流星と世界樹
蒼いはるかな宇宙の果て。
カラッカラに乾いた、砂漠の星がありました。
その星には、人や動物はまったくおらず、たった一本の大木が、裸の大地にポツンと立っているだけでした。
しかし、その大木ですら、ついに枯れて朽ち果てようとしています。
「ああ、昔はここも、人々の笑い声があふれ、鳥が歌い、獣たちが遊ぶ住み良い星だったのに」
大木は、深いため息をつきながらそうつぶやきました。
そう、その昔、この木がわさわさと葉を繁らせ、たわわに甘い実をつけていた頃は、ここはとても平和で豊かな星だったのです。
彼の枝にはたくさんの小鳥たちが翼を休め、巣を作り、虚には小さな生き物たちが住みついていました。そして、木陰では獣たちが憩い、人はみな、助け合って仲良く暮らしていました。
しかし、増え過ぎた人々は、いつしかとても強欲になり、資源や土地を奪い合って、大きな戦争を引き起こしたのです。
そして、その戦争のせいで、この小さな星は焼き尽くされ、あとに残ったのは、この大木一本だけでした。
「神様、どうかわたしの最後の願いを叶えてください。朽ち果てるその前に、幸せな夢を見たいのです。わたしの側で人々が笑い、鳥が歌い、獣たちが遊んでいた、あの頃の夢を……」
今まさに、永遠の眠りにつこうとしている大木は、流れ星がいくつも流れる夜、夜空を仰いで祈りました。
その時、夜空の真ん中を、銀色に瞬く大きな星が、しゃらんと流れました。
そして、その後に続くように、たくさんのきらめく星屑が、この小さな星にきらきらしゃららと降り注いだのです。
とめどなく降りしきる星屑は、まばゆく輝きながら、ふわふわと優しく大木の枝にとまります。
「わぁ! 何だこれは!」
不思議なことに、星屑のとまった枝からは、みずみずしい若葉が次々と芽吹き始め、いつのまにか大木は、葉をたくさん繁らせた、若かりし頃のようなたくましい木に戻っていました。
どこからか鳥が飛んできて、大木の枝に巣を作りました。どこからか動物たちがやってきて、大木の虚の中で暮らしたり、木陰で駆け回るようになりました。そして、人々はみな幸せそうに、彼の下で語らい、日々を大切に生きています。
「わたしは、悪い夢を見ていたようだ。戦争なんて本当はなかったんだ」
……それは、長い長い夢でした。はっと気がつくと、やっぱり大木は一人ぼっちで、彼の目の前には、吹きすさぶ風に砂塵が舞う、荒涼とした大地が広がっているのでした。
「……ああ、やっぱりあっちが夢だったのか……。でも、命が消える前によい夢を見せてもらえたんだ。神様、ありがとうございます」
自分が願ったこととはいえ、残酷な夢に傷つきながらも、大木は、若葉の茂る枝をざわざわと揺らして、天に感謝を捧げました。
「あれっ?」
さっき夢から覚めたはずなのに、大木の枝には未だみずみずしい葉が茂っています! しかも、その葉の間には、きらきらと銀色に輝く星の形をした果実がたわわに実っていたのです。
「うわぁ!」
驚いた木が幹を震わせると、たくさんの星の果実が地面にぼとぼとと落ちました。
不思議なことに、それはみるみる溶けてゆき、清らかな水になって、乾ききった大地を潤しました。
何日か経つと、大木の周りには草花が芽吹き、窪地には小さな湖もできました。
大木が、澄み切った水をたたえたその湖を覗くと、そこには太古の昔見た、とても小さな生き物たちが健気に不器用に泳いでいます。
この星でまた、命の営みが始まったのです。
「ねえキミたち、今度は間違わないように仲良くやっていこうよ」
小さく儚い生き物たちに、大木は優しくそう囁いて、葉っぱでそっと影を作ってやりました。