表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/72

第一幕 揺れる思い Ⅲ

「やっぱり、何かあるんだな?」


 私は答える事が出来ない。

 そんな私を見ていたクレスは表情を緩める。


「良い、……言い難いなら、言わなくても良い。」

「……どうして?」


 私はクレスを見つめる。


「どうしてと言われてもなぁ、あえて言うなら、幻想華を手に入れる事以外には詮索はしないと約束したからかな。……それに俺はシーリスを、なんだ、その、信じているから。」


 クレスは真っ直ぐ私を見る。

 私の胸が高鳴り、そして苦しくなる。


「少し出かけてくる。」


 クレスは立ちあがると、部屋の隅にある荷物を抱える。


「どこに行くの。」


 私がベッドから降りようとするのを手で制するクレス。


「もう少し休んでいた方が良い。薬の材料を売って路銀を稼ぎに行くだけだ。夕方までには戻ってくる。」


 クレスは、私にそう告げると部屋を出て行った。

 再び部屋に静寂な時が流れる。

 クレスから渡された瓶を見る。

 確かに私は葡萄酒が好きだ。

 この濃い紅の色が血を彷彿させるからだろう。


 クレスのちょっとした好意が嬉しかった。

 胸が高鳴る。

 クレスは、私を信じると言った。

 こんな私を。

 胸が痛い、罪悪感に苛まれる。


 首を大きく横に振る。

 覚悟はしていたはずだ。


 もう一度、あの方に逢うためには、……クレスを犠牲にするしか方法がないのだ。


 ……そう、殺すしかない。


 頭が痛い。身体中に激痛が走る。


 葡萄酒を机に置く。

 身体をベッドに投げだし、キルトを抱きしめる。

 落ち着いて考えるべきだ。


 私がクレスに惹かれているのは、クレスにあの方の面影を見ているからに他ならない。

 だったら、答えは簡単ではないか。


 クレスという存在を死に追いやれば、あの方に逢えるのだから。


 そう、簡単な事だ。それなのに、なんでこんなに苦しいの?

 考えれば考えるほど分からなくなる。


 もう嫌だ。


 嫌だ。


 嫌だ。


 おかしくなりそう。


 私は、考える事を放棄した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