第三幕 酔いしれる一夜 Ⅰ
「お帰りなさい。」
俺が部屋に入ると、顔色が少しだけ良くなったように見えるシーリスが俺を出迎える。
「体調は?」
「うん、お陰さまでだいぶ良いわ。ところで収穫はどうだったの?」
ベッドに腰掛けながら、俺を見つめるシーリス。
「ぼちぼち、だな。」
だいぶシーリスの体調が良くなったため、俺は今日一日、情報収集に出かけていた。
俺はシーリスに気付かれないように、先程手に入れた古びた本を荷物の中に紛れ込ませる。
「ねぇ、クレス。」
「何?」
「これ、受け取って。」
シーリスから布袋を渡される。
何だと思い、袋を開けると大量の貨幣が入っていた。
「どうしたんだ、この大金?」
「ペンダントを売ってきたの。思ったよりお金になったからびっくりしたけれど。これで暫く路銀には困らないでしょ。」
シーリスを見ると胸元に付けていた瞳の色と同じ紫色のペンダントが無くなっている事に気が付く。おそらくはそのペンダントを売ってきたのだろうが、それにしても大雑把に見ても、五千フィスぐらいはありそうな大金だ。
「こんな大金受け取るわけにはいかない。」
「良いから受け取って。こんなお金持っていても私は使わないし、なにより私だけ重荷になるのが嫌なのよ。どうしても受け取り憎いならこうすれば良いわ。私が欲しいと思う物を買う時にも使って。」
シーリスはそう言うと、大金が入った袋を俺に押し付ける。
短い間だが、シーリスと一緒の時間を過ごしてきた俺は彼女が一回言い出したら何を言っても無駄だと言う事を学んでいた。
「……すまない。助かるよ。」
俺がそう言うと、シーリスが微笑む。久しぶりに見る彼女の自然な笑顔に思わず嬉しくなる。
「何よ、にやにやして。」
「いや、久しぶりに自然な笑顔が見られて、嬉しくなったんだ。」
俺が何気なく言葉にすると、シーリスはジーと俺を凝視する。
「急に何言い出すのよ。……馬鹿なんじゃない。」
「そう、そんな感じだ。シーリスは、そういう感じの方が自然で良い。最近元気が無くて心配してたんだ。」
「う、うるさいわね。貴方なんかにそんな事言われる筋合いないわよ。」
シーリスは急に真っ赤になって俯いた。
俺はそんなシーリスの姿を見て自然と笑顔になる自分に気が付いた。




