ちをわかってナイ。僕は、幸せだった家族を愛してた。でも、妹が死んだら、妹と一緒にパパもママも死んだ。家族全員が死んでしまったンだょ!」
「…」
「何を話したのかを教えて」
「"変態バスターズ"のコトだょ。パパが、犯人向けに無意味なカウンセリングを続けてるコトとかさ」
「無意味…」
頭を抱える父親。
「で、バスターズのリストを渡したの?」
「こんなコトになるなんて。警部さん、ホントにゴメンナサイ!」
「良く話してくれたわね。ありがとう、私達と一緒に妹さんの仇を討とう?」
ラギィの言葉に、息子はワッと泣き出す。
母親が抱き締めソレを父親が抱きしめる…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「感動の家族再生物語だったけど…またまた捜査は振り出しだわw」
「えっと、実は…ハンドルネームとチャット構文からの追跡も行き詰まったし」
「よしてょ天才ルイナもお手上げなの?」
「ちょっと変数をイジらせて」
「ムーンライトセレナーダー!何かアル?貴女が秋葉原、最後の希望だけど」
ムーンライトセレナーダーは、僕の推しミユリさんがスーパーヒロインに変身した姿だ。
実は、当初は悪の女幹部で黒だったけど、最近白セパレートのヘソ出しコスプレに変更←
ジャドー司令部から捜査会議にアプリで参戦中。
「さっきの息子さん、小児性愛者にカウンセリングは無意味って逝ってなかった?私、実は同じセリフをエレアから聞かされたけど」
「エレア?1人目の被害者の奥さん?元地下アイドルだっけ?」
「YES。そして、夫が小児性愛者で自分の娘に手を出してる…」
「うーん怪しいわね。確かに1人目だけ告白画像がナイし」
「告白させる必要がナイのょ。既に事実を知っているから…」
「でも、ソレだと2人目以降の殺害の動機が弱いわ」
「夫を殺して正気を失い、夫と同じ小児性愛者がネットにゴロゴロいることを知り、ソレを許す秋葉原への憎しみを抱いた…」
「うーん秋葉原発のシリアルキラーの誕生か。ソレょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部は全力稼働だ。
「シリアルキラーとなったエレアは、3ヶ月前から不動産業者と頻繁に連絡をとっています!」
「警部。業者の話では、彼女は引っ越しを考えていると仄めかす一方、偽名まで使って億ションの問い合わせを繰り返してます」
「今、エレアは何処に?」
「聞き込みチームからの情報では、今日は母親を病院に連れて行くとかで外出したそうです!」
ラギィ警部はメッチャ大きな音で舌打ちスルw
「マズい!次の小児性愛者を呼び出してるわw今、秋葉原で売り出し中の億ションは?」
「諸物価高騰の折、100件ほどで絞り切れません!」
「ルイナを呼んで!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
もちろん、ジャドーのラボもフルスロットルだw
「さぁエレアが次に狙う億ションを100件の中から選び出すわょ!エレアが億ションを選ぶクライテリアにアップロード用の無線LAN電波の強さを加えたアルゴリズムを描くわ。後は腕利きハッカーが要るけど…スピア?スピアは何処?未だ万世橋なの?」
「さっきから地下ゲーセンに"ルイナの古い友人"って言い張るスク水女子が押し掛けてますが…」
「連れて来て!大至急!」
再び、スゴい勢いでキーボードを叩き始めたルイナにムーンライトセレナーダーがソッと耳打ち。
「もう間違えナイでね」
「OK、姉様。次は私が発信元までたどるわ」
「大丈夫?」
「既に周辺のネット環境は調査済み。Wi-Fiルータの場所もジャドーがリアルタイムで抑えてる」
「データが多過ぎるでしょ?」
「エレアは、風営法の対象地域から億ションを選んでる。だから、先ず売り億ションのマッピング。次にWi-Fiの範囲。最後に風営法ホットゾーン。この3つの重なるエリア。コレで対象を特定出来るハズ。あのね、姉様。今、大事なのは"立地"ょ"立地"。ねぇテリィたんから聞いてないの?」
ミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは苦笑い。
「了解。特定出来たら教えて。即、突入ょ。私も逝くから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「地下駐車場にエレアの車です」
