第三幕 酔いしれる一夜 Ⅲ
仄かに甘い匂いにふと目を覚ます。
ぼやけた視界が想定外の光景を捉える。
シーリスが俺に抱きつきながら寝ている。
驚きで、自分の感覚が急に覚醒していく。
女性特有の柔らかさと、シーリスの人間より低い体温を感じる。はだけた衣服から彼女の白い肌が見える。
胸が高鳴る。
理性が飛びそうになる。
深呼吸をする。
俺は冷静さを取り戻すため、シーリスから離れようとするが、吸血鬼である彼女の力は強く離れられそうにない。
さて、どうしたものだろう。
結局、どうすることもできずに俺はシーリスに抱きつかれたままになる。
シーリスは、寝ぼけて俺のベットに入り込んできただけだろうが、見惚れるような美しさと妖艶さを兼ね備えている彼女相手に冷静さを保っていられる自信がない。
何度か深呼吸をする。
何とも言えない高揚感と共にどこか安心する自分の気持ちに気付く。
ゲーテに言われた言葉が未だに気になっていたが、今のシーリスを見ていると例え彼女が何かを隠しているとしても、彼女を信じてみようと思う。
カーテンの越しに光はまだ見えない。
まだ、深夜なのだろうか?
それにしても、このまま朝を迎えると大変なことになりそうな気がする。
俺は苦笑いを浮かべる。
それでも、今夜だけはこの何とも言えない高揚感に酔いしれようと思った。




