君は勉強ができない
五時間目が終了し、今は中間休み。みんなは雑談をしたり、勉強をしている者がいる。
私はというと机に突っ伏していた。気怠そうに横を首を動かすと隣では三波がノートを綺麗に纏めていた。要点に付箋やらマーカーが引かれており遠目で見ても実に見やすいノートが三波の手によって作られている。
三波は意外と几帳面で潔癖症な所がある。そして器用な所がある。
「はぁ……」
それと比べて私はといえば、なんだこのノート。そこには授業中に描かれたまぁまぁ上手い猿の絵が描かれていた。お猿だよっ!
それを見た三波は怪訝な表情になる
「都子、テスト勉強大丈夫なの?」
「……三波に心配されるほどじゃない……」
自分の心配をしたほうがいい。と精一杯の虚勢をはる。
「あぁん?何か言ったかしら?」
「ぼ、暴力反対……!」
運動部のノリやめてください。その拳を振り下ろされたら、私は死んじゃう系なんで
「でも実際この中で一番成績悪いのって都子よね?」
いたいとこを突いてきた結衣ちゃんは。
結衣ちゃんはクラス一位。三波も確か五位ぐらい。で我らが誇る(?)この私が十五位ぐらいだ。いや、決して十五位が悪いわけじゃない。ただ、比較対象が悪すぎるのだ。
「なんで運動部なのに頭がいいの……これじゃ、インキャの特権がない……!」
と不満を漏らし机をポコポコと机を叩く。
するとまるで不思議な物を見るかのように私を見る。私はハムスターじゃないぞ
「じゃぁ、勉強すればいいじゃない?」
「やだ」
「即答ね……」
勉強好きじゃない……文字を書くぐらいだったら私でもできるけど。ていうか家に帰るともうやる気が無くてやらないし。
「どうすればいいんだろうね……」
私は机に溶けていると、三波は哀れむ顔をする。
「勉強すればいい点数取れる力はあるのにもったいないわねぇ……」
それはそうだろう。だからなんか、ぱぱっと頭良くなる方法ないかな…
うーんと頭を唸らせていると結衣ちゃんが何かを思いつく
「……そうだ!勉強会なんてどうかしら?」
「結衣ちゃん……」
「それ名案」
「だよねぇ、これで都子ちゃんは勉強できるし、三波は都子ちゃんのお世話できるしね?」
「な、何よそれ!まるでそれじゃぁ、私が都子のお母さんていうようなものじゃない!!」
三波stop。そこまで誰も言っていない
「まぁ実際お母さんみたいなものじゃない」
うーん、言い得て妙。そういう見方もあるのか。私はお節介好きのあの人かと思った。だって、彼氏もダメ人間間近まで落としてるやつだし。
「諦めも肝心……」
「なんであんたが否定しないのよっ」
いたいっ。
三波は教科書の角でごつんっ!と叩く。三波は予想以上の威力に驚くも、澄まして笑って見せた。私はこんなにも瞳をうるわせているのに。
キンコンカンコーン……
「よーし始めるぞぉ……って佐野咲、どうした?いじめられてたのか?」
はい。そうです、隣の三波という女がいじめてきます
「……って事があった」
私は学校であった事を小野に吐きかけた。いわゆる愚痴だ。
「へぇ、意外ですね都子さんて頭悪かったんですね?」
「むっ。言い方に悪意がある……私はしないだけ」
「はいはい。どっちも変わんないですよ」
やっぱ、こいつは私を馬鹿にしている。
だけどその上でもこいつに頼み込まなきゃいけない事がある。
「それで相談があるんだけど」
「勉強を教えて」
単純な話負けたくないのだ。そして三波にいってやりたいのだ。勉強量が足りないんじゃないのかっと言ってやりたい。私を今突き動かしている原動力はそれだ。復讐心?闘争心そんな感じの
「いいですけど、帰りに図書館でも寄りますか?」
「えぇ……めんどくさい……私の家でいいよ」
すると小野は硬直した。
「……?どうした」
「はっ!い、いえ!で、でもいいですか?その一つ屋根の下で……」
は?屋根の下ってそりゃ家に行くんだからそうでしょ。
「?……小野が何考えてるか分からないけど、私は気にしない」
しばらく小野は悩んだ末に「それはいけない」と理性が勝った。
そうして私と小野の勉強会が始まったのだ。
「……」
「……」
「……小野ここどうするの?」
「あぁ……ここはですね」
小野はわたしにもわかりやすく丁寧に教えてくれる。
「……なるほど。さすが進学校」
「まぁ、これでも成績は悪くない方なので」
生徒会長だろ?なら、学年一位でしょ。悪いも何もないだろうに
そして小野が近づいてきた事で私はある事に気づく
「……」
「?どうかしたんですか?」
「……いい腕してる」
決して細いわけでない、運動をしている引き締まった腕が目の前にあり得ない私は興味津々にその腕を握る。腕から手へと揉み、手はすごくゴツゴツしていて手を合わせてみると私の手よりもすごく大きくて男の手だなと感心する。
「お父さんみたい……」
「……ふぇ?」
「?……どうしたの?」
「きゅ、急に何を言い出すんですか!」
小野は顔を真っ赤にさせ、手を引っ込める。あぁ……
「うるさい。ここ図書館……」
「うぐっ……」
少し息を荒くさせながら座る小野を見て私は
「……もしかして照れた?」
「なっ……!」
小野はまた顔を赤くさせ
「わかりやすい……」
「くぅぅ……!」
先程よりも顔を赤くさせ、けどそれがとても面白いやらで私はついつい笑う。小野は自分の課題へと向き合いシャーペンをガリガリパキパキ言わせながら集中したので私も勉強を始めた
「ふぅ……」
私は背筋を伸ばし、手を伸ばして窓から外を眺める。
外はオレンジ色で染まりつつあり、時間もいい時間になっていた
「終わったんですか?」
「うん、範囲の所は一通り書いた」
小野に確認ついでにノートを見せると小野はみるみる顔をしかめっ面に変え
「……これ読めるんですか?」
「……後でもう一回やるから」
そんなに読めない?私は別に私の字ってカッコいいって言われるし、いいと思うんだけどな……
「じゃぁ行きましょうか」
荷物を纏めて椅子から立ち上がろうとすると、立った勢いで目眩が襲い、思わず後ろに倒れそうになる。
やばいっと思うと誰かが背中から支えてくれた。
「おっと。大丈夫ですか」
「……ありがと大丈夫」
私は小野の顔が近くなり、恥ずかしくなってすぐに起き上がる
「ふふっ」
「……なに」
小野は口に手を押さえてクスッと笑う。
「いや、そういえば私達の出会いもこんな感じじゃなかったでしたっけ?」
小野は少し懐かしそうに問いかける。
私はというと
「……覚えてない」
私は誤魔化すかのようにバックを背負い、さっさと歩く。
「ちょっ……!」