神田金澤町のタワマン。サイレンを鳴らさズにパトカーやSUVが続々と到着、警官や特殊部隊を吐き出す。
「チームαから万世橋!包囲完了!」
「OK。一気に最上階まで上がって突入ょ!」
「警部!ヲタッキーズです!」
警官が指差す先の青空に黒点。最上階へ飛び込む!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ぎゃー!」
図太い男の声の断末魔w
「ヤメろ!ヤメてくれ!俺に何を言わせたい?」
「全てよっ!」
「俺の、俺の心臓に触るなー!」
ムーンライトセレナーダーがキッチンに踏み込むと、イスに座った男の胸に…全身黒タイツに仮面の女が手を突っ込んでいる?肉体の中に手首がメリ込んでる←
「エアリ!マリレ!キッチンに回って!」
「ムーンライトセレナーダー!少しでも近づいたら、この変態を殺す」
「氷の指が…氷の指が俺の心臓を掴んでる!助けてくれ!ムーンライトセレナーダー!」
恐怖に顔面蒼白の変態野郎。
狂気に満ちたエレアの横顔w
「相手の心臓を鷲掴み?波動による心臓停止じゃナイの?…エレア。誰も何もしないわ。落ち着いて話をしましょう」
「話すコトなんかナイわ」
「ご主人は、実の娘スザヌさんに手を出した」
「YES。最初は小学生アイドルだった私。でも、私は、結婚に持ち込めた。そして、幼妻となった私と約束したの。娘が出来ても手は出さないと」
「だから、娘さんの為に、コレで終わりにしよう?その変態は無関係だし」
「でも、私がこうやって微少女達を守らないと!」
「ダメょ!」
いきなりステーキ…じゃなかった、イキナリ経験値の高いスーパーファイトが始まる!
若手ヒロイン達のようなスピードとパワーはナイが、遥かに妖艶な技の応酬の果てに…
ガックリと膝をつくエレア。
「撃ちなさい!ムーンライトセレナーダー、私を"雷キネシス"で撃ち抜いて、全てを終わりにして!」
「撃てないわ!」
「ソレが貴女の命取りサ!死ね!」
目にも止まらヌ早さで、エレアの手首がムーンライトセレナーダーに伸び…
腹パンチ?いや、その手首がムーンライトセレナーダーのお腹にメリ込むw
「ぎゃあああっ!」
エレアは狙った心臓はハズすが胃袋を鷲掴み!悶絶技ストマッククローをキメる!
次の瞬間、ふたりのスーパーヒロインは共に絶叫し、電光と火花に包み込まれるw
火焔が晴れフロアに大の字でピクつくのは…エレア。
「ムーンライトセレナーダー、恐るべし。私、負けましたわ(回文)」
「エレア。その変態の罪は明らかょ。証拠があるから逮捕も出来る。彼は、蔵前橋重刑務所で最悪の目に遭うわ。小児性愛者が塀の中でドンな目に遭うか知ってる?」
「未だ小学生だった私を夫は…コレはスーパーパワーを持って生まれた私の使命。私がやらなければ、コイツらは秋葉原で野放しなの…」
大の字に開いた四肢をピクつかせ、泣き濡れるエレア。
ようやく、ラギィ警部率いる警官隊とジャドーの特殊部隊が到着、直ちにM-24型柄付き手榴弾が投擲され、現場一帯には白いサイキック抑制蒸気が立ち込める。
ガスマスクをした警官隊が変態を立たせる。
「大丈夫か?」
「もう少しで殺されるトコロだった!ありがとう、ムーンライトセレナーダー!」
「黙れ!立て!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜。僕は、ジャドーのラボにルイナを訪れる。
「ルイナ。NASAから連絡があって…我が国の宇宙発電衛星プロジェクトは再起動になった。僕は、宇宙へ逝く」
ルイナは立ち上がり、僕の胸の中に飛び込んで来る。
「良かった!おめでとう、テリィたん!」
「…雲の上の最高司令官から、想像を絶する圧力があったらしい。何でも発作汗が…」
「発作汗は重症化コロナ。補佐官でしょ?ホワイトハウスの首席補佐官が、たまたまハーバードの同窓だったのを思い出して」
「ホワイトハウスの補佐官に電話した?仲良し?」
「仲良し?私は当時10才で彼女達とは、かなーり年の差があったけど」
「彼女"達"?」
「あ。実はオフレコだけど、途中から大統領が電話に出て来て…彼女も同窓ょ」←
「コレはオンレコだけど、どーやら僕はルイナには感謝してもし切れないよーだ」
「私は、何もしてないわ。間違いを指摘しただけ。全ては地球の気候変動を食い止めるタメょ」
「僕が宇宙へ行くとCO2が減るって?」
「まぁそーゆーコトになるわねクスクス」
僕がルイナの瞳をジッと見詰めると、彼女は上目遣いで僕を見上げ、彼女なりの"勝負角"をキメて来る。
