第二幕 覚醒への胎動 Ⅱ
「クレス、クレス!」
シーリスの泣き叫ぶような声で目を覚ます。
ぼやける視線で俺の方に駆け寄るシーリスの姿を捉える。
「お前に用はない。」
ゲーテの影がシーリスを襲う。
シーリスの身体が宙を舞う。
次の瞬間、不思議と身体の感覚がはっきりする。
気が付くと、ゲーデの影の攻撃を物ともせずに俺は立ち上がっていた。身体中の傷もほとんど無くなっている。先ほどまで瀕死だったのが嘘のようだ。それにシーリスにつけられた手の甲の文字のような痣が暖かい。
無意識に身体を動かす。
自分の身体ではないように、軽い。
手にした神威を軽く振り、一瞬にして影の包囲網を弾き飛ばす。
そのまま神威を逆手に持ちかえ、シーリスの身体が地面に激突する前に受け止める。
思考と同時に身体が動く、そんな感覚。
シーリスの意識はないが、まだ息をしていることを確認し、ひとまず安堵する。
初めてゲーデの顔から余裕の笑みが消える。
「……どういう事だ。何の手品カネ?」
ゲーデが訝しげに俺を見つめる。
俺は静かにシーリスの小さな身体を地面に横たえると神威を構える。
「おおおッ」
精一杯の声を上げ、神威の柄を握る右手に力を込める。
炎が消えてしまっていた刀身に再び燃え盛る炎が宿る。
先ほどまでの炎とは、勢い、大きさ共に別の物のようだ。
それに炎が何故か白い。
こんな炎の色、今までに見た事がない。
「白い、白い炎? 貴様は一体? 一体何者だ?」
白い炎を見た途端、ゲーデの表情が変わる。
不意に右眼に激痛が走る。
久しぶりの感覚だ。
式術の力を行使すると、右眼に痛みが走る事があったが、今までの痛みとは比べる事が出来ない程の激痛を感じる。
気にはなるが、今は構っていられない。
痛みをこらえながら、再び体勢を低く屈めるとゲーデに向かって駆け出す。
ゲーテは動揺しながら、右手を前に掲げる。
次の瞬間、奴の影が俺に向かってくる。
その影には、先ほどまでの速さは無い。
何とか目で追える。
ゲーデが遅くなったのか、いや、そうではない。
俺が早くなっているのだ。
影を避け続けながら、ゲーデに向かって斬りかかる。
急に身体が重くなる。
切っ先がぶれる。
そのわずかな時間が、ゲーデに致命傷を避ける隙を与えてしまう。
ゲーデは身体をひねるようにわずかに横へ移動する。
神威がゲーデの右腕をとらえる。
今度は、確実な手応えを感じる。




