春休みI
私は、三波の家のベットの上で、ボクシングの生中継を見ながらお菓子を食べていた。結衣ちゃんも部屋に置いてあった少年ジャンプを熱心に読み込んでいた。
「……ねぇ、貴方達?」
そう三波が呼びかけるが本能する声はしない。
今良い所なのだからやめてほしい。テレビでは漢同士が殴り合いを始め、観客が声援をあげていた。今にも倒れそうな二人が先に倒れろとお互いに本気で拳をぶつけ、
「ふぅ……」
「ここ私の家なのよ!!?」
今、黒人の男が腕を掲げ試合の終了のゴングがなった。
急に叫び出した三波にアリスは驚き、涙目ながら謝罪をする。
「す、すみませんわ!……急にお邪魔させてもらまして!」
その姿にはお嬢様というより母親に怒られてションボリする子供のような姿があった
「いえアリスさん、貴方はいいのよ?一応は連絡はもらったし。ただね……」
三波は勘違いだと必死になだめる
「あぁー泣かせたー」
「弱い者いじめはよくない……」
その言葉に三波は更に怒りのボルテージが上昇し、顔を真っ赤にさせる。
「こいつらは!!」
「なんなのよ!!」
「特に都子!!」
「えぇ……別にいいじゃん……」
顔真っ赤にさせて睨んでくる三波にジト目で返し、また新たなポテチの袋を開ける。
あぁー、手がベトベトする。
「よくないわ!!ベットの上でお菓子食べないで!!」
「……ちっ……」
「あなた、舌打ちしたわね!?」
「……ふん……」
しょうがないなと床に座り、ポテチを食べる。むかついたのでバリバリと大袈裟にこぼしながら
その様子に堪忍袋が切れた三波は
「もう許さないわ!!表に出なさい!!」
「いいよ、三波じゃ勝てないだろうけど……」
バチバチと視線をまじ合わせながら今にでも掴みかかろうとする二人。
アリスは焦りながら結衣に止めるように言う。
「あ、あの結衣!二人をと、止めた方がいいんじゃないのかしら!?……」
「えぇ?面白いし、いいんじゃない?」
ダメだこの人、なんでこんな人に魅力を感じたのだろうと思うアリスだった。
勝負は結局つかないまま……というより三波が一方的な展開だったが都子が屈しないでそのまま終わったという感じだ。
「無駄に体力使っちゃたわ……」
「三波が細かいから……」
「あぁ?」
「なに?……」
「ふ、二人ともストップですわ!また一からやり直しですわ!!」
そう言ってアリスは二人の間に入り込む。
「……それもそうね。無駄な事してらんないわ。それで都子、なんでここに今日集まったのよ」
その言葉を待ってました。
ワザと咳をひとはらいし、本題に移る
「今日集まってもらったのは……春休み何をするかについて……」
「「へぇー」」
「えっ?へ、へぇー?」
まるで興味がなさそうに反応をする。
「なに……その反応?」
この反応は意外だった。てっきり運動部だから乗っかってくると思っていたのだが…
「だって今までそう言ってやってきた事なかったじゃん?」
「どっかで遊ぶことはあってもデカい事した事はなかったねー」
んー……なるほど、今までの私が行けなかったのか、どうしようもないな
落ち込んだように顔を暗くさせる私にアリスは
「で、でも!今回都子さんもやる気みたいですし、きょ、協力してもいてもいいんじゃないのかしら?」
「アリス……」
私は思いっきり抱きついた
「ちょ、急に抱きつ!……ちょ、ちょっとどこ触っているのかしら!?」
「ん……いい大きさ」
「そんな事聞いてませんわぁ!!」
言葉ではなんとか言ってるが、表情はなんだか嬉しそうだった。もしかしてアリスはそっち系の人なのだろうか
「ふぅ……」
「あ、終わった感じ?」
「もうお嫁にいけない……」
「乙やな、目ぇつけられたらもう逃げらんないよ」
待て、私は何もそこまでしてない。身体検査の如く身体中を弄っただけである。
これじゃ、いっこうに話が進まない。
「まず、春休みって言ったら何する?」
「「グダグダ」」
おい、やる気あるのか。
「アリスは?あいつらは無視していい」
「えっ?あー、お泊まり会とかお泊まり会とかどうかしら!」
アリスはそれらしいことを言うと三人は驚いた顔をする
「「「おぉー!」」」
箱入り娘だと思っていた娘が、案外乙女だった事に
「じ、実は友達とそういう事したいとは考えていたのですが、何故か人が誰も寄ってこないのでできなかったの!」
どうやら、暗い過去があったらしい。海外から移住し、みため外国人でイケイケな感じだったら誰でも話しかけっずらいだろうな
