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第二幕 襲撃 Ⅱ

「紫苑、早くクレスを連れて逃げなさい。ここは私がどうにかする。」


 相変わらず泣きながら呆然としている紫苑に声をかける。


「早くしなさい。」


 私の怒鳴り声で、我に返る紫苑。


「紫苑、早くしろ。今しかチャンスが無い。こいつを助けたいのだろう。」

「でも、でも、このままシーリスさんを置いて行くなんて。」

「良いから、早くしなさい。祖力解放した私でも、アリエス相手には時間稼ぎしかできないわ。」

「……でも。」

「お願い、クレスを助けて。」


 私が懇願するような表情で、紫苑を見つめる。

 紫苑は、決心したかのように大きく頷くとクレスを担ぐ。


「紫苑、貴方の力が頼みだわ。今回だけは、貴方がいて良かったわ。鬼火、頼むわね。」


 私はそれだけを言うと、目の前の敵に集中する。


「ああ、分かってるぜ。……姫様、死ぬなよ。」


 鬼火の声が微かにしか聞こえない。それほど私の意識は完全にアリエスに集中していた。

 次の瞬間、アリエスを囲む赤い霧は拡散するように消し飛ばされる。


「本当に、不死身ね。どんな金属でも溶かす霧なのに傷一つ無いなんて。」


 私は傷一つないアリエスを睨みつける。


「こんな霧私に効かない事ぐらい知らない訳ないわよね。それにしても本当に、本当に、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、イリスも貴方も何故私の邪魔ばかりするの。這いつくばって死になさい、後悔して死になさい、無様に死になさい、泣き叫びながら死になさい、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね。」


 アリエスは、声のトーンが急に落ち、私を睨みつける。彼女の左眼が白い光りを放つ。

 咄嗟に身構える。あの左眼の光は神力アマフィスデーゲン。神人のみが使用できる力。私達の祖力と同じような物だが、力の強さの次元が違う。


 アリエスの神力は【創造主の左目】。能力は、私が知る限り万象の破壊を司る神の力。


 私は構わず髑髏の右手でアリエスを掴む。

 表情を一切変えないアリエス。

 このまま握りつぶす。私は全神経を右手に集中させる。

 次の瞬間、アリエスを掴んでいたはずの髑髏の右手は突然消し飛ぶ。


 ああ、私の命もここまでだ、この圧倒的な力の前では、私の力など役には立たない。


 私の脳裏にクレスの顔が思い浮かぶ。

 クレスは大丈夫だろうか?


 鬼火が言った通り紫苑の力が遥を上回るものであればどうにかなるかもしれない。


 最期の時まで、思い浮かぶのは三百年待ち焦がれたあの方ではなく、クレスの顔という事実。

 私は諦めるように溜息を吐くと髪飾りに手をやる。



「……クレス。」



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