「ルイナは、僕の宇宙逝きを反対だったのに、立派な行動をしてくれた」
「借りを返しただけ。覚えてる?私が初めて秋葉原に来た時のコト」
「…僕は、いろんなコトを逝ったな」
「こう言ったの。"君がヲタクの海へと飛び込むのを僕は見届ける"」
「そうだっけ」
「テリィたん。私にメイド服を着せたのは貴方ょ」
僕は、溜め息をつく。
「覚えておいてくれ。いつも、旅立つ方が見送るより辛い。このアキバでもね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"死海ダイバー"。ソレはジャドーの海底部隊。その秘密基地は、神田リバー沿いの地下にアル。
僕は、その前部に装備されたロケット機"死海1"で、軌道上の宇宙発電所に"赴任"スル予定だ。
「テリィたん、コレを」
見送りに来たラギィ警部から万世橋警察署の青いキャップを手渡される。"AKIBA P.D."のロゴ入りだょw
「余分に用意したから、お仲間にも渡して。宇宙人がいたら、宇宙人にもね(コレが所轄の意地よっw)」
さらに、ジャドーのレイカ司令官、マデラ司令官代理、ルイナ、ヲタッキーズのみんなも見送ってくれる。
「テリィたん。貴方はヲタクだけど、いつも正しかったわ」
「みんなで空を見上げてるから」
「みんな thanks」
「気をつけて」
「みんなも元気で」
「寂しくなったら電話スル。電話代はジャドー持ちょ」
「テリィ様。艦までお見送りします」
みんなと握手し、最後のタラップはムーンライトセレナーダーに変身したミユリさんと手をつないで降りる。
「次にお会いスル時は、宇宙服ですね」
「ニュートンはりんご。僕は、ムーンライトセレナーダーを通して新しいアキバを見た。視点が変われば、世界を見る目も変わる。アキバを宇宙から見つめ直すつもりさ」
「気をつけて」
キス。
「テリィたんをお預かりします。ムーンライトセレナーダー」
「艦長。私のTOをよろしくお願いします」
「了解。東京湾までですが」
舷側で出迎えたのは"死海ダイバー"のルータ艦長。
彼から渡されたサングラスをかけ僕はユックリ歩く。
発射台へと向かう宇宙飛行士みたいにね。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「もうすぐよっ!」
御屋敷は、高層タワーの最上階にあるので"潜り酒場"からでも、東京湾の海面が遠く煌めくのが見える。
"死海ダイバー"は、既に東京湾の海中で所定の位置について"死海1"の発進スタンバイ。全て GOだ。
「鳥肌がたつわね」
「私もょ」
「" AKIBA P.D."のキャップを被ってるかしら」
「うーん宇宙服とのコーデが微妙」←
みんなが遠く陽光に光る東京湾を見詰めてる。
「テリィたんの宇宙服姿、やっぱり見たくない」
「いまさら何を言ってるの?ヲタクの夢がリアルで実現する瞬間ょ?滅多に見られないわ」
「ミユリ姉様は?早く!見逃すわょ?」
ミユリさんは、カウンターの中からカクテルグラスを載せたお盆を持って窓際にやって来る。
「はい。乾杯ょ。御屋敷のオゴリです」
「わぁ!シャンパン?」
「フライト直前の宇宙飛行士に敬意を表し、テリィ様専用のほとんどノンアルなオリジナルカクテルです」
みんなが笑う。
「乾杯!テリィたんに!」
「無事軌道に乗れますように」
「太陽風を背に受けて!」
その瞬間、光る海面に水飛沫が上がり、白い雲を一直線に噴いて蒼穹の空へと吸い込まれて逝く"死海1"!
「飛べ!テリィたん!」
「星の海の果てまで飛べぇ!」
「いってらっしゃいませ、テリィ様」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"小児性愛者"をテーマに、小児性愛者のトップヲタク達、トラウマを抱えた異次元人スーパーヒロイン、シリアルキラーを追う警部、防衛組織の天才、娘を殺されて変態と戦う一家、ストリート系のスゴ腕サイバー屋、秘密組織の潜水艦長などが登場しました。
さらに、戦後日米関係を絡ませた主人公の宇宙行き、主人公の宇宙行きをめぐるヒロイン達の心模様などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを第6波コロナがピークアウトしつつある秋葉原に当てはめて展開しています。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。