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神無き世界~悠久の時を生きる深紅の令嬢とかつて神さまと呼ばれた人間~  作者: 蒼 葉月
第三章 滅びの村の死の担い手
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第二幕 覚醒への胎動 Ⅰ

 やはり、俺には力が無い。


 村の人達を守れず、今はシーリスが逃げる時間を稼ぐ事すらままならない。


 薬師としても役に立たず、剣士としても役に立たない。


 なんと無力な存在だろう。


 今までの記憶が走馬灯のように駆け巡る。


 その中で、ある感覚を思い出す。


 最近は考えないように意識していたが、時折強く感じることのある感覚。


 

 自分が自分でない感覚。



 なぜかずっと昔から感じていた。


 自分でも良く分からない感覚だったが、はっきりとした感覚だった。


「ああ、やりすぎたか、手加減が難しくていかんな、ふむ……五体満足でなくても生きていれば魂は食えるから良いか。それにしてもつまらんな。所詮は人間か。……ああ、興が冷めた。……終わりにするカネ。」


 ぼやけた意識の中、ゲーデの声が聞こえる。


 尚も激しく打ち据えられ、痛みを通り越して感覚が無くなっていく。

 ……シーリスは逃げられただろうか?

 そんな事を考えながら、意識が途切れる。


 そのまま、視界が真っ白になった。



 一面、真っ白な世界。

 どこだろう?

 俺は本当に死んでしまったのか?

 結局、何もできないまま。


 誰の力にもなれないまま。


 無力なままで……。


 気が付くと、目の前に光輝く人の形をした何かが立っている。


 表情は見えない。


 ただ、暖かくどこか懐かしい感じがする。


 その人の形をした何かが俺の心の中に入り込んでくる。


『君は、どうしてそんな誰かの力になりたいんだい?』


 どうしてって?


 どうしてだろう?


 改めて聞かれるとどうしてなのか分からない。


 ただ、多くの人の役に立ちたい。


 人の役に立ちたいという気持ちに意味が必要なのか?


 人の形をした何かは、俺の気持ちを掬いとるように問いかける。


『君は、多くの人を助けることで、自分の居場所を作りたかった。多くの人を助けることで、他人に自分の存在を認めてもらいたかっただけなんじゃないのかい?』


 確かにその通りかもしれない。


 自分が自分でない感覚。


 その感覚をごまかすために、多くの人を助けることで、自分の居場所を作りたかった。多くの人を助けることで、他人に自分の存在を認めてもらいたかった。


 改めて考えると、自分勝手の願望にしか過ぎない。


 自分勝手の願望。

 ひどく偽善的な思いだ。


『その気持ちは偽善的だね。だってその気持ちは他の誰でもない君のためなのだから。』


 人の形をした何かは、俺の気持ちを言葉で明確に表現するように問いかけを続ける。


 確かに偽善的な思いだ。

 それは認める。


 だが。


 それでも。

 

 俺は息を深く吐くと、首を三度横に振る。


「偽善的でも、人の役に立ちたいという思いが、間違いだとは思わない。思いたくない。」


 俺は気が付くと口を開いていた。

 頭で考えるより先に口にしていた。


 人の形をした何かは、その言葉を聞くと初めて声を発した。


「分かった。それが君の答えなんだね。」


 どこかで聞いたことのある声。


 人の形をした何かはさらに光激しく輝きだす。


 俺には、その人の形をした何かが笑っているように感じた。



 ……妹達をよろしく頼むね。



 俺の心にその言葉だけが残った。



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