あー、そうだったのか、なんとも
(((かわいそうに)))
それじゃ、絶対にやんなくちゃなと思った三人は春休みを『アリスちゃん喜ばせたい』の一心で必死に計画していく。
夕暮れごろになると計画はできてきており、紙一面に春休みにこれをしておきたいリストが出来上がってきていた。
「大体、決まってきたわね」
「だねー、後はいつやるけど……あっ、これなんか明日とかどう?」
「いいですね!」
大きく鉛筆で『お泊まり会』が丸が書かれている。
なんとも急な話だが、特に否定する声もないのでそれで決定された
三波は少し悩んだ顔で言う
「気になったんだけどこれ誰の家でする?」
「「三波の家」」
全会一致で三波の家で決定された(アリスはあたふたしている)
「は、はぁー!?そこは公平にジャンケンで決めるでしょ!?」
「だって市内だから何処とも均等に近いし……」
「都子の家だし、いいでしょー」
そうなのだ。私と結衣は違う電車なのだが、私は市内まで三十分。結衣は一時間掛からないくらいで着くからなんともちょうど良いのだが。
「あんたらねぇ……まぁいいわよ。両親どっちも旅行行っちゃてるし」
「「わーい」」
「アリスさんも遠慮せずにきてね?」
「は、はい!お世話にされます!!」
「いつもの口調はどうした……?」
「好きで言ってるので、取り外し可能です!」
衝撃の事実がアリスから放たれたが、まぁしょうがないよね
コンコンコンと部屋がノックされる。三波の家には両親がいないため入って来る人物はわかる。
「いいよー」
三波がそう言うと、入ってきたのは中学生上がったくらいの中学生が入ってきた。
中学生は驚いたように固まる。
「入るよ……って、どうも」
「おぉー……久しぶり健太くん」
彼は三波の弟の健太くん。昔は大人しくて私よりも身長が低かったのだが、すっかり大人になって私は身長を追い越されていた。
「お久しぶりです。姉がいつもお世話になっています」
「健太〜お茶と菓子持ってきて〜」
「分かってるよ、人使い荒いな」
そう言って健太くんは部屋を出て行った。
時代の流れなのか……少し他人行儀に感じた。昔はあんなに懐いていたのにと少し寂しく感じた。
「えっ、あれって弟さんですかしら?」
アリスは興味津々に聞く。
「うんまぁね」
「まぁ……随分と似てるにですね」
「よく言われる〜」
「かわいいよねぇ〜食べちゃいたい……」
ゆ、結衣さん?……それはどう言う意味でおっしゃって?……
「えっ?」
「あー、結衣ってそうゆうとこあるから気にしないであげて」
私は一歩、結衣の知らないものを見た気がした。
「じゃぁなー、また明日、来いよー」
「はい!」
「ん……」
「健太くん明日楽しみにしていてね〜?」
「え、遠慮しときます!」
健太くんは少し退きながら答える。あの後戻ってきての結衣の行動はすごかった。離さないと言わんばかりに隣に座らせてずっと話していた。
「ただいま……って誰もいないか」
家に帰ると静かだった。お父さんはいつもの事で、お母さんは……買い物でも行ったのだろう
私はいつもより少し早く風呂に入ってベットに入る
「暇だな……そうだ」
私は携帯をいじりながら、ラインを開き、電話をかける
『はい、もしもし』
「小野?」
『がたっ!!』
携帯の向こうで大きなものが倒れるような音がする。
「……大丈夫?」
『すいません。急に電話が来たものだったので』
なんかごめん
『それで要件は何ですか?』
「声を聴きたくなった」
『ブフォっっっ!!』
「って言うと思った?」
『な、何ですか!驚かさないで下さいよ!』
「要件なんだけど、今日こんなことがあったんだ……〜」
と今日三波の家で会ったことを話した。
小野は聞き手上手なのかうなずいてくれたり、笑ってくれて、私も楽しくなってドンドン話していくうちに時間は過ぎていき、
「あっ、もうこんな時間」
『もうこんな時間が経ったのですか……』
『「……」』
うってかわって、急に静かになった。特に言うこともなくなったから
「んじゃ、そろそろ寝る……」
『はい、おやすみなさい。よければ明日も何あったか教えてください』
「ん……」
そう約束した。もうダメだ。眠い
私は画面を着って寝た
『み、みやこさん……!き、切ってないです……!!』
「zzz……」
「ダメだ、寝てる……」
「……」
通話切れば切れる。だが、小野は少し考える素振りをして押すのをやめた。
「……まぁ、いいよね」
起きてから切ってなかった事に気付いて少し恥ずかしくなった