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神無き世界~悠久の時を生きる深紅の令嬢とかつて神さまと呼ばれた人間~  作者: 蒼 葉月
第三章 滅びの村の死の担い手
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第二幕 覚醒への胎動 Ⅱ

「クレス、クレス!」


 シーリスの泣き叫ぶような声で目を覚ます。


 ぼやける視線で俺の方に駆け寄るシーリスの姿を捉える。


「お前に用はない。」


 ゲーテの影がシーリスを襲う。


 シーリスの身体が宙を舞う。


 次の瞬間、不思議と身体の感覚がはっきりする。


 気が付くと、ゲーデの影の攻撃を物ともせずに俺は立ち上がっていた。身体中の傷もほとんど無くなっている。先ほどまで瀕死だったのが嘘のようだ。それにシーリスにつけられた手の甲の文字のような痣が暖かい。


 無意識に身体を動かす。

 自分の身体ではないように、軽い。

 手にした神威を軽く振り、一瞬にして影の包囲網を弾き飛ばす。

 そのまま神威を逆手に持ちかえ、シーリスの身体が地面に激突する前に受け止める。


 思考と同時に身体が動く、そんな感覚。


 シーリスの意識はないが、まだ息をしていることを確認し、ひとまず安堵する。


 初めてゲーデの顔から余裕の笑みが消える。


「……どういう事だ。何の手品カネ?」


 ゲーデが訝しげに俺を見つめる。


 俺は静かにシーリスの小さな身体を地面に横たえると神威を構える。


「おおおッ」


 精一杯の声を上げ、神威の柄を握る右手に力を込める。


 炎が消えてしまっていた刀身に再び燃え盛る炎が宿る。

 先ほどまでの炎とは、勢い、大きさ共に別の物のようだ。


 それに炎が何故か白い。


 こんな炎の色、今までに見た事がない。


「白い、白い炎? 貴様は一体? 一体何者だ?」


 白い炎を見た途端、ゲーデの表情が変わる。


 不意に右眼に激痛が走る。


 久しぶりの感覚だ。


 式術の力を行使すると、右眼に痛みが走る事があったが、今までの痛みとは比べる事が出来ない程の激痛を感じる。

 気にはなるが、今は構っていられない。

 痛みをこらえながら、再び体勢を低く屈めるとゲーデに向かって駆け出す。


 ゲーテは動揺しながら、右手を前に掲げる。

 次の瞬間、奴の影が俺に向かってくる。


 その影には、先ほどまでの速さは無い。


 何とか目で追える。


 ゲーデが遅くなったのか、いや、そうではない。


 俺が早くなっているのだ。


 影を避け続けながら、ゲーデに向かって斬りかかる。

 急に身体が重くなる。

 切っ先がぶれる。


 そのわずかな時間が、ゲーデに致命傷を避ける隙を与えてしまう。


 ゲーデは身体をひねるようにわずかに横へ移動する。


 神威がゲーデの右腕をとらえる。



 今度は、確実な手応えを感じる。